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LOVERSコード  作者: 蒼貴みかげ


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code05:vision11 救出

 感触で、すぐ女性だと分かった。

 派手な物音に、嘲笑と煽りが加わる。

 

「そのままやれよ!」


 もしかして、高桐に――。


 しかしそれ以上、奥へ行けなかった。

 女性の痛みが暗がりの中でも分かる。

 ひとまず抱え、廊下へつれ出した。

 

 月灯りに出た女性は、倒れ込み。

 声も出さずに嗚咽をはじめた。

 アリアで見た面影はほとんどない。

 服は乱れ、髪はほつれてメイクも流れ。


 女性の肩に両手を添えて。

 部屋の入り口を振り返った。

 怒号、殴る、叩きつける音が止まらない。

 高桐の声は聴こえなかった。

 

 ここで待たせて、やっぱり中へ――。

 腰を浮かせると、女性が震えた。

 

 むせび、苦しく息を乱している。

 女性と入口を、何度も交互に見て。

 せき込んだ女性の背中をさする。

 

 どうしよう――早く――お願いだから。


「立樹!」


 思いのかぎり顔を上げていた。

 階段から現れた、姿。

 

「白石さん!」


「警視は!?」


「中に! お願いします、1人でっ」


「わかった、大丈夫だからっ」


 ドアへ駆け込んでいく。

 追随の高桐班3名も中に入り。


「立樹警部っ」


 今度は倉橋の声が響く。

 駆け寄って跪き、女性に手を添えた。


「車を回しました。下へ」


「はい」


 怒号の増した入口を見てから。

 泣きはらす女性を、覗き込んだ。


「立てますか? 一旦、警察で保護しますから」


 三朝の言葉に、かろうじて頷く。

 倉橋と挟んで、ゆっくり立たせた。


「痛むところ、ないですか? 手当も受けられますから」


「…………」


「もう大丈夫ですよ。

中の人たちとは会いませんから。下へ降りましょう」


 言葉の限り、前職を生かす。

 女性対応要員として。

 涙に曇る眼を向けて。

 精一杯、頷いてくれたのが。

 

「じゃあ」


 倉橋に目配せしたが。

 反応が鈍く感じたのは気のせいか。


 階下には、黒いセダンの覆面と。

 2台のパトカーが、すでに到着していた。


 女性を高桐班の覆面に乗せると。

 倉橋は、乗り込む前に振り返った。


「彼女を所轄へ送って、直帰します。警視にお伝え願えますか」


「わかりました」


「おかげで未遂で済みました。ありがとうございました」


 ばたむ、とドアが閉じられる。

 走り去る、赤いテールランプを見送った。

 なぜ礼を言われたのか分からなかった。


 降りてくる声が聞こえ、振り返った。

 高桐班と白石が1人ずつ連行して来る。

 つまり男は全部で4人。

 一様に髪が乱れ、顔にアザが出来ている。

 身なりは立派な、学生の集団と思われた。


 だが。

 最後に降りてくるはずの人影がなかった。

 階段の上に――遅れて降りても来ない。 

 思わず目を左右させて現場を見守る。


 暴れる男を、パトカーにポイっと投げ込み、

 白石が真っすぐ近寄った。


「女性は?」


 三朝は、白石を見つめていた。

 白石が、一瞬「?」という顔をする。

 え、乱闘は……?

 服はおろか髪の毛一筋、乱れていない。

 涼しいものだ。

 じゃなくて――。


「倉橋さんが……所轄へ」


「俺も一緒に行ってくる。引き渡しはしとくから」


 頼もしく言うと、廃ビルを見上げた。

 一番知りたい、知るのが怖い答え――。


「高桐警視が怪我をした」


 見開いた三朝の目を見て。

 なぜか、ほんのり笑って言った。


「立樹、行って診てあげてくれない?」

『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。

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