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酒は飲んでも飲まれるな

27


マリーベルを振り切った俺達は、そのまま高度を上げていった。


「しかし、ゼクトール王子との結婚をそこまで嫌がる本当の理由ってのはなんなんだ?」


「あいつは、何と言うか人間離れしたところがあるのだよ。色々な式典やパーティーであいつを見かけたり時には話したこともあるのだが、その度にそう感じていた」


「人間離れって、爬虫類みたいな感じだとか?」


「人間ってのは誰でも完璧じゃない。完璧に見える人間でも何かしらコンプレックや欠点があるものだ。そう言ったものが全くない。それっておかしくないか」


「ユリーシアがそう感じてるだけじゃないのか」


「奴が私の前に、縁談を何回行ったか知っているか?8回だぞ。みんな断られてる。話を聞いてみるとみんな私と同じことを言っている。人間らしく無いと。絶対に何かあるんだよ」


「ふむう……」ゼクトール王子か。ちょっと調べてみる必要があるかもしれないな。


グライドはずっと上昇を続け、空が暗くなりヴァンデルワースが球形に見える高さまで上がると、流石にユリーシアが恐る恐る聞いて来た。


「おい、何処まで上がるつもりだ」


「え、このまま月まで行くつもりだけど……」


「この馬鹿ちん!!誰が本気で月まで行くと言った」


鋭い右ストレートと共にユリーシアの罵声が響いた。


「じゃあ、何処に行けばいいんだよ?」


「う〜ん、取り敢えず兄様のいるイスタル共和国に向かおう」


「へいへい、仰せのままに」


俺はグライドの高度を下げていった。



ーーーーーーー



イスタル共和国は王都の北東に位置する、商業を主とする国だ。キャリオン王国とは森林地帯を接しているため通行が不便で直接の貿易は少ない。

ひとまず俺達は、共和国の首都に当たるバルハイドに向かった。

バルハイドには共和国最大の学園があり、そこで学んでいるユリーシアの兄のライオット王子が居るらしい。


「さて、今夜の宿を探さないと。とは言え、慌てて出て来たからお金があまり無いし高級なとこは無理だし、何処かいいとこないものか?」


「私もここに来たのは初めてだし、地理はサッパリ判らん」


「別にユリーシアには期待してないよ」


「むう、そう言う言い方されるとちょっとムカつくぞ」


「じゃあユリーシアが宿を探せよ」


俺達が言い合っているとエリシエルが


「この先に比較的安くて評判の良い宿屋が有りますよ」と言ってきた。


こういう時、エリシエルは役に立つ。しかしインターネットがあるわけでも無いこの世界で、どうやってその情報を知ったのか、不思議に思い聞いてみた。


「そうですね、街の人の会話だとか上空飛んでいた時の熱源反応。その他様々なデータを分析して出た結果です」


「そんなので判るもんなんだ。データ分析スゲーな」


「そこに看板出てますからね。値段とかも」


ふと上を見上げると確かに宿屋の看板があった。


「……ま、まあ行ってみるか」


山流亭と書かれた宿屋に入ってみると、中は意外と小綺麗で居心地は良さそうだった。


「いらっしゃいませ」店の女将と思われる人がにこやかに笑いながら迎えてくれた。


「え〜と、二部屋空いてますか」


「はい、空いておりますが…」


俺とユリーシアを見ながら「一部屋で、大きなベットがある部屋もございますよ」とか言う。


余計な気は使わないで良いんだよ。


「二部屋ね、二部屋」


「はい、では今ご案内いたします」


「あ、そうだ。飯は食べれるのかな?」朝からろくに食べてないことを思い出した。


「お食事は一階の食堂でご用意致しますが、部屋までお持ちすることも出来ますよ」


「食堂で食べるよ。ちなみにメニューは何?」


魚の煮物と野菜サラダ、スパゲティのような麺料理と鳥肉のスープとのことなのでそれを注文しておいた。

とりあえず、部屋を案内してもらい荷物を置く。荷物といっても大したものはないのだが(笑)。


食事が出来るまで、俺の部屋でユリーシアと今後の相談をする。


「ユリーシアの兄様が居る学園ってのは何処にあるんだ?」


「クロムホルツ学園とか言っていたな。場所は知らん」


「おいおい、何他人事みたいに言ってるんだよ」


「そんな事言っても、知らないものは知らないのだ」


「仕方ない、後で女将にでも聞くよ。後は金だな。ユリーシアはいくら持ってる?」


「無い」


「え」


「持ち合わせは、全く無い。急に逃げる羽目になったからな。全部アーウラの家に置いてきた」


「エリシエル…」


「ドラゴンを倒した時の報酬があるのでしばらくは大丈夫ですが、それでも何か金策をしないと長くは居れないですね」


「う〜む」


すると、急に目を輝かせたユリーシアが俺に言った。


「なあなあ、冒険者をやってみないか」


「冒険者?この世界でそう言う職業があるのか?」


「私、昔から冒険者ってやって見たかったのよ。アーメスが有るから冒険者の資格は十分有るわ」なんか嬉しそうだな。


その時ドアをノックする音がした。


「お客様、お食事ができました」女将の声がする。


「はい、今行きます。取り敢えず飯食うぞ」


俺達は飯を食うべく下に降りていった。

用意された席に着くと、早速食事をしながらさっきの話の続きをする。


「で、冒険者ってのはどうやってなるんだ?」


「冒険者組合に行って、登録すれば良いんじゃないの?私もよく知らないわ」


こいつ、常に行き当たりばったりだな。キャリオン王国だと冒険者登録なんてなかったからなあ。俺にもよくわからん。ちょっと困ったな。


「兄ちゃん達、冒険者希望か?」隣のテーブルで食事していたガタイのいい親父が俺達に話しかけてきた。なんか何処かで見たような顔だな?


「はい、そうなんですが、この国に来たのは初めてなので勝手がわからなくって」俺がそう言うと、その親父は親切に冒険者組合の場所や登録方法などを教えてくれた。


「助かります。ありがとうございます」


「ガハハ、いいってことよ」


明日の朝一でも冒険者組合に行って登録するとしよう。

そう思い、振り返ってユリーシアを見ると、ユリーシアは親父が飲んでいるビール?を見て羨ましそうにしている。飲みたいのか?


「なんだユリーシア、お酒が飲みたいのか?」


「ガハハ、お嬢ちゃんには酒はまだ早いぞ」


「何よ!私だって21なんだから、お酒くらい飲めるわよ」


「え」親父が驚いた顔をしている。


大丈夫かなあ、と思いつつビールを頼んでやった。


大丈夫ではありませんでした。




久しぶりの裏設定



神の存在


ヴァンデルワースには神と呼ばれる超存在がいるらしい。

そもそも神とは何なのか?

例えば人間より高度な技術や文明を持つ異星人がいたとして、それが人類と接触した時、人々はそれを神として認める時もあるかもしれない。

人間が住む次元よりも高次元に存在する何かが人類と接触した場合も、人々はそれを神と言うかもしれない。

しかしながら、私はそれらを神と呼ぶのは少し違うのではないかと思うのだ。

私が個人的に思う神の存在とは、ありとあらゆる事を行うことができる万能性を持ちながら、人間とほぼ同じメンタリティを持つ存在のことである。

なんでも出来るという超超能力を持つと言うのが不可能である上に、更にその能力を持ちつつ人間と同じ価値観を持つと言うのはどう考えてもありえないのである。

メンタリティというのは環境や状況、その他色々な変化で全く異なってしまうものである。人間は本能的に群れを作り、社会を構成し生活するものである。なので群れを作らない生物とはメンタリティが異なって来る。ならば群れを作る生物ならメンタリティが似かようのか、と言えばそれもまた否である。蟻は群れを作って生活しているが、蟻と人間のメンタリティが近いはずもない。



だから私は神など居ない。と昔は考えていた。

では今はどうなのかと言うと、最近ではそういう存在もありかなあと思っている。


例えばマトリックスのようなコンピュータ内部の世界が、この世界の現実だとすると神はコンピュータのプログラムを管理するもの、と考えると一応辻褄が合ってしまう。メンタリティに関しても神が自分に合わせて人間を作ったならばメンタリティが同じになるのも当然で有る。


このヴァンデルワースにおいては、人間が神を作ったという設定にしている。そうしないと信仰というものが無意味になってしまうからだ。


人が神を作り、神が遡って世界と人間を作り現在に至っている。なんか無茶苦茶だが、時間すら自由にできる神なら可能かなあとか思ってやっている。後悔はしていない。


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