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LOVERSコード  作者: 蒼貴みかげ


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41/58

code05:vision02 クラブ・アリア

 黒服が、目を見てほほ笑み。


「では、どうぞ」

 

 木製の重い、第二の扉を手前に引いた。

 一気に別世界が、三朝の前に広がった。

 

 静かな喧噪と、ムーディーな音楽。

 熱気と、かすかなアロマの香りが。

 耳孔と鼻孔を刺激する。

 

 黒調の壁に、金の手すりやシャンデリア。

 ソファや椅子の赤が目に映える。

 古い映画の1シーンのような。

 レトロ調に洗練された、目を見張る空間。


 臆していると思われないよう踏み出した。

 

 店内は混みすぎない程度の客入りだった。

 豪華な内装、5~10歳ほど高めの年齢層。

 被害者のクラブより大人の店ではある。

 

 が。

 客のやっていること自体は、同じだった。

 男女で飲み交わし、ほほ笑み、探り合う。

 寄り添って消え行くのも、同じだろう。

 横目に止めながら、通りすぎた。


 カウンターに倉橋、離れた席に高桐。

 見すぎないよう注意して。

 指示どおり奥のカウンター椅子に座った。

 すかさずバーテンが近づいた。


「いらっしゃいませ。”三度目のお客様”ですね」


 厚みのある声で、コースターを差し出す。

 30歳くらいか、さすが見栄えのする姿。

 頷き、馴染んで聴こえるよう意識した。


「軽いのを一杯」

「かしこまりました」


 視界の隅で、白石が座るのを確認した。

 女性のバーテンが、同じく対応している。


 三度目の客。

 奈守が店と決めた捜査員の暗合だった。


 三朝の左右の席は空いている。

 最寄りの客はスーツ姿の男女のカップル。

 しっとり語らう姿がカウンターには多い。


 バーテンが、そっとグラスを置いた。

 ライトグリーンの綺麗なカクテル。

 見上げると、ほほ笑みだけで示した。

 ちゃんとノンアルコールですから。

 

 22時。

 トイレ前通路、入口の監視を開始した。 


 悪目立ちしないよう、時おり目を向ける。

 怪しい客がいないか店内もチェックする。

 自然、他のメンバーの様子も目に入った。


 倉橋は、同年代の男1人と話していた。

 余裕のある笑みで、目を見て応えている。

 さすが。どう見ても客にしか見えず、

 経験の差を感じてしまう。

 さきほど高桐と並んでいた姿といい。

 女優のように馴染んでいて、綺麗だった。


 自分は借りてきた猫の様だろうなと。

 グリーンのグラスを傾け、視線を逸らした。

 その先――。


 高桐は1人、琥珀色のグラスを置いて、

 灰皿に煙草を叩いていた。

 いつもと違う、指に挟んだ紙巻き煙草。

 濃い紫煙が、漂うように昇って霧散する。

 吸い付ける姿が、何とも絵になる姿で。

 思わず見ていると、不意に目を上げ――。

 三朝は慌てて視線を落とした。


 グラスをなぞり、通路を振り返った。

 あぶなかった。

 しばらく通路と手元以外、見えなかった。

『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。

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