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漆黒に映る  作者: 夏雪
二章
11/12

9─美しい女(ひと)

お読みくださりありがとうございます。

時間に余裕が出来、手が動くのも幸いしてか、すっかり連日更新してます。



登場キャラ等のイラスト、大募集中です。







燦々と降り注ぐ光。

日は昇り、天辺に近づく。

ガヤガヤとした賑わいの声が、室内にまで聞こえて。

聞きなれたような、まだ慣れないような、そんな感覚を感じながら、足早に、裸足で、石畳の廊下を歩く。

目的の場所に到着して、ドアの前で息を整えるように、一息吐いて、2回扉をノックする。

誰?、と、扉越しに声が掛かり、自分の名を告げると、入室の許可が下りて、失礼します、と一言入れて扉を開き、中に入った。───そこには、数々のドレスと大きな姿見、多くの化粧品や香水、香油などが置かれ、どこかの店のよう。

…一応、店ではあるけれど、売っているものや主な業務としているものは、それらではないけれど。


「寄席の準備に参りました、アリシュナ姉さま」

「今日はリルなのね?えぇ、よろしくお願いするわ」

「はい。お召し物はお決めになられていますか?」

「えぇ、これよ」


そう言いながら、視線を向けた先には、お召し物だけでなく、化粧品や簪のようなもの─レナーピというらしい─の装飾品までもが、一式揃えられていて、流石だ、と心の中で嘆息する。

彼女の名は、アリシュナ。今の私より10歳年上の21歳にして、女性なら一生に一度は成し得たいと言われる、<ラユイ>の称号を持つ、女性。

ラユイの称号の相応しく、彼女は美しい。青みがかった、透き通るような、目を惹く輝きを放つ銀色の髪に、女性らしい愛らしさと妖美さを併せ持つ、いじらしい赤と白の混合色─真朱色というらしい─の瞳は、濡れればまさに宝石。高く通った鼻筋に、形がよく、一種の美術作品のように精巧に、パズルのように元からそこにあるものだと決められていたかのように配置する、アーモンド形の瞳、眉、鼻、瑞々しい赤色の唇。雪と同化できてしまえそうなほど白く、きめの細かい美しい肌。スラリとした手足に、いやらしさを感じさせないプロポーション。

神からの贈り物、という言葉を具現化したような人だ。


「了承しました。では、少し失礼しますね」


抜かりのない準備、それも、配色のバランスの取れた非の打ちどころのないもの。この人の側付きになれる日は、毎回の楽しみであり、為になる。…いっそ専属になってしまいたいほどだけれど、そんな願望が、新人の、所謂<カイロム>である自分のものが通るはずもないのだけど。

お召し物を、正しい順序で着替える彼女を、手伝う。

────この世界の服装は、特殊でない限り、男の人はズボン、女の人はドレスだ。尤も、その様相はあの世界と似て異なるが。

まず、ズボン、この世界ではシューヴェという名で、動きやすい造りになっている。腰はベルトで締めるタイプで、生地は通気性を重視した麻のものがほとんど。色は無彩色か藍色など、暗めの色か白が多く、ピンクだとか黄色だとか、派手な色は少ない(着てる人は相当な変人)。ジャラジャラしたものをつけている人もいるが、=権力の誇示のようなものらしく、性格のゲスい男や、貴族(爵位を賜っている人)、豪商に多いらしい。他にも、オシャレとしてちょっとした装飾をする人もいるけど、前者の性格ゲス男はあまりに派手派手すぎて見ていて逆に痛々しいので、すぐに分かる。貴族、豪商に多いのは、周りから舐められないように、という牽制も含まれているのだとか。

そしてドレス、こちらではエープという名で、ドレスというよりはチャイナ服に近いもの。チャイナ服の袖ありオフショルダーのようなもので、スリットはあの世界のものよりやや短く、太腿の真ん中辺りから入っている。…まあ、この世界の女の人のために作られたような造りだ。色は特に指定はなく、刺繍も様々。フリルやレースが施されていたり、宝石が縫い付けられていたり(収入が相当高くないと無理)、スパンコール─キランというらしい─があったり…と、まあ、とにかく色んなデザインがあり、多種多様。


「アリシュナ姉さまは、朱色が映えますね。瞳と似た色だからですか?」

「あら、女の子なのにお上手ね、リル。褒めても何もないわよ?」

「本心ですから、なにも求めていはいません。…でも、アリシュナ姉さまは、やっぱり何色でも似合いますね」

「ふふ、そう言われるのは嬉しいわ」


くすくす、とささやかに笑う彼女は、高嶺の花。触れることにすら、躊躇ってしまうほどに美しく、輝いている。醜い私は、近づくことすら烏滸がましいのだろう。

朱色のエープを着こなす、姿見越しのその表情を見るたびに、そう思う。

化粧なんて全くと言っていいほど必要ない美しさを持つこの人が、化粧をする理由を、少し前に訊ねたことがある。曰く、‘本当の姿は真に愛する方にのみで、十分よ’、だそうな。

そう口にしている彼女は、真に柔らかく、穏やかな雰囲気と表情で、心にその人を思い描いていたのだろう、と容易く想像できた。




次回もよろしくお願いします。


2018.09.09 章設定しました。

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