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LOVERSコード  作者: 蒼貴みかげ


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code05:vision03 店内監視

 いまのところ――。

 高桐はグラスを傾けながら、

 気配でフロア全体を探っていた。


 店内に怪しい動きはなかった。

 時刻は23時9分。


 これまでの事件で言うと、

 犯行時刻は日付けが変わる頃。

 気の抜けない時間帯に入りつつある。


 また横に人影が立った。

 鼻を突くフローラルの香り。

 キツすぎないか。


「おとなり、いいですか」

「連れが来るので」


 顔も見ず返すと、甘い声が怒って遠のく。

 これを、もう5回、繰り返していた。

 聞き込みではないので、面倒だった。


 煙草に火を点け、グラスを手に持つ。

 気がつくと中身が空になっていた。

 目ざといバーテンが、前に立った。


「次、何か飲まれますか」

「じゃあ同じのを」


 バーテンは頷き、目の前で作りはじめる。

 ちらっと高桐を盗み見てから言った。

 

「……あの女性、非常におモテになるみたいですね」


 目線をやって、後ろを示す。

 つられて見ると、倉橋と目が合った。

 慌てて逸らしている。

 さっき男が去って、いま3人目だ。

 昨日まで班員とカップルを装わせていた。

 やっぱり放っとかれないよな。

 知っているだけに、そう思っていた。 


「手前のですか」

「いえ」


 女性バーテンは手を止めず笑う。


「そちらの女性もですが、奥の女性です」


 立樹の方だったらしい。


「いま話しておられるお客様の他にも、

何人か気になってる方がいるようですよ」


「へえ」


 そう答えたが、実は気づいていた。

 ずっと店内を監視している。

 誰が誰を見ているか、気にしているか。

 立樹を見る男が複数いることも、当然。

 ただ今の男が離れないので、

 誰も声をかけられずにいる。

 それは――。 

 

「……まあ、あの見た目ですからね」


「どこか目を惹きますよね。

綺麗で可愛いだけじゃなくて。部下の方ですよね?」


「そうですよ」


「あのバーテンも言ってました。

とても『3度目のお客様』には見えないって」


 差し出しされたグラスを受け取った。

 ロックに見える仕様の、ウーロン茶。


「おかげで苦労することも、

本人にはあるみたいですけどね」


「そうなんですか?

まあ気に入らない人から言い寄られたりしたら、

煩わしいだけですよね」


 困ったような笑顔を見せると。

 他の客に応えて、その場を離れた。


 残された言葉に、つい思い出す。

 三朝の研修時代の、あの事件――。

 

 ため息でふり払い、目だけ店内に戻した。

 男と話す三朝を捉え、しばし観察する。

 談笑というか絡まれているに等しかった。


 心底楽しいという顔はできていないが、

 それなりの雰囲気は出せている。

 痛いのは、トイレ通路を背にしている事。

 男が反対側に座っていて監視できない。

 体の向きなど最初から調整できていれば。

 通路側からナンパされ、監視も出来た。

 

 店内の音楽で、声までは聞こえないが、

 「別の店に」と誘われているようだ。

 手を握られ、しつこく口説かれている。

 

 そろそろ表情も怪しいか……と思った時。

 いきなり男が三朝の腰に手をまわした。


 さすがに驚いて、演技も崩れている。

 引きつった顔で男を押し返……せない。

 困って周囲を見て、ついに男を睨んだ。

 まさか殴らないよな、と見守ったが。


 白石が隣に座り。

 無事に、男が去って行った。

 何やら言い合い、笑い合っている。

 妙に馬が合うらしい。


 またハイライトを手に取って1本抜いた。

 火を点け、吸い込んだ煙を吐き出すと。

 思わぬ声が、耳に飛び込んできた。


 左を見ると――学生時代から唯一、

 心置きなく話せる女友達が、

 見たことのない装いで座る所だった。

『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。

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