ユリーシア救出作戦
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深夜、ライオットの居る寄宿舎に向かう。熱源センサーと動体センサー、超音波センサーを使いユリーシアが居ると思われる部屋を探す。
「ユリーシアを見つけました」
「よし、部屋の内部でも音波ビームで音声は伝えられるな。相手の声もこの距離なら拾える」
超音波で部屋の内部をスキャンし視覚化する。グライドのコクピット内のモニターに白黒の画像が表示された。
「あの変態兄貴、ユリーシアと一緒の部屋で寝てやがる。まったく面倒な奴だ」
「困りましたね」
「ユリーシアかライオットのどちらかが部屋から出てくれれば、音波ビームで連絡出来るのだが、何かいい手はないか?」
「そうですねえ、一応案はありますが」
「聞かせてくれ」
「サブリミナル効果って知ってますか」
「ああ、動画の間にジュースとかの映像を動画を見た本人が気がつかない位短い時間表示させるだけで、動画を見た人がジュースを飲みたくなるってやつだろう」
「ええ、水のせせらぎとかトイレを思い起こさせるような音をライオットに聞かせれば、サブリミナル効果でライオットがトイレにいこうとすると思うのですよ」
「そんな音をたてたらすぐバレるだろう?」
「聞こえるか聞こえないかのギリギリの小さな音でいいので大丈夫です」
「なんか、まどろっこしいやり方だが、物は試しだ。やってみるか」
他に代案があるわけでもないのでとにかくやってみることにした。
音波ビームを極低い出力でライオットに当てる。しばらくそのままでいると、ライオットがごそごそと起き出して部屋から出ようとする。
「お、以外とうまくいったじゃないか」
しかし、何故かユリーシアまで起き出してきた。
「兄さまトイレ?私もいく」
ユリーシアとライオットは一緒に部屋から出てトイレに向かった。
「音波ビームの収束が足りず、ユリーシアにまで音が聞こえてしまったようですね」
「むうううううう」
なかなかうまくいかないものである。
「いや、大丈夫かも知れませんよ。男と女はトイレ別々ですから、個室に居るときに話しかければ行けますよ。あ、もうトイレに
入っちゃいましたよ。早くしないと」
ユリーシアが用を足すチョロチョロという音が聞こえてきた。ヤバいこのタイミングだと
「ユリーシア聞こえますか。エリシエルです」エリシエルが焦って話しかける。
「あ、バカ。今はまずい…」
「いやああああああああああ、へんたああああい」
ユリーシアの悲鳴がトイレに響く。
「どうしたユリーシア。何かあったのか」あわててやってくるライオットの声がする。
「きゃああああ、兄様まで。何でトイレにまで入ってくるの。来ないでえええええ」
最悪だ。これじゃ女子トイレを覗きに来た痴漢である。
「エリシエル。逃げるぞ」
「え?」
光学迷彩と反位相音波を使い俺達はこっそりと逃げ帰った。
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「どーすんだよ。俺達がやったのバレバレだよ。これじゃ俺達ユリーシアを連れ帰るどころかただの痴漢にしかならないぞ」
「でも景一がトイレに居るときに話しかけてもあんな反応はしませんでしたよ」
「男と女じゃ違うんだよ」
「人間ってのは難しいですねえ」
宿にこっそり逃げ帰った俺は、部屋で頭を抱えていた。
その時階段を上るけたたましい足音がして、部家のドアが蹴破られたかのように勢いよく開かれた。
「ユ、ユリーシア」
そこには鬼の形相をしたユリーシアが立っていた。
「居たわね。私にあれだけ恥ずかしい思いをさせたのだから何をされても文句はないわよね。覚悟しなさい」
「あ、あれはエリシエルが悪いんだよ。そ、そうだ。ライオットのとこから良く帰ってこれたね」
俺は無駄だと思いつつなんとか言い繕うとした。
「兄様も同罪でボコボコにしてきたわ。次はケーチ、あなたの番よ」
ライオットもとんだとばっちりだが、今はそんなことを考えて居る場合ではなかった。
両手の指をボキボキと鳴らしながら、ユリーシアが近付いてくる。
「ごめんなさい、許して……ぐわあああああ」
部家の中に俺の叫びが響いた。
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「ちょっとユリーシアちゃん、夜中に騒いだら他のお客様にご迷惑になるから今後はやめてくださいね」
あまりの騒ぎに慌ててやって来た宿の女将にユリーシアが怒られていた。
「ごめんなさい」
「今回は色々あったみたいだから大目に見るけど、次はありませんよ」
「すみませんでした」
ユリーシアがペコペコと謝っている傍らでは、ぼこぼこにされた俺が地面に横たわっていた。
「景一、景一。大丈夫ですか?」
「ナノマシン、ナノマシンをくれ」
俺は息も絶え絶えに言ったが
「医療用ナノマシンはもうないんですよ。まあ自業自得ですね」
などと他人事のようにエリシエルが話していた。




