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#077 「誓いと未来」

 ホテルから離れ、駅へと続く道を六人の影が並んで歩いていた。夜はすっかり深まり、街の灯りも少しずつ数を減らしている。昼間の華やかな結婚式が、まるで遠い夢のようだった。冷たい夜風が頬を撫でる。


「結婚式って、ただのお祝いじゃないんだな」

 隼人がぽつりと呟いた。

「大人たちの覚悟とか、責任とか……。そういうものを背負う場なんだなって思った」


「確かに」

 想太も静かに頷く。

「プロジェクトとか、部下の育成とか。二次会で聞いた話もすごかったよな」

 思い返すだけで、胸の奥が少しざわつく。


「でも、どれも素敵に見えたよ」

 はるなが歩きながら柔らかく笑った。

「誰かと支え合って未来を作るって、すごく勇気がいるけど……きっと幸せなんだと思う」


「私は今日、覚悟を学んだ気がする」

 美弥が真剣な声で言った。

「自分だけじゃなく、相手や家族を背負って生きるってこと」


「うん。私も……」

 いちかが頷き、要の隣で小さく声を重ねる。要は少しだけ視線を上げ、静かに言った。

「僕たちも、いつかは同じ道を歩く」

 その声は落ち着いているが、どこか確かな重みを持っていた。

「大人になるというのは、責任を持つことだ」


「責任、か……」

 想太はその言葉を噛みしめるように呟く。

 ふと視線を横に向けると、はるながこちらを見ていた。目が合うと、彼女は少しだけ頬を赤くして俯いた。

 沈黙が流れる。

 けれどそれは気まずいものではなく、むしろ今日一日の余韻を静かに包み込むような沈黙だった。

 それぞれが未来を思い描きながら歩く夜道。

 街角に差しかかったとき、少し離れた場所に黒い影が見えた。久遠家のSPたちだ。

 彼らが見守っているからこそ、この静かな時間が守られている。六人は気づいても、何も言わず歩き続けた。


「今日は、なんだか背が伸びた気分だな」

 隼人が冗談めかして言う。その言葉に、皆が笑った。


「うん」

 はるなが頷く。

「大人の世界を、ちょっと覗いたからかも」

 笑い声が夜の道に柔らかく広がる。やがて前方に、駅の灯りが見えてきた。六人は自然と歩く速度を少しだけ緩めた。誰もが同じことを感じていた。


  ――もう子どもじゃない。


 けれど、まだ完全な大人でもない。今日見た結婚式の向こうには、大人たちの世界が広がっている。その扉の前に、六人は静かに立っているのだった。

 そしていつか。その扉を、自分の足で開く日が来る。

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