ドーントレスのドックにて
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王宮を出た俺達はドーントレスを修理中のドックまで行くことにした。村には当分帰ることが出来ないだろうなあ。国王の怒りは収まらんだろうし、アーウラさん達に迷惑がかからないと良いのだが。
一先ず、雪風に連絡しドックの場所を聞きドックに向かう。
「あれ、それらしいものが見当たらないな」
「地下に造ったのではないでしょうか」
雪風に指定された場所についたのだが、ドックが見つからない。人の手が入っていない大森林が続いている。
「あ、あそこを見ろ。森が割れている」
森林の一部が割れ、ゆっくりと開いていく。
「ワンダバダバダバ…」
「何、歌ってるんですか」エリシエルのツッコミが入る。
「いやあ、なんかあそこから戦闘機でも発進して来そうで」
「出てくるんだったらドーントレスでしょうが、未だ修理中ですからねえ」
取り敢えず空いた場所からグライドを中に入れる。
「ようこそ、ドーントレスのドックに」
雪風のホログラムが迎えてくれる。
「予想以上にでかいな」
「百年以上かけて造ってますから」
まあ、戦艦だけ作っていたわけじゃないから基地となるドックもそれなりに手をかけていたのだろう。
ギオルギーネもやって来た。
「シュバルツの改修もほぼ終わったよ」
シュバルツも相当いじったらしく、外見もだいぶ変わっている。
「プラズマソードの強化以外にも色々手直しをしたよ。もう、今までのシュバルツとは違う。ネオシュバルツと呼んでくれ」
「ふ〜ん」正直シュバルツの改修には興味がなかったので、生返事でうなづいていると。
「ゼクトールが景一さんに話があるそうです」
「ゼクトールも来ているのか」
ゼクトールがこちらに歩いてくるのが見える。
「ケーチ、至急に君に知らせたいことがあってね」
ゼクトールが言う。何故かいつものアルカイックスマイルではなく、やや厳しい表情をしている。
「あれから、君達の元いた世界がどうなったか調べてみたのだが…」
ゼクトールは一度言葉を区切ると俺の方を向き、言いにくそうにしながらも俺達に言った。
「君達の元居た世界だが、ヴァーンとの戦いに敗れ、滅んでしまったようだ」
驚きの事実だった。いや、その可能性があることはわかっていたはず。人類が負けたと言う事実を認めたくなかっただけだ。
「私は君達の世界の人類が何故敗北したのか気になったので調べて見たのだが、その結果判ったのはケーチ、君が居なかったから負けたのだよ」
人類が負けたと言う事より、信じられない事を聞いた気がする。
「私は無数にある可能性の中から、人類が勝利したパターンを調べてみた」
「それは量子力学で言うところの、分岐した多くの可能性をあなたは追っかける事が出来ると言う事でしょうか?」エリシエルが聞く。
「そう理解してもらって構わない。とにかく私は無数にある世界から人類が勝利した世界を調べたのだ。その結果ほぼ全ての世界で君がなんらかの形で人類の勝利に貢献している。逆に君が居ない世界では殆ど人類は勝利できないでいる。この理由については私にもよくわからない。しかし君が人類の勝利のためのキーポイントになっているのは間違いない」
正直、わけがわからない。全く何を言っているんだ、って感じである。
「成る程、ヴァーンの重力兵器、ポイントアルファは景一を排除するために作られた物だったのですね。それで納得できましたよ」エリシエルが変に理解したように言う。
「ヴァーンもケーチの存在と意味に気づいていたのかもしれない」ゼクトールもその意見に同意しているようだ。
「俺は、なんか納得出来ない。しかし今更そんな事を言われてもどうしようもない。もう二百五十年も経っているんだぞ」俺はイラついて叫んだ。
「そうだな」
不思議にゼクトールは何か意味ありげに言った。
その態度が気になったが、俺はこの話を一度打ち切ることにした。しなければならないことが色々あったからだ。
「とにかく、アーメスの改修もここで行なわせて貰う」
「どうぞ。ここにある資材や器具も自由に使って貰って結構です」雪風が言う。
「レーザー発振器を強力な物に交換しディスインテグレーターの調整を行う」
「了解」エリシエルが答える。
「私はどうしたら…」ユリーシアがちょっと不安げに聞く。
「今、部屋をご案内します。あ、ケーチと一緒の部屋にしますか(笑)」
「馬鹿な事言わないの」雪風にからかわれたユリーシアは少し怒っていたようだが、雪風に案内され部屋に向かった。
「ところで雪風。黒龍の様子は?」
「今のところ寝ぐらにしているオーツ山脈から動いてはいません」
「ふむ、ドーントレスの修理状況は?」
「7割ってとこですかねえ。バリア発生器のリアクターが完全に逝ってしまいましたから、新規に作り直しているところです。出力に余裕を持たせたいのですが、そうなるとサイズが大きくなってしまうのでちょっと梃子摺っています」
「マジックリアクターとかに変えたら?」
「マジックリアクターを使用する人間によって出力が大きく変化するので、なかなか適当な人材が見つからないのです」
確かにそうだな。俺達は比較的簡単にリアクターを使用する人が見つけられラッキーだったのかもしれない。
「あ、そうだ。もう一つ聞いていいかな?前から気になっていたのだが」
「はい、何でしょう」
「雪風が使っていたグライド、確か神威と言ったよな。それは今どうなっているのかな?」
「永年の使用で老朽化してしまい、もはや修理も出来ないのでドーントレスの内部に保管してあります。捨てるわけにはいかないですから」
雪風のホログラム映像は、少し悲しげな表情を浮かべていた。




