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LOVERSコード  作者: 蒼貴みかげ


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code05:vision10 廃ビル

 古い7階建てのビルだった。

 電気の消えた縦看板が残っていて。

 以前は3階以上が、ホテルとして

 使用されていた、というのが分かる。

 

 一階の右側がテナント入口。

 左側に階段がついており。

 男女は、その階段を上がった。

 声が下まで降りてきている。


 高桐が見上げた。


「車じゃなかったが……どうするか……」


 たしか『廃ビルのお洒落なバー』とか。

 本当なら、何も問題ないが。


「ただ、ちょっと不穏な感じが……」


 正直に言って見上げると、

 高桐も同感のようだった。


「何かあっても後味悪い。確認だけしとくか」

「はい」


 そこで、ようやく手を離して。

 高桐が先に階段に足を掛けた。


 登り口脇の崩れかけたポストに、

 新しい店名表札などはなかった。


 声が折れたように聞こえたのは、

 3階に差しかかった頃だった。

 2階分あけて、のぼりはじめた。

 つまり5階に入ったと思われる。

 慎重に音を立てないよう昇った。


「仕事、増やさないでくれよ」


 ごくごく小さい声で、高桐が言う。

 何かあったら、メンバーを呼んで、

 突入して、所轄へ連絡も必要だ。

 面倒なことが、たくさん起きてしまう。

 帰りだって、ものすごく遅く――。


 そして自分たちも5階に到着した。

 そのタイミング。


「やっぱりか」


 聞こえたのは、複数の男の狂喜の声と。

 女性の、空を切るような鋭い悲鳴。


「当たったな、立樹」


 横顔は、すでにモードに入っている。

 イヤな予感が足元から頭へ抜ける。

 案の定、言った。


「俺が突入する。立樹はここで待機しろ」


「待って下さいっ」


 かろうじて声は抑えて。

 高桐を抱え込んだ。右腕を。

 間近に顔が迫るのも、忘れた。


「ムチャです、何人いるかも分からないのに」


「大丈夫だ」


 高桐が、腕の手を解こうとする。

 ぐっと、もう一度、抱きこんだ。


「何がですか」


「すぐ白石が来る。

女性を逃がすから、立樹は保護して下へ。

分かったな」


「高桐さんっ」


「心配ない。あいつが来たら誘導して」


 悲鳴が、また。酷くなっていく。

 状況も。

 通路の奥、ドアを見て言った。


「猶予はない。被害が出たら立樹だってイヤだろ」


 だからって。


「たぶん、そこまで来てる。頼んだぞ」


 ばっ。

 と、高桐は腕を引き抜いて。

 奥の扉めがけて走り出した。


 思いのほか、通路は長い。

 アリアに合わせて靴を変えている。

 走りにくいが、三朝も後を追った。

 待機など……してられなかった。


 高桐が、扉に飛び込んだ。

 足が速いから、追いつけていなかった。

 途端に、男たちの声が怒号に変わる。

 間に合って。

 行って何の助けにもならないだろうが。

 じっとはしていられなかった。


 三朝もドアをくぐり――。

 灯りの全くない狭い通路で、

 誰かをばったり、受け止めた。

『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。

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