code05:vision06 熱視線
「警視でもあんな顔するんだね」
珍しそうに眺めて。
はっ、と白石が気付いた顔をする。
「仲いいなら当然か。仕事とプライベートは別だよな」
ここは話を合わせないと。
「親しい女性くらい居ますよね。冗談みたいにモテますし」
「たしかに、今夜も何回も断ってた」
「聞き込みの時もです。列でもできるかと思いました」
「それはそれで大変そうだね」
苦笑いした白石を横目に見て。
三朝は何とか、監視に戻れた。
依然、語らっている高桐を含めて。
あらためてフロア全体を静かに見渡し。
トイレ前通路を振り返って。
また身体の芯が、凍りつくのを感じた。
さっきと違う、眩暈のような浮遊感が、
奥底から、三朝を浮足立たせる。
――今の、何――?
通路入口に、人影はなかった。
ただ残滓だけが、残っている。
こちらを見ていた。
ように感じた、誰かの気配――。
気がつくと、カウンターを降りていた。
「立樹」
「すみません」
うわ言のように、通路を見たまま。
「ちょっと、お手洗いに」
「あ、待てよ」
慌てた白石の声は、
しかし、そのあと、追って来なかった。
それにも気がまわらないくらい。
気のせい……じゃないだろ、今の。
刺すような、心ごと奪うような、
姿はないのに焼きつくような強い視線。
見極めたくて、通路を目指していた。
が。
通路入口から奥を見ても。
視線の主はいなかった。
出入りする無関係な客すら居ない。
無人の通路が、ただ奥へ。
ゆっくり進んで、奥の角に立った。
左を向いて――それでも誰も居なかった。
逃げられたか……。
数メートルの通路の先、左に男子トイレ、
正面に女子トイレ、右に通用扉がある。
そのいずれかに入ったか。
そもそも誰も――いなかったか。
しばらく眺めてみるが、誰も出て来ない。
ざわめきだけが、胸に残る。
どのくらい経ったかは分からないが。
いつまで待っても埒が明かないので。
ついでに本当に手洗いに寄って。
カウンターに戻ろうと通路を引き返した。
あれは何だったのか。
気のせいではなかったと思うが。
消えない残像をいつまでも探して、
角を曲がって、立ちすくんだ。
通路の壁に背中を預けて。
すぐ先に――高桐が、立っていた。
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