code06:vision03 消える月
本部を出て。
大通りから路地に入った。
いつもの帰り道だった。
何度か送ってもらった帰り道も、
今夜はひどく暗く、寒々として感じた。
もう月灯りが、届いてないせいか。
心許ない外灯の下。
どちらも何も言わずに歩く。
少し先を歩く高桐の背中は、
すぐそこにあるのに、遠かった。
思えば。
ずっと近くて遠い存在だった。
気やすくしてくれる高桐だから、
近しくなっていただけだった。
三朝から見れば、遠くて気高くて、
追いつけない、でも必ず見てしまう、
触れてはいけない――引力の存在。
上官だから……、
相手の人が居るかも……。
それだけでなく、それ以前に。
やがてT字路を左へ折れ、川沿いを行き、
三朝のマンションの前に到着した。
立ち止まった高桐が、ゆっくり。
振り返って、見下ろした。
真正面から、とはいかなかったが。
上目気味に、その視線を受け止めた。
いつもの高桐の目に見えた。
知っている高桐の、平然とした目。
三朝は、すこしだけ安堵した。
あの、と口を開きかけた――。
なぜか一瞬、場が遅れて見えた。
じわっと、温かみだけが、伝わった。
高桐が三朝の左手を掴み。
何を言うでもなく、歩きはじめた。
とんでもないシーンに変わっていた。
何が起きているか、処理に困った。
職務でなく、手を引かれて付いて行く。
高桐が「じゃあな」と言って消える。
三朝は行ったことがなかった、その角を。
寄りにも寄って今夜、一緒に曲がっていた。
先にあるのは大きめのマンションだった。
夜のせいか青く見える、悠然とした建物。
高桐は、三朝の手を離すことなく、
光のエントランスを、足早に横切った。
まっすぐエレベーターに乗り込んでしまう。
無神経に明るい箱内で、硬直していた。
繋がれた手の、温かみは熱に変わって。
これからどうなるのか。
それなりの年齢なので、予測はつく。
それが、まずもって信じられなかった。
最近のエレベーターは”チン”と言わない。
すっと停止して、無音で扉が左右に割れた。
一番手前の部屋の前に立った高桐は。
ドアの目立たないボタンを指で押した。
ジーっとロックが解除され。
ただ無言で、レバーを引いて中に入った。
手は離されていない。
つまり三朝も入るしかない。
混乱の中、足を踏み入れた。
背後でゆっくりドアが閉じて。
また空間は、光の薄い――闇になった。
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