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LOVERSコード  作者: 蒼貴みかげ


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27/58

code03:vision07 捜査報告

「では、はじめさせていただきます」


 議場に倉橋の声が響いた。

 窓側に高桐、奈守、白石が並び。

 向かいに上条、倉橋。

 奈守班=久原、白石班=新堂。


 三朝は奥にひとりで座って、

 正面のプロジェクタを操作していく。


 倉橋が上条を促した。 


「上条司令部長。開会、お願いできますか」


「――まあ進めようか。最後に統括する」


 引き締まった声で答えている。

 背を向けて表情は見えない、が。


 倉橋が奈守を見た。


「では、奈守警部。事件概要の確認、お願いします」


 奈守が立って、スクリーンを見上げた。

 

「事件発生は4月19日深夜。

渋窪区月岡町のクラブ・エージェントに、

22時、被害者・秋葉美波が友人と来店。

23時半、友人が退店し、1人残りました。

23時54分、フロア奥のトイレに移動。

0時4分、席に戻らずそのまま退店。

3分後に走り去る犯行車両が、エージェントから

西30メートルのコンビニ店外カメラで撮影されました。

おそらく被害者は、クラブ・エージェント店舗裏の

路上で車両に乗せられたものと思われます」


 タイムラインの2ページ目を表示する。


「その後、車両は霧海倉庫街へむけ移動。

0時20分、倉庫街入口カメラで車両確認。

午前2時20分、おなじく倉庫街入口カメラ。

2時40分ごろ、第一事件の遺体遺棄現場である

湾岸道路高架下トンネル手前の管理カメラで車両が確認されましたが、

1分後、折り返してきた車両がもう一度、確認されています。

その後、車両は汐洲湾岸物流センターに移動、

3時10分、入口カメラで確認。

現場の廃倉庫へ遺体を遺棄したものと思われます」


 奈守が三朝を見る。

 次のページを表示させた。


- 被害者の身元

- 事件当夜の行動

- 車両登録ヒットなし


 以上が確認され、ページを送る。

 連行した男の顔写真を表示させた。

 これといって特徴のない風貌。

 だからこそ供述が現実味を帯びてくる。


 昨夜、大城が話した内容が提示された。


「大城が車に乗ると、すぐ女性が押し込まれ、

ドアが外から閉められた。

このドアを閉めた人物は、窓のスモークで見えなかったそうです。

車両はすぐに走り出し、霧海倉庫街の第3駐車場で停車。

女性に対する暴行がはじまったということです」


 そこで上条が、すっと手を出した。

 制するように、厳しく告げる。


「車内犯行のようすと被害者の遺体状況については、

あとで個別に確認する。供述内容、暴行後からつづけて」


 一瞬、戸惑って奈守が続けた。

 

「暴行後、まだ被害者は息があったそうです。

車が出て、5分ほど走った路上で停止。

降りるよう指示され、下車。車両は走り去って見えなくなった。

大城を含む実行犯3人はそこで解散。

大城は30分ほど歩いて大伴町でタクシーを拾い、帰宅した」


 次の資料。発言する者はいない。


「昼すぎ、目が覚めてテレビをつけ、

被害者の遺体発見のニュースを見ておそろしくなり、逃亡。

4月20日深夜。月岡町の聞き込みにより大城が浮上。

4月24日21時8分。交際女性宅に現れたところを、

路上で確保しました」


 今後の捜査について資料を出す。

 キーを叩く手が、冷たい気がする。


「現在DNA鑑定依頼中。

結果が出次第、送検を予定しています。

また本日、大城供述による、

他の実行犯のAIモンタージュを生成予定。

生成後は身元特定にむけ、防犯カメラ解析、

夜間の聞き込みなど鋭意捜査予定です。以上」


 奈守が着座して、場が静寂した。

 続けて、倉橋が白石を指名。


「次に現場遺留品と任意同行者提出物から。

白石警部、お願いします」


 三朝は、スクリーンに写真を出した。

 被害者のスマホの現物写真。

 白石は、着座のままタブレットを見る。


「現場遺留品は、被害者所有のスマートフォン1台のみ。

オレンジ社製レオン19。

このように装飾のはげしいケースが装着されており――」


 スマホは裏向きで被害者の胸に。

 被害者自身の指でロック解除。

 問題なく稼働することを報告。


「本体解析は完了していません。

セキュリティレベルが高く、時間を要します。

アプリ使用歴は特に不審な点は見つかっていません。

犯行時刻前後の交信履歴もなく、

犯人による拉致後は使用がなかったものと思われます。

インストールされていたアプリは、

検索系2種、大学関連1種、通販サイト系7種、

画像加工系3種、SNS4種、電子書籍系3種。

漫画の購入が数冊ありました。

ゲーム系が5種。

パズル系で国内ダウンロード数が多い種類ばかりです」


 多いのか少ないのか分からないが。

 一般的な使い方だったと思われる。


「怪しいサイト閲覧履歴などはなく、

情報収穫は期待できないものと見ています。

また任意同行中の大城のスマートフォンについては、

同意書添付の上、押収済み。

本日より解析を開始します。以上」


 そのスマホから何か出ればいいが。


「次、高桐警視」


 上条の声が、議場に響いた。

 倉橋が受けて、進行する。


「では高桐警視。

聞き込み総括と今後の捜査方針、お願いします」


 三朝が資料を進めると、

 高桐が受けて報告をはじめた。


「奈守の聞き込みにより大城が逮捕。

聴取の結果、犯行車両はエージェント裏路地に一時停車。

被害者を乗せ、走り去ったと確定して

問題ないかと思われますが――もう1点。

クラブ前、路上の聞き込みにより情報を得ています。

証言者は渋窪区、新館在住、21歳女性。

事件当夜、クラブ・エージェントから

2メートルの路上で被害者を目撃しています」


 あの夜、高桐が取った証言。

 その場で『すごい』と伝えたかった。


「エージェントを出て、裏路地への角をまがる際、

『待って』と誰かを追いかける風だった。

その誰かは、すでに角を曲がった後で、

見えなかったと話しています」


「いた――ということだな。

被害者を店から連れ出した人物が」


 スクリーンを見たまま、上条が言った。

 その低い声に、高桐が頷いている。

 立ち上る、蒼い気配……。


「再度、

クラブ・エージェントの店内カメラを確認しましたが、

被害者がトイレに立った当時、通路を出入りした客も、

トイレに籠っていた客も確認できませんでした。

通路に通用口があり、

表通りへも裏路地へも出られるようになっていますので、

そこを通ったものと思われます」


「外から来て、外へ出た。

店内には入らず、カメラの死角で

適当な被害者を見つくろった、か」


「おそらくそうでしょう。

営業中、店員は、全員フロアに出ており、

『通用口は誰も使用しなかった』と言っています。

酒類、食料などの保管庫は店内カウンター裏のバックヤードにあり、

通用口とも繋がっていますが、閉店後のゴミ出し、

従業員の退店以外には、あまり通ることもないという話でした」


 その証言を信じるなら。

 店の関係者は関与していない。


「いきなり来て、誰でも通れるものではないでしょうが、

ちょっと街に顔を出している人間なら、

通用口のことは知っているんじゃないか、

と店長は話していました」


 上条は前を見たまま黙っている。

 高桐が続けた。


「本件および4月4日の第一事件。

共通点は、犯行手口、犯行経路、遺留品のスマートフォン。

それと被害者をカメラの死角の

トイレ前通路でピックアップする手法。

これを受けて、今夜より。

月岡町のクラブ5店舗で3班総動の張り込みを開始します」


 毎晩、誰かが出向くことになる。

 月岡町、あのクラブストリートへ。


「2件では犯行規則性までは特定できませんが――

5月3日。

第一事件と第二事件の2週間のインターバルが、

次回犯行予定日と推測して、重点計画を実行します」


 場の空気は張り詰めたままだった。

 高桐が静かに着座する。

 息をひそめて見つめていた自分に、

 三朝はようやく気付いていた。

『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。

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