code04:vision01 司令室解析
会議は午前11時すぎに終了した。
全員が立ち上がろうという時。
着信音が鳴り響いた。
倉橋が応答して、すぐ視線をあげた。
大城のDNA完全一致の報だった。
即、逮捕状請求手続きが行われ、
13時半、正式逮捕となった。
***
「ちょっとキーボードが輝いてるよ、白石くん」
「いまどきのゲーミングPCはこんなだよ。
色も変えられるよ、ほら」
「え、青しぶいな。今度、買う時ついてきてよ。
どれ選んでいいか分からないから」
「いいけど。奈守、ゲームしないだろ」
「買ったらするかもよ。おすすめ、あるんだろ」
「あるよ。オンラインでもオフラインでも」
じゃれつくような会話を。
三朝は横に座ってい聞いている。
今から白石が行うスマホ解析を、
間近で見せてもらえることになった。
「で、それはどこ製なわけ?」
「台湾だね。かなりイジって別物になってるけど」
「いかつい見た目だよなあ。セキュリティも万全?」
「どうかな。標準よりは強いはずだけど」
涼しい顔で答えつつ、ケーブルを繋ぐ。
「こっちはこれでいいな」
即座にノートPCに認識される。
白石がキーを叩くと、画面が流れ始めた。
「とりあえず、これで中身を全部ひろって一覧にする。
ちょっと時間かかるから、そのあいだに」
白石はもう一台、ノートPCを取り出した。
「あ」と声が出そうになり、飲み下す。
奈守が意外そうにのぞき込んだ。
「そっちは地味めだね」
「でも中はやっぱり光るよ。
こっちはショップブランドのハイエンド構成。
ガレニアね。やっぱりイジってあるけど。
で、ミラーにして、吸い出したデータを確認していく」
開けて、ささっと操作すると。
画面にデータが表示された。
「で、これでまずSNSの履歴とか、メール、
写真フォルダなんかを見ていくわけだけど」
「つか、早いな」
「解析用のはメモリ64とハイクラスCPUに変えてあるから。
他もいろいろね。
ガレニアは、その7割くらいの性能かな。メモリは半分。
……だめだな、SNSは。事件前後、とくに怪しい会話はない」
「予想どおりか」
そこへ入り口のドアが開いて。
「はじめたか」
高桐が戻ってきた。
上条との話は終わったようだ。
三朝と白石の間に立って。
画面を見下ろした。
「いまSNSは見ましたが。とくに履歴はありませんね」
「さすがにそこまでじゃないか」
「メールも……消してあるかもしれないですね。
事件前の何日か分、抜けがありそうです」
「拾えるか」
「ログは拾えると思うので、やってみます。
ちょっと時間ください。
完全復元は無理かもしれないですが、あとでまとめてやってみます」
「ちょっとおバカそうだからさ。
メールのスクショとかありそうじゃない?」
奈守の言葉に、白石が即フォルダを開く。
「……たしかに」
白石が拡大表示してくれたのは。
まさしくメールのスクリーンショットだった。
『4月19日 PM23:45 月岡町第2パーキング』
「ほんとに残してるとは……」
奈守が自分で言って驚愕している。
「ウソだと思ったよ、声かけられたってのは。けど、これは」
「抜けてて助かったな。とりあえず嘘の証言という証明にはなる」
「ああ……まあ、やっぱり指示役がいるってことだよな、これは」
「車のドアを外から閉めた人物もいる。
大城たちは暴行役として集められたって事だろうな」
「闇バイト……か?」
奈守が腑に落ちない顔をする。
それはそうだ。
闇バイトなら報酬が必要だ。
今度の事件で何を得するというのか。
「カメラでも回してたのかな」
白石の呟きに奈守が食いついた。
「え、裏で流すってこと?」
「いや思いつきだけど。もし組織犯罪って言うならありうる」
「……か。そうだよな」
奈守は考え、高桐が受けた。
「立樹が言う『犯行が目的じゃない』ってやつだな。
そういうサイトなら得るモノもある」
「そうですね、有料会員制ですから。
素材が必要でしょうし」
高桐が白石を見下ろした。
「闇サイトの方はどうだ」
「見た形跡、ありますけど……やっぱり踏み台ですね」
踏み台とは。
海外サーバーなどをいくつも経由して、
配信元を辿れないことを言う。
犯罪のプロや組織が使う方法であり、
素人には簡単にまねできない手口だった。
「それ以上、追えるか?」
「いや……追えないですね。
ここまでが限界です。レンタル期限ごと消されてますね」
白石の言葉に、苦々しさがにじむ。
口元に手を当てて奈守が言った。
「やっぱり組織犯罪ってことだよな」
「確定して良さそうだな。動画撮影が目的とは限らないが」
しばらく解析を見守った。
うん、と白石がうなずく。
「やっぱりスクショ以上の情報はなさそうですね。
SNSも含めて、解析は進めますが。
位置情報では、この『月岡町第2パーキング』には行ってませんね。
直接、クラブ裏路地へ行っています。
通話履歴も金融関係とか個人通話で、非通知の通話とかはなさそうです。
連絡はすべて踏み台経由でメール、DMだったっぽいです。
キャッシュの方も――まあ、根こそぎですね」
「リモートで消してるかもしれないよな、組織がらみなら」
奈守の呟きに高桐も同意する。
「ありうるな」
つまり――。
大城がやらかさなければ、
いまも何もつかめていなかった、
ということが分かったわけだ。
相手は犯罪組織で。
足がつかないよう、きっちり計画していた。
「まあ十分だろう。ここまでやられて何かつかめるわけもない。
大城を叩ける材料があっただけでも収穫だな、奈守」
ソファに座った奈守が張り切る。
「叩かせていただきますよ、夕方から。
どうせモンタージュだって、まともに協力するとは思えないしな」
「もしもの時は、そこも締められるか?」
「いいよ。あいつムカつくから。
俺でよければ行って、できるだけ正直に話せるよう、
お力添えしてやるよ」
白石は、より深い解析に入ったようだ。
奈守は考え込んでいる。
聴取のシミュレーションでも始めたのか。
高桐が三朝のほうを向いた。
「なにか考えてる感じだな」
三朝は高桐を見上げ。
テーブルの上のスマホを見た。
「けっきょく、
あの被害者においたスマホの意味は何なのかな、と」
「それだよな」
ソファから奈守が言った。
「あの儀式めいた、もったいぶった動きでスマホ置いて。
その心はってやつだよ」
第一事件の遺体遺棄現場。
高架下トンネル内の映像。
「意味がないわけ、ないんだよ。
裏向きってのが、思わせぶりだろ?
別に普通のスマホだったよな?
若い子らしく、きらびやかに飾ってあったけどさ」
誰も返答しない。
高桐は考えていて。
白石は解析を続けている。
三朝は被害者のスマホを思い浮かべた。
キラキラケースに、ステッカーが何枚か……。
また「あ」と出そうになるのを飲み込んで、
あとで写真を見てみようと考えていた。
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