3人目の住民
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3人目の住民を目の前にして2人は呟いた。
「ははーん、これは冤罪で断罪された悪役令嬢だな」
「いや、禁忌の魔法に手を出した魔女だ」
「どこからどう見ても聖女に決まっているじゃない!」
そんな2人の新しい住民を予想する呟きに、ローブを着た女性は鋭いツッコミを繰り出した。
「オズ、俺の思い違いかもしれないんだけど、聖女って慈悲の心で民に優しくそして巨乳なのが聖女なんじゃないのか?」
「うむ、我の国の聖女もそうだった」
そう思うと目の前の女性は……
「絶壁だな」
「うむ、絶壁である」
「……貴方たち初対面で失礼過ぎないかしら?」
慈悲の心や優しさは必要かもしれないが巨乳に関しては本人ではどうしようもない。
そんなのは聖女自身が1番思っていることである。
まさか死後、転移して早々絶壁のことを言われるとは思っていなかった聖女は転移したことを少し悔いていた。
「まあ、ようこそ異世界へ!」
「うむ、そなたのことを歓迎しよう」
「本当に歓迎されているのか不安だわ……改めて私は聖女のイリスよ。怪我を治したり、毒や呪いの浄化などが得意だわ」
こうして勇者と皇帝の新たな仲間として、聖女が加わったのだった。
「ところで私はここで何をしたらいいのかしら?」
勇斗とオズは顔を見合せ頷いた。
「よし、これを使っていいぞ」
「……何よこれ」
「ミノタウロスの斧だが」
聖女はそんなことが聞きたいわけではない。
何故か弱そうな見た目の女性に斧を渡すのかが聞きたいのである。
「だって、家が必要だろ?造るには俺たちが持ってる木だけじゃ足りないし」
「そなたはまだ家が造れないだろう?代わりに我らが造る故、木を切ってきてくれ」
勇斗とオズの頭の中には一緒に切りに行って一緒に作るという選択肢は既にない。
それだと効率が悪く、また家を作る時間が1週間近くかかってしまうからだ。
「私は杖より重いものは持てないわよ」
「聖女って案外不便だな……それだとテント暮らしが長引くがいいか?」
「斧を持って足の角度はこうだ。こうして、踏み込んで思い切り振ればいいだけだぞ」
聖女は考えた。
確かに自分が3人目の新参者でまだ2人みたいな信頼関係など無いに等しい。
それでも一応女性であるからこそ家を貸してもらえると、どこかでそう思っていたのだ。
それが今、彼らの口からテント暮らしと告げられたのである。
そして足の踏み込み角度や斧の振り方を教えられたところで出来ないものは出来ないのだ。
「一応聞くけど家を貸してくれたりはしないのよね?」
「絶壁とはいえ女性が男の家で寝るのはよくないだろ?多分家の中で寝袋で寝るよりテントの中で寝た方が寝やすいぞ」
「……そう、まだベッドもないのね。それなら仕方ないわね」
渋々、本当に渋々ではあるがイリスは家が出来るまでテントで寝ることが決まったのである。
だがそれとイリスが斧を振って木を集めることは別問題だ。
イリスがどうしようかと考えている時にオズは勇斗を家裏へ呼び出した。
「勇斗、もしかしてイリスはこの世界のルール第2条なのではないか?」
「なるほど、確かに有り得る。そうか、来たばかりだから余裕がなかったんだな」
家裏から戻った2人はテントを設置してイリスに休むように伝えた。
少し日数はかかるがオズが木を切りに行き、勇斗が家を造ると。
「何か勘違いしてそうだけど、そうしてくれると助かるわ。私ももちろん手伝うし」
こうして勇斗が最初に作ったこの世界のルールのお陰で勘違いされたイリスだが、確かに転移したばかりでツッコミまくったこともあって少し疲れていた。
遠慮なくテントで数時間休ませて貰ったあと、家を造ってくれている2人のためにと貰った食材で夕食を作り始めるのだった。




