冒険者への道
28
ちゃらららちゃちゃちゃ〜ん
朝が来た。昨日の晩は酷い目にあった。
ユリーシアはコップ一杯のビールのような酒を飲んだだけで悪酔いし、俺に絡み出した。
普段から色々なストレスや鬱憤を抱えていたのだろうが、それらが酒を飲んだせいで吹き出したようだ。
床を指差して「そこで正座」
おいおいマジかよ。と思ったが、ユリーシアの目付きが尋常じゃないのでそのまま従う。
「そもそもお前は王女である私に畏敬の念がない。もっと敬え。そして優しくしろ」
と言った調子で延々と説教が続く。こいつは参ったなと思い、横で飲んでいた親父を見るが、親父は「こっち見んな」とばかりに目をそらす。どうやら助けはないらしい。
幸いなことに酒に強くないらしく、直ぐに酔いつぶれて寝てしまった。
「あんたも大変だな」酔いつぶれたユリーシアを抱き抱えて部屋まで運ぼうとした俺を見て、親父がニヤニヤと笑いながら言った。
特殊な趣味を持ったロリ○ンじゃないんだから幼女?に説教されてご褒美とか思ったりしないんだよ。大変だと思うなら助けてくれよ。
「ところで彼女、自分のこと王女とか言っていたがどういうことだ?」などと聞いてくるので。
「酔っ払いの戯言ですよ。自分を王女様のように扱えってことでしょう」と、適当にごまかした。
親父はそれを聞いても、微妙な表情をしていたので誤魔化しきれてないかもしれない。
「あ、千切れた腕を治しておかないとまずいな」
細かな部分はナノマシンが治してくれるが、大雑把な部品程度は自分で修理した方が治りが早い。
とりあえず応急処置的に繋いでおいたが、あとはナノマシンに任せよう。
さて、今日は冒険者組合に行って登録する予定なのだが、ユリーシアがなかなか起きてこない。
どうしようかと思っていると、やっとユリーシアが起きたようで階段を降りてきた。
「おはよう」
「おはよう、う〜、頭痛い。昨日の晩のことをよく覚えてないんだが、何か変なことを言わなかったか?」
一言文句でも言ってやろうかと思ったが、覚えてないなら仕方ないと思い何も言わないことにした。
「朝飯は食べれるか?」
「あまり食べたくない」
「何も食べないのは良くないんで、スープだけでも飲んどけ」
「うん」
大人しく席に着きゆっくりとスープを啜るユリーシア。
「冒険者になるって言い出したのはお前なんだからしっかりしてくれよ」
「あら、そのお嬢ちゃんも冒険者になるの?」俺達の話を聞いていた女将が口を挟んできた。
「お金を稼がないといけないのでねえ。今日明日で金がなくなるってわけではないのですが、しばらくはここに居ることになると思うので」
俺がそう言うと、女将はちょっと考えていたが
「それじゃ、うちで働いてみない?今人手が足りないのよ。冒険者なんていう危険な仕事よりいいと思うのだけど、どうかな?」
「お言葉は有り難いのですが、こいつに旅館の仕事は無理だと思うので」
「あら、そう。まあ気が向いたら言ってね」
食事を終えた俺達は、早速冒険者組合に向かった。
ーーーーー
「冒険者組合に入ると、冒険者希望の新米にベテランっぽい冒険者達が絡んでくるのよ。そいつらをあっさりと片付けて周りの注目を引くわけよ」
「何だよそのラノベ展開」何処かで聞いたような話をするユリーシアに俺が突っ込むと
「ラノベって?」とユリーシアが不思議そうな顔をする。
「いや何でもない。って言うか、その話は何処で聞いたんだ」
「宮廷の書庫にある娯楽小説に書いてあったわ」嬉しそうに言うユリーシア。
この世界にもラノベっぽい小説があるんだ。
「小説の話は置いておいて、実際の冒険者組合の仕組みはどうなっているんだ?」
「私もよくは知らないのだけど、ランクが設定されていて最初は最低ランクの銅から始まって銀次は金って具合に上がっていくらしいわ」
何処ぞの聖闘士みたいだなとか思っていると冒険者組合の建物が見えてきた。
建物の裏手にかなり広い駐機場があるので、そこにグライドを降ろす。
建物に入ると、ベテラン冒険者に絡まれるって事もなく受付に向かう。
「冒険者の新規登録ですね。では新規冒険者レクチャーを行いますのでこちらの部屋にお越しください」
どうやら新規冒険者希望って言うのは結構沢山いるらしく、まとめて説明するらしい。俺達が案内された部屋に行くと、既に何人もの人が待っていた。
「それではレクチャーを始めます」しばらくすると大きな紙の束を抱えた人がやってきて、紙の束を正面がくり抜かれた箱の中に入れた。紙には(新人冒険者の心得)と書かれていた。
「今日から冒険者を志すあなた達に守っていただくいくつかの事例があります」そう言うと、一番手前の紙を引き抜く。すると二枚目の紙に(ダンジョンでやってはいけない事その一)と言う文字とそれを指差す冒険者らしいイラストが描かれていた。紙芝居か。
まあ、テレビやプロジェクターなんてないのだから仕方ない。
紙芝居を使った冒険者レクチャーを終えた俺達は部屋を出た。内容は如何に冒険者が危険な職業であるかと言うことと、実際の死亡例とその原因など。教習所で車の免許の更新時に見た映像を思い出す。
その後も流れ作業的に様々な説明や検査などを受け、最後に自分の写真の入った冒険者証をもらう。いまいち写真写りが良くない。なんとなく犯罪者のようだ。
う〜む、何か最初に考えていた冒険者登録とは違うが、これで晴れて俺も冒険者だ。
ユリーシアが疲れた顔をしてやってきた。
「私が21才だって何回説明してもわかってくれなくて苦労したわ」この国の冒険者は16才以上でないとなれないらしい。
「血液検査で年齢鑑定を行ってもらって、やっと納得してもらったわ」
へえ、この世界だとそんな便利な鑑定があるのか。
「それで、冒険者になったはいいが、まずは何をやる?」
「やっぱりダンジョン探索ね。初心者向けダンジョンに潜りましょう」




