code05:vision02 クラブ・アリア
黒服が、目を見てほほ笑み。
「では、どうぞ」
木製の重い、第二の扉を手前に引いた。
一気に別世界が、三朝の前に広がった。
静かな喧噪と、ムーディーな音楽。
熱気と、かすかなアロマの香りが。
耳孔と鼻孔を刺激する。
黒調の壁に、金の手すりやシャンデリア。
ソファや椅子の赤が目に映える。
古い映画の1シーンのような。
レトロ調に洗練された、目を見張る空間。
臆していると思われないよう踏み出した。
店内は混みすぎない程度の客入りだった。
豪華な内装、5~10歳ほど高めの年齢層。
被害者のクラブより大人の店ではある。
が。
客のやっていること自体は、同じだった。
男女で飲み交わし、ほほ笑み、探り合う。
寄り添って消え行くのも、同じだろう。
横目に止めながら、通りすぎた。
カウンターに倉橋、離れた席に高桐。
見すぎないよう注意して。
指示どおり奥のカウンター椅子に座った。
すかさずバーテンが近づいた。
「いらっしゃいませ。”三度目のお客様”ですね」
厚みのある声で、コースターを差し出す。
30歳くらいか、さすが見栄えのする姿。
頷き、馴染んで聴こえるよう意識した。
「軽いのを一杯」
「かしこまりました」
視界の隅で、白石が座るのを確認した。
女性のバーテンが、同じく対応している。
三度目の客。
奈守が店と決めた捜査員の暗合だった。
三朝の左右の席は空いている。
最寄りの客はスーツ姿の男女のカップル。
しっとり語らう姿がカウンターには多い。
バーテンが、そっとグラスを置いた。
ライトグリーンの綺麗なカクテル。
見上げると、ほほ笑みだけで示した。
ちゃんとノンアルコールですから。
22時。
トイレ前通路、入口の監視を開始した。
悪目立ちしないよう、時おり目を向ける。
怪しい客がいないか店内もチェックする。
自然、他のメンバーの様子も目に入った。
倉橋は、同年代の男1人と話していた。
余裕のある笑みで、目を見て応えている。
さすが。どう見ても客にしか見えず、
経験の差を感じてしまう。
さきほど高桐と並んでいた姿といい。
女優のように馴染んでいて、綺麗だった。
自分は借りてきた猫の様だろうなと。
グリーンのグラスを傾け、視線を逸らした。
その先――。
高桐は1人、琥珀色のグラスを置いて、
灰皿に煙草を叩いていた。
いつもと違う、指に挟んだ紙巻き煙草。
濃い紫煙が、漂うように昇って霧散する。
吸い付ける姿が、何とも絵になる姿で。
思わず見ていると、不意に目を上げ――。
三朝は慌てて視線を落とした。
グラスをなぞり、通路を振り返った。
あぶなかった。
しばらく通路と手元以外、見えなかった。
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