code02:vision07 軽い打合せ
――同4月19日 午後19時――
月岡町での聞き込み決行。
割り振りを決めるのは、司令長。
高桐隼人――。
「今度の車両はこのバンだな」
高桐がテーブルに置いたタブレットを、
三朝は、奈守と一緒にのぞき込んだ。
大型の白いバンが映っている。
見ない日はないほど、よく走っている国産車。
第一、第二の2つの事件――。
被害者2人に、接点や共通点はなかった。
ただ、ひとつだけ。
退店間際、同じようにトイレに行って。
その後、席には戻らず店を出ている。
これは単なる偶然かもしれない。
だが見過ごせる要素ではなかった。
5分間のカメラの死角――。
接触した人物がいるのか、いないのか。
そこが聞き込みの焦点だった。
タブレットを見下ろして、高桐が言う。
「今回も登録情報はない。盗難車だろう」
「はい、もう日本にないってパターンね」
奈守が、ため息をつくように答える。
偽造ナンバーの盗難車を使うのも、
前回の事件との共通点だった。
高桐が続ける。
「被害者が退店したのが0時4分。
3分後に、エージェントから西へ30mにあるコンビニの店外カメラに、
この白い車両が走り去るのが映っている」
――わずか3分。
その短時間で、被害者は。
車に乗せられ、拉致された――。
高桐がタブレットをタップする。
エージェント周辺のマップを表示させた。
店の裏には、路地が一本、通っており、
角の細道から、表通りへ繋がるようだ。
「このエージェント裏に車を停めて、
被害者を乗せたとみるのが自然だと思う」
画面を見やって、奈守が言う。
「3分だからな。表とちがって、裏路地は真っ暗だし。
用もなく行く通りじゃない」
「店で接触して誘導したか、横道から無理やり引っ張り込んだか。
どちらにしろ、乗せたヤツがいるはずだ」
「トイレで5分だろ? ナンパには十分だよな」
そう言った奈守を、高桐が見た。
「奈守はエージェント店内、頼めるか。くわしいだろ」
「いいよ。トイレ前、重点ね。ほかは?」
「俺の班が近隣店舗。白石は周辺エリアと車両対応。
カメラチェックもかねてな」
「車両の停車位置、つかめるかな」
「どうだろうな。車は見られてもいいみたいだが、
乗る時は用心してただろうな」
「慎重に、ね……車も直前に持ってきたかもしれないな」
見ましたよ、裏路地で白いバン――。
そういう目撃情報がなければ、
その可能性も高くなる。
「で?」
と。
奈守は、高桐と三朝を見比べた。
「君らはどうするわけ?」
「その白いバンの乗車情報をあたる」
即答した高桐に、
奈守はわずかに間をおいて。
「ふーん」
と目を細めて、足を組んだ。
「クラブストリートだろ。いいの?」
「なにが」
「声かけられまくるんじゃない? 目立つよ」
高桐が、言葉に詰まって三朝を見た。
すぐ目をそらす。
「……大丈夫だろ」
「いや、お前『も』だよ。
あの通りはナンパ街なの、知らないの」
「なら、かえって都合がいい。
声かけてくれたら聞きやすいだろ」
奈守の目に、揶揄する色が浮かぶ。
「……なるほどねえ」
「なにが言いたい」
「ま、いいよ。立樹の指導責任者だもんな。けどさ」
奈守が三朝に顔を向けた。
「気をつけろよ。高桐が目はなしたスキに、
酔っぱらいに抱きつかれるかもしれない」
「そんなに乱れてるんですか」
「そういう通りだから。
触る、触られるなんて日常だよ」
「え、奈守さんも?」
三朝が返すと、一瞬マズそうな顔をした。
「いや、俺はやらないけどさ」
「そうなんですか」
「……立樹さ。疑うことなくない?」
高桐が、テーブルの煙草セットを掴み。
さっと立ち上がった。
「2時間後に本部を出る。立樹は報告書まとめとけよ」
ダンパーのドアが静かに閉じる。
見送った奈守が言った。
「わりと罪だよねえ」
「……どういう意味ですか」
答えるかわりに苦笑いを浮かべて。
奈守は、煙草を出して火をつけた。
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