第三次元寇(建武の役)
建武三年六月上旬
賤ケ岳~金ヶ崎城の戦いの後始末も終わったことだし、もう大元国のことさえケリがつけば、いよいよ日本統一になるんだけどな。
本当に、元国攻めてこなければ良いのに。
でも、九州に放った忍びからは、次々と悪い情報が報告されていた。
尊氏は、既に対馬や壱岐を攻略し、元軍を続々と呼びよせているとのこと。
その数、およそ八万。
だとすると、俺が相手する南朝・大元国の連合軍はおよそ十万といったところか。
とにかく、少弐貞経・頼尚らに九州の軍勢を集めさせて、大宰府の備えを固めないと。
味方の兵糧は・・・、農業革命進行中の上野国から九州に送れば、何とかなるか。
執事の船田義昌に段取りを頼むとしよう。
その上で、博多港に集めた南蛮船を用いて大元国の兵站を潰せば、戦わずして勝てるではないか。
でも、兵糧不足の元軍が略奪に走って国土が荒廃するとまずいな。
いずれにせよ、速やかに元軍を追い払うに如くはなし。
ということで、調子の悪い義助を京に残した上で、俺は精鋭六万を編成し、高師直・佐々木道誉らと共に九州へと向かうのだった。
◇少弐貞経視点◇
南朝が大元国との同盟締結という禁じ手を使ったおかげで、我らに加勢する者は激増し、この度も十万以上の兵を集めることに成功した。
元軍は肥前国名護屋に上陸し、垣副城を奪うとそこを拠点と定め、周囲に兵を出して略奪を繰り返しているという。
このまま援軍が来るのを待っていては、肥前国が飢人であふれてしまう。
ここは、我々九州勢のみで速やかに元軍を追い払うに如くはなし。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
九州勢、元軍に大敗北。少弐貞経戦死。
まじかよ。一体どうしてこんな事になった。
大宰府に向かう途中で九州勢敗北の報を聞いた俺は、伝令に詳しい話を聞くことにした。
えーなになに・・・。貞経は五万の兵を率いて肥前国に出陣したところ、小勢の敵と遭遇したため、これを殲滅しようとして追いかけたらいつの間にか敵軍に包囲されていて、貞経が戦死するなどの大打撃を受けたわけか。
とにかく、太宰府に急行しないと。
「ところで、貞経を討った敵将の名前は分かるか?」
「元軍副将トクトという若造にございます」
(トクト?どこかで聞いたことがある名前だな・・・。そうだ、賢相と讃えられる元朝末期の優れた政治家兼名将ではないか。こいつは注意しないと、俺も痛い目を見るかもしれん)
建武三年六月中旬
大宰府に着いた俺は、早速忍びを放ってより詳細な情報収集を行った。
元軍総大将はマジャルタイで副将トクトの父か。
トクトは、少弐貞経率いる太宰府軍を撃ち破った後、大宰府周辺を略奪して肥前国名護屋に戻ったとのこと。
元軍は、名護屋付近を要塞化しているようで、力攻めで落とそうとすればどれほどの被害が出るか分からない、こんなところか。
うーん、トクトが史実通りの優秀な人間であれば、わずか十万程度の兵で日本を占領出来ないことなど分かるはずなのだが。それとも、この日本遠征に何か別な目的があるのか?
もしかして、あれを狙っているのか?
まあよい。何を企んでいようと、俺は名護屋を包囲して大砲を叩き込んだ上で、博多の南蛮船を対馬海峡に送って、元軍の兵站を破壊するまでだ。
ついでに、いつも通り祟り神を使って元軍内に病を蔓延らせようと思ったのだが、祟り神に断られてしまったよ。なんでも、外国人に怨霊の力は通用しないとのこと。
そういえば、尹子殿を怨霊の呪いから救った時も、尼(外国人)にするというやり方だったな。
要するに、外国人は怨霊の存在を信じないから、怨霊の力も通用しないということになる。
逆に、日本人が怨霊の存在を信じ続ける限り、日本から怨霊信仰が消えることはないし、日本人の行動も怨霊に縛られ続ける、ということになるわけだ。
やはり、日本人の行動の背景にこういった思想があるということを一つひとつ解明していかないと、真の意味で日本が普通の国になることは無いんだろうな、なんてことを思ったりした。
◇トクト(元軍副将)視点◇
ふむ、敵の大将新田義貞が到着したか。
敵軍の士気が目に見えて上がったのが、よく分かるわ。
実際問題として、日本を征服するには百万以上の兵が必要であろう。
たかが十万程度の兵では、九州征服すら覚束ない。
にもかかわらず、我が叔父バヤンの主張する日本遠征に賛同し、その将となったのは、ある狙いがあってのこと。
さて、義貞が我が策を見抜くほどの優秀な人物であると良いのだが・・・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇足利尊氏とトクト◇
「トクト殿、この名護屋が義貞率いる十数万の軍勢に包囲されてしまいましたぞ。このままでは、我らは全滅してしまうではないか」
「尊氏殿、少し落ち着いたらどうだ。兵糧は(周囲を略奪し尽くした為)十分あるし、兵站も維持されているではないか」
「しかし、このまま籠城を続けても我らはジリ貧ではないか。元国と手を結んだ余は、この国では国賊扱いじゃ。今後、我らの味方が増えることは無いであろう。もはや、戦で勝利し続けるしか、我らの生き残る道は無いのだ」
「尊氏殿、落ち着きなされ。義貞に和睦の使者を出しましょう。そして、義貞がこの陣にのこのこと出てきたその時こそ、尊氏殿は義貞を討ち取りなさるがよい」
「もはや、このような策を弄するしかないのか」
注:尊氏とトクトは通訳を挟んで話をしています。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇




