code01:vision02 JPO本部
――4月10日 13時――
――とうとう来てしまった。
三朝は、地上からビルを見上げていた。
モダンな見た目の築浅ビル。
ガラス張りの上層階と、木調の外壁。
『Japan Police Organization』
金色の文字が、陽の光に反射している。
東京湾岸・霧海エリア。
JPO本部は、海に面する大通りにあった。
背後は湾岸に沿う公園と、都心の遠景。
恐れていた、わけではないが。
覚悟なくては通れない扉に向け。
三朝は、今まさに――踏み出した。
大きなガラスの自動ドア。
門番をしている警官が敬礼した。
目を見張って、頭を下げた。
”顔バレ”しているとは思わなかった。
エントランスを潜り抜け。
広い、吹き抜けのロビーに入る。
ビル内の喧騒が、とたんに襲って来た。
話し声、電話の音、エレベーターの到着音。
左にエスカレーター、右に待合スペース。
観葉植物の木製ボックスで仕切られている。
まずは受付か――?
正面に向けて歩き出すと。
横からスッと、人影が近づいた。
黒い細身のスーツ。
大きいが、涼しい目元。
豊かな黒髪をゆるく束ねた……。
一歩先で立ち止まる。
仕事のできそうな女性だった。
「立樹警部補でしょうか」
声まで涼やかな、凛と響く――。
「はい」
「捜査部第三係係長の倉橋と申します。
警視より申しつかりまして、本日ご案内させていただきます」
折り目正しく、一礼した。
捜査部、係長……。
なんだか気圧された気分だった。
「お願いします……」
最上階から下へと順に。
関係部局を案内してくれた倉橋は。
「あとは第三係ですね」
エレベーターに乗り、「8」を押した。
降りた先に『捜査部第三係』の扉があった。
ためらいなくドアを開く。
倉橋に続いて、中に入った。
思っていたのと、違う刑事部屋だった。
電気の消えた室内は、大窓に囲まれている。
半分おりたブラインドの下に、湾景が見えていた。
そして。
並んでいるのは、いくつもの個人机ではない。
コの字に組んだ長机と、壁一面の巨大スクリーン。
天井のプロジェクタが、会議スペースだと示している。
奥の3分の1ほどは、また異様に真っ黒だった。
ディスプレイとサーバータワーひしめくサイバー空間。
「こちらの部屋も、
よく来ていただくことになると思います。
『捜査部』についてはお聞き及びでしょうか」
事前にもらった資料を思い返す。
たしか……司令部直下の捜査部隊。
司令部第三係に従うのが。
捜査部第三係――となっていたはずだ。
「18名が在籍されていて、3班に分かれているとか」
そう言うと、倉橋は頷いて受け取った。
「はい、各班6名の3班編成です。
私は司令長の下で、班長をさせてもらっています。
奈守班は久原、白石班は新堂。
司令官補佐にも、各班ともにお世話になることと思います」
おそらく。
大半が三朝より年上で。
階級は1つ2つ下。
経験は遠くおよばない。
肩書だけの”上司たる部下”というわけか。
――と三朝は理解した。
「あとは司令部第三係ですね」
部屋を出た倉橋は。
エレベーターのすぐ横の階段室に入る。
数段うしろを踏みしめるように上った。
気がつくと。
斜めがけバッグの肩ひもを両手で握っていた。
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