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悪役令嬢・白鳥エリカの受難~真犯人は別にいる!~  作者: ハヤカワ
〈第二話 悪役令嬢と花山院の切り裂きジャック〉
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 切り裂かれたカーテンの非現実さに思わず呆けてしまっていたけれど、ちょうど頭上から「なんだこれ」と落ちてきた低い声に現実へと舞い戻ってきた。振り返りながら見上げるとジャージ姿の西門だった。花山院と透子ちゃんもいるから、どうやら一緒に戻ってきたらしい。


「西門様っ、花山院様っ、私達が戻ってきた時にはもう……」

「大丈夫、分かってるよ。とりあえず事務室に連絡してこのカーテン取り外してもらわないとね」

「別にそんなん俺らでやりゃい……」

「私達、連絡に行ってまいりますわ!!」


 泣きそうな顔をしていた助さんとそれを支えていた格さんだったけど、西門と花山院の手を煩わせるわけには、という意識はこんな状況でも働いたらしい。いや、これは二人の力になりたい、という下心なのか? 二人は我先にと争いながら事務室へと駆け出して行った。

 二人がいなくなり、教室内には私と西門たちだけになったので、私はカーテンへと近づく。


 花山院学園はお金持ち学校らしく、前世の私が通っていた高校に比べたら随分と天井が高い。窓は机の高さぐらいまでしかないから、天井から掛かっているカーテンも窓を隠すところまで。そのぶら下がったカーテンの半分より上から一直線に真下へと降りた切り口が、何本も何本も連なり、結果的にびりびりになっているような形だ。きちんと測ってみないと分からないけど、私はもちろん、透子ちゃんぐらいの身長でも、机の上に立ったところでこうはならない気がした。


「どう思う?」


 不意に同じくカーテンを見上げていた西門から声が掛けられた。というか気付くと私の隣に透子ちゃん、そしてその隣に花山院が並び、しげしげとカーテンを観察している。なんだこれ。

 ひとまず私は今観察した結果を伝えた。犯人は恐らく170センチ以上。ひょっとしたらもう少し高くなるかも。

 そう告げると、西門は眉間に皺を寄せた。なんで!?


「あー……カズが聞きたいのは多分別のことだと思うよ」とフォローを入れるのは花山院だ。

「? 別のこと、とは?」

「……お前、自分の身に起きたことも覚えてないほどアホだったのか?」

「な、な、なんですって!?」

「あ、あの、多分、白鳥さんの水着が切られた件と関連性があるのかどうか、だと思いますよ」


 ああ! なるほど。あまりにもインパクトがすごくて私の水着の件すっぽ抜けてたな。とは言えアホなんて言われる筋合いないんですけど~~~!?

 まあまあ、と透子ちゃんが宥めてくれたので仕方なく落ち着く。透子ちゃんの顔に免じてだからな! ぐうの音も出ないんだなとか勘違いするなよな!!


「たしかに……そう言われると、この短期間で二件も何かが切られる事件が起こる、というのは珍しいことですし、どちらもこのクラスに関連していると思えば関連性がなくもないとは思いますが……。ただ切られたものの差やその切り方が一貫していないような気もしています」


 あの水着の切り方って局部を露出させる切り方だったけど、あれってかなり精神的にダメージ負う一方着るまで気付かないやり方なんだよね。

 だけどこのカーテンの切り方は、ぱっと見た瞬間に「そう」だと分かるものだ。私はそうでもなかったけど、助さん格さんのように一見してすぐに怖がるのが正しい反応だと思うし、それを狙ったもののような気がする。切り方として、性質が違うんだよね。

 連続して起こる事件は謎と言えば謎だけど……ぶっちゃけ私はここがミステリー少女漫画の世界だと知っているから、バカスカ事件が起こる現状をやや受け入れつつある……口が裂けても言えないけど……。


「ちなみにだけど、お前、水着切られたんだよな」

「? ええ」

「どの部分が切られてたんだ?」

「は、はあ!?」


 言えるか~~~~~いっ!! 何のために私が昨日プールに落ちてまで遮ったと思ってんの!?

 西門のあまりにもデリカシーのない問いに、思わず顔中に熱が集まるのを感じる。落ち着け。今の私は白鳥家の令嬢、白鳥エリカなのよ……! 顔を真っ赤にするなんて言語道断と思うのに、耳まで熱を放出しているのを感じる。うう、なんて羞恥プレイ……。

 かたや西門と言えば、私が言い淀んだ上に真っ赤になっている姿を見て、何故だか知らないけど花山院や透子ちゃん達と顔を見合わせて頷いている。私の恥部を共有すんな。


「お前がなんで顔を赤らめてんのか知らないが」

「いや、そこは触れてやるなよカズ……」

「いや西門、多分これ、見せちゃった方が早いと思うよ」

「見せちゃった方が……って、何をですの?」


 逸れすぎる話と、遠くから駆けてくるような足音が近づいてくることに気が付いたらしい。

 西門は、手に持っていた包みから、グレーのチェック柄の布を取り出した。



 ん? この布、なんか見覚えがあるような………。



 ふと視線を落とした先、これと同じ柄が目に入る。透子ちゃんと花山院が履いているものだ。

 散々胸の内では透子ちゃんと呼んでいるが、私(や西門)のように事情を知っている者以外にとって透子ちゃんは「透くん」となるはずであり、そしてそんな透子ちゃんと花山院が履いているものと言えば言わずもがな。


 ――――花山院学園における男子生徒の制服(下)である。


 私がそれに気付くと同時、西門の手から零れたズボン(ズボンって言い方白鳥エリカにあるまじきダサさだと思うんだけど、下着のパンツと混同されたら困るからズボンと表記しておく)がびろんと広がった。

 するとそこに感じる強烈な違和感。



「に、西門さま、これ…………」

「……これで分かっただろ。俺がお前に聞いたことの意味が」

「授業が終わって着替えようとしたらこうなってたんだ」

「女の子の水着を切るのも非道だと思いますけど、男子の制服の()()を切るのもなかなか明らかな悪意を感じますよね……」



 助さんと格さんが戻ってきてなくてよかったと私は思った。

 なぜなら私はそのズボンを前に、笑いを隠せず口から屁のような音を漏らしてしまったからだ。




 だって、股間部分が切れてご開帳してるんだもん。

 反則だよ、それ…………。


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