code03:vision06 会議室
4月25日午前10時。
汐洲物流倉庫遺体遺棄=第二事件。
第一回ブリーフィング=捜査報告会。
捜査部第三係の会議スペース。
会議出席者は、司令部第三係4名、
捜査部第三係の各班長、そして――。
「え、どこだろ」
三朝はひとり、会議の準備をしていた。
白石にもらったアプリで作った資料を、
プロジェクタで表示させようとしている。
が、そのリモコンがない。
開会15分前。気持ちが焦る。
間に合わなければ、地味に”コト”だ。
『すぐわかると思うよ』
と白石は言っていたが――。
「これじゃないかな」
突然、声がして、顔を上げると。
仕立ての良いスーツを着た男が、
リモコンでプロジェクタを操作していた。
資料がスクリーンに投影される。
スマートな笑顔を三朝に向けた。
「あ、ありがとうございます……」
30代前半くらいだろうか。
高桐と変わらないくらいの長身。
明るめの髪に少しクセのある、イケメン。
見覚えがある気が、しないでもない。
「立樹くんだよね」
「あ、はい」
「部長の上条です」
一瞬、なんのことか分からず。
一瞬で理解して三朝は一礼した。
JPO司令部部長の上条だ。
初任科生の時に講義でお世話になった。
見覚えがあるはずだった。
「お、おはようございます」
「ごめんね、着任の日に留守にしてたから。
知らないよね」
なぜか笑っている。
「早く体があいたから、
手伝う事はないかと思って来たんだけど。
まだ1人だったね」
「そうですね……」
なぜだろう。
驚いてしまって、上手く答えられない。
上条は変わらず爽やかスマイル……。
「どう? もう慣れた?
高桐くんの所はやりやすいメンバーだから、
大丈夫だとは思ってたんだけど」
「あ、はい。よくしていただいてます」
ようやく言う。
上条は机に腰かけた。
「前は内勤に近かったから、大変でしょ。
ここは残業も申告制で、
やたらと帰れないってことはないと思うけど」
「はい、すぐ帰れって言われます」
「でしょ。とくに高桐くんはね。
采配うまいから。ムダなく動けてるよね、みんな」
「そう……ですね」
「第一、第二係はね、組織犯罪とか公安でしょ。
夜中の仕事も多い。残業も仕方ないよね。
でも殺人捜査はさ、要所要所で夜、動くだけで、
あとは昼夜交代制とかしけば、そこまで残業いらないでしょ。
本来、そうすべきなんだよね」
さらっと言って、また笑う。
笑顔を絶やすことがない。
「ていうか一度、会ってみたかったんだよね。
佐木沢官房長にはお世話になってるから。
変な意味じゃなくね」
「それは……こちらこそお世話になってます」
棒立ちで返すと、もっと笑った。
「いや、だからお世話になってるのは僕のほう。
……でもそうか。なんか分かる気がするよ」
「え?」
「あまり心配してないって言ってたから。
現場仕事で前より危いと思ってたけど、うん、
なんか大丈夫そう」
会話の処理が追いつかなかった。
かまわず話が進んでいく。
「もしさ。何か困った事があって、
高桐くんにも言いにくいことがあったら遠慮なく頼って。
これ渡しておくから」
スーツの内側から名刺を出した。
「立樹くんの仕事スマホの連絡先は、
もう僕のに登録されてるから。
いきなりLINKも電話もくれて大丈夫だよ。
女性ひとり――ああ、倉橋くんもいるけど、
部署がちがうでしょ。僕も上司だから。
何かあったら力になる」
ようやく名刺を受け取りながら。
目をしばたくしかできなかった。
上条はノートPCの資料を見はじめている。
扉が開いて高桐以下、三係が到着した。
――え?
という声が、心の中から聞こえてきた。
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