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LOVERSコード  作者: 蒼貴みかげ


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20/58

code02:vision12 ラストストリート

――同日 午後23時10分――


 手を振って去る金髪君に応えていると。

 横から、高桐が近づいた。


「何か聞けたか」


 向き直って、報告した。

 

「走るバンは見たそうです。

入店する被害者を見たという人もいましたが……」


「取れたぞ」


 平然と言葉をかぶせる。

 まじまじとその目を見てしまった。

 

「昨夜、クラブの裏路地へ入る被害者を見たそうだ。

誰かを追いかけて」


 思わず裏路地をふり返っていた。

 

 いたのか、やっぱり。

 被害者を連れ出した何者かが――。


 やっぱり高桐だった。

 嗅ぎ分けて取った証言に違いなかった。

 

 その感嘆を伝えたかったが。


「見ーつけた!」


 走り込んできた何かに阻まれ、

 できなかった。


「探したんだからっ」


 なにごとだ?


 高桐と三朝の間に、飛び込んだ者。

 それは女の子だった。

 赤いワンピースに、金色に近い巻き毛の。

 

 あろうことか。

 高桐に抱きついていた。


「通りですごいウワサになってて。いてよかったーー」


 甘い香りが、三朝にも香って来る。

 高桐は、女の子を見下ろしていた。

 あきらかに迷惑そうな、冷やかな目。


「離れてくれるかな」

「やだ。だって会えたから」


 さらに抱きついて、顔をすりつける。


 思考停止している自分に気づいて。

 三朝は、2人に焦点を合わせた。


 強烈なお酒の匂いが。


「かなり酔ってるな」


 高桐は、呆れたように言って、

 女の子を引きはがそうと掴んでいる。

 が、なかなか手ごわい。

 

「そうなの、エリカ、歩けない。連れて帰って」


 歩けないというわりに、伸びあがって、

 うるんだ目で高桐を見上げている。

 顔がものすごく近づいている。


「あの」


 たまりかねて三朝は前に出てしまった。


「すみません」


 とたんに女の子がビクッと跳ねた。

 視界に三朝がいなかったようだ。


「わたしたち、もう帰る所でして。

すみませんが、放してあげてくれませんか」


「え、だれ……彼女?」


「部下です。警察の者でして。

そのお兄さん、本物の刑事さんなんですよ」


 女の子の顔がこわばっている。

 三朝の笑顔が怖かったのかも知れない。


 そこへ。


「ちょっと、エリカ――っ」


 友人らしき別の女の子が駆け寄った。 


 ばりっと音がしそうな勢いで、

 高桐から『エリカ』を引きはがし。

 高速で頭を下げる。


「ごめんなさいっ。邪魔しちゃって。

ちょっと目を離したスキに……

もう! エリカ! ほら帰るよっ」


「あー、ちょっとーっ」


 手を伸ばすエリカを抱えて。

 友人がいそいそと去って行った。


 何だったんだ――。


 通りに流れるミドルな洋楽だけが残った。

 高桐が見下ろしたのが、伝わった。


「ちょっと助かった」


 本当にほっとしたように言う。

 顔は上げずに、少しだけ笑ってみせた。

 

「高桐さんは大変でしたね。奈守さんの言うとおり」


「立樹だって声、かけられてただろ」


 見ていたのか。

 

「危なそうなら助けに入ろうと思ってたけど。

うまく裁けるようになったな」


「……そうですか?」


 あのカゲという男には、

 すこし翻弄されてしまったが。

 

「この通りなら、

無理に店に連れ込もうとされてもおかしくなかった。

そうならなかっただろ?」


 ナンパ通りを見通している。

 つい見上げた、その横顔が、

 いちいち眩しくて、目を反らした。

 

「だとしたら」


 言うと、高桐がこちらを向いた。

 つい強がって隠してしまう。

 

「指導上官のおかげですね」


 返事はなかった。

 沈黙がつづく。


 もう一度、見上げると。

 あの静かな目で、見下ろしていた。


「それだけかな」


 音楽にまぎれたその言葉は、

 しかし確実に届いていた。


 やっぱり何か――。


 見つめていると、

 

 「行くか」

 

 と高桐が歩きはじめた。

 三朝も遅れて、その背に続いた。


 何事もなかった。

 その体の高桐に受け答えながら。

 賑わう通りを、コインパークへ向かった。

『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。

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