初ダンジョン攻略
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この世界におけるダンジョンは、廃鉱山や鍾乳洞などにモンスターが住み着いたもので、そこを拠点として人里などに出てくることがあるので定期的にモンスターを駆除する必要がある。
一般的な冒険者は、その駆除を行い生計をたてている。ダンジョン以外にもモンスターは生息しているが、それらの殆どは、人里から離れているため駆除対象になっていない。イスタル共和国は首都の近くに大規模なダンジョンがいくつか存在するため冒険者と言う職業が成り立っている。
特にラングレストと呼ばれるダンジョンは、ドラゴンやその眷属である恐竜のようなモンスターが多数住み着いており脅威度が高い。
冒険者組合で聞いたダンジョンの説明はざっとこんな具合だった。
「そんな危険なダンジョンなら、さっさとモンスターを殲滅しちゃえばいいのに」とユリーシア。
「ダンジョン自体の構造が複雑で、なかなか殲滅までには至らないそうです。中に住んでいるドラゴンはかなり頭が良く、内部を頻繁に変えているため地図のようなものがあてにならないらしく、知られていない抜け道がいくつもあるそうです」ユリーシアの問いにエリシエルが答えた。
「で、俺達が行こうとしてる、初心者向けダンジョンってのは?」
「新人冒険者の訓練のため、わざとモンスターを殲滅せずに飼い殺しにしているようですね。ラングレスト攻略のためには、腕の立つ冒険者がいくらでも必要ですから」
「なるほど」
と言うことで早速初心者向けダンジョンの一つ、アルクエッド鉱山跡に向かう。
アルクエッド鉱山跡と言うのは、名前の通り元々は鉱山だったが鉱石を掘り尽くして放置されていたところにモンスターが住み着いたものだ。訓練の為のダンジョンなのでブロンズクラスの冒険者しか入れず、特にモンスターを何匹狩らなければいけないと言うノルマのようなものはないが、中層にあるホームポイントと呼ばれる場所までは必ず行かないといけないことになっている。ホームポイントに着かずにダンジョンを出たものには組合からの依頼料は支払われない。
ダンジョン入口で管理員と呼ばれる組合からの人間に登録してもらいダンジョンの中に入る。機人を使い鉱山を掘っていた為、4mの身長のグライド、アーメスでも楽々歩けるくらい天井が高い。
「灯りとかはないんだな」
「廃鉱山ですからねえ。暗視モニターを起動します」
グライドのメインカメラは人間の目よりも感度がいいので、このくらいならほぼ問題なく見ることができるが念のために暗視モニターを起動した。
内部はレンガの様なもので補強されている。結構丈夫に作られている様で崩落とかの危険はなさそうだ。
あまり人気のないダンジョンなのか、俺達以外ほとんど探索している者はいない様で誰にも会わずにどんどん奥まで行く。
「冒険者どころか、モンスターにも全然出くわさないですね」なんとなく不満そうにエリシエルが言う。
「せっかくダンジョンまで来たのに、なんかつまんない」ユリーシアまで文句を言い出す。
「いや、そうでもないぞ」
岩場の陰から数体の巨大な狼の様なモンスターが現れた。
超音波振動ナイフを取り出し構える。ダンジョン内はあまり広くない為、剣や槍などの武器よりナイフの様な武器の方が取り回しが良いだろうと考え、用意したものだ。
「しかしデカいな。こんな廃坑の中であんなにデカくなるほど食い物があるのか?」
「その辺はよくわからないですが、ネズミの様な小動物は結構いるのではないのでしょうか?」
暗闇の中でモンスターの目が、赤く光っている。用心しているのか、なかなか近づいてこない。
「そっちが来ないなら、こっちから行くぞ」
俺はグライドをストンと腰を落とさせ、低い姿勢からダッシュさせた。ゼオフィールドで慣性を減らしている為、異常とも言える速度でモンスターに迫る。すれ違い様にナイフで急所と思われる部分を切りつける。
機体を急停止させ振り向く。
モンスターは自分が何をされたのか分からないのか、こちらに向き直り襲いかかろうとした。
その瞬間、首筋から膨大な量の血を吹き出しモンスターは倒れた。
「え、瞬殺。実はあんた腕は良かったのね」ユリーシアが驚いた様に言う。
「機体の性能がいいからな。さあ、先に進むぞ」
「りょ〜か〜い。じゃんじゃん敵を倒していくわよ」
「別に無理に敵を倒す必要はないのでは?」
「ダメよ。モンスターを倒してこそ、冒険者ってもんよ」などと偉そうにユリーシアが言う。
そんなものかと思い、モンスターの死骸を焼夷弾で燃やした跡、更に奥へと歩を進めた。
その後、何回もモンスターに出くわしたが特に問題もなく倒して行き、ついにホームポイントに到着した。
巨大な水晶の塊が有り、ほのかに光っている。
「なんかアッサリ着いちゃったわね」
「初心者向けダンジョンなんだから、こんなもんじゃないのか。一応目標達成ということで出口に戻るぞ」
「あ、待って」ユリーシアはそう言うと、グライドから降りてホームポイントに向かう。
ダンジョン入口で登録した時にもらったカードをホームポイントに押し当てると、カードの色が変わった。
「なるほど、これで到着した証明になるわけだ」
「そう言うこと。これをしないと報酬がもらえないのよ。タダ働きで帰るつもり?」
「なんか尻に敷かれてますね」
「尻に敷かれてる言うな」
帰りもモンスターには何度も出くわしたが、すべてを殲滅し出口に向かう。
「やっと出口だ」
ダンジョンの管理員に色の変わったカードを見せる。
「はい、okです。しかし時間かかりましたね」
「意外とモンスターの数が多くて」
「まさか、全部倒してきたのですか?」
「え?」
「殆どの冒険者は、ここでは敵に見つからない様に行動して極力戦闘を避けていますよ。別に敵を倒さないでも報酬はもらえますからね」
「ユリーシア。お前、モンスターを倒してこそ冒険者だとか言ってたよな」
「あ、あら。そうだったかしら。ははは」
「笑って誤魔化すな」
とりあえず、第一回目のダンジョン攻略は終了した。




