code02:vision01 ホットライン
――4月19日 午前9時頃――
思った通り、電話してくるか――。
木崎は苦笑し、受話器を取った。
「どうした。気になって夜も眠れないか」
『いきなり何の話をしている』
即座に不機嫌な声が返ってくる。
『先日、頼んだリストの件だ』
「それなら午後には送ってやるよ。それだけじゃないだろ」
つい愉しむ口調になってしまう。
受話器から、ため息が返される。
『……娘はどうだ、と言わせたいのか』
「最初から聞けばいいんだよ。心配ない。思った以上に、よくやってくれてるよ。高桐ともな」
『そうか。奈守君達もいるから大丈夫だと思っていたが』
受話器を持ち換え。
なだめるように言った。
「わかってるだろ。そういう意味じゃないって」
『なんだ。どういう意味だ』
「今度の異動も、初任科研修の時と同じってことだよ」
わずかに言い淀む。
『……高桐君の下ならいい訓練になるだろ。現にそうだった』
「なあ」
とぼける相手に、木崎は畳みかけた。
部下としてではなく、昔の呼び方で。
「三朝ちゃんは気の毒だったよ、本当に。
あんな事がなければ、大学卒業と同時に結婚もあり得たんだからな」
ついに相手の声に怒りが走った。
『いい加減にしろ。こっちはリストを急いでるだけだぞ』
「お前は高桐を買ってるからな」
ずばり図星をついてやった。
黙り込む気配がある。
「まあ巡り合わせってヤツだよ。かえって良かったんだろ?
ちょっとは肩の荷も下りるじゃないか」
『……その話、高桐君には言ってないだろうな』
「本人が知ったらどう思うかな」
『木崎』
「はは。冗談だ。言うわけないだろ」
息をつく音が受話器から聴こえて、
『とにかく頼むぞ』
ぶつッ――と電話が切れた。
やれやれ。
親子そろって素直じゃない。
しばらく電話が増えるかもな。
受話器を戻した。
すると、置いたそばから電話が鳴って。
一転して、事件の一報が伝えられた。
三係の事件と類似の遺体が発見され。
さきほど現場へ急行したという。
受話器を置いて、部屋を出た。
緊張した秘書官がドアを開ける。
ともに部屋を出て、エレベーターに乗った。
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