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演目36 裏切り

 

 ナイトメアの群れを突破して奥地に入ったところで、マシロは歩道で立ち止まった。


「ご主人、これ」


 顔を伏せて鼻先で示すのは、真っ二つに切れたスマホと、五本の指と手の平の一部。血もそれなりに落ちていて、まだ乾ききっていない。


 状況から判断するにこのスマホと指はカエサル! だとすると……敵もカエサルも近いか。


「マシロ、気を付けろ。近くに敵対する魔法少女が潜んでる」

「そうなの?」

「ああ。匂いで判別できないか?」

「やってみる」


 周辺の地面をくんくんと嗅ぎ始めたので、俺はその代わりに探知魔法と目視で周辺を警戒する。


「――っ! 避けろマシロ!!」


 探知魔法に引っ掛からず、目視で、少し離れた建物の屋上にいる人影に気付いた時には遅かった。

 構えられたロケットランチャーから弾頭が発射され、飛び退いたマシロの足元に着弾して爆発をもろに食らう。

 吹き飛ばされた俺はハットもステッキも失っていたが、マシロが結果的に遮蔽になったお陰で無傷であり、すぐさまアサルトライフルを生成して建物に向かって連射し、相手が顔を出せないように牽制した。


 マシロは――くそっ!


 体勢を立て直しつつチラリと横目に見ればマシロは変身が解けて人に戻り、制服姿のままぐったりしていた。顔や手に酷い火傷があり、気を失っている。

 牽制を継続しつつマシロの襟を掴むと、そのままずるずると引きずって近くの路地裏に入り、射線から完全に外れる位置で止まってアサルトライフルを捨ててヒールポーションを取り出した。


「マシロ、今治し――っ!」


 空いてる手で、指パッチン。


 瞬間移動で少し離れた位置に移動する。

 間一髪だった。

 相手の殺気を感じて振り向いた時には、魔法少女の一人が剣を構えて高速で迫っていた。あと一秒でも遅れていたら斬られていただろう。


「お前は……確かジャンヌだったか?」


 ロングの赤髪を三つ編みの少女は、スカートが赤く立派な黒い鎧ドレスに身を包み、伝説の剣みたいな凝ったデザインのロングソードを手に持っていた。

 彼女は剣を逆手に持ち帰ると、足元にいるマシロに振り下ろそうとした。


 指パッチン。


 瞬時にマシロとジャンヌの位置を入れ替え、マシロを浮遊させてこちらに引き寄せる。そのまま抱きかかえてヒールポーションを飲ませつつ、彼女から目を離さず問い掛けた。


「何故襲う? 私たちはただカエサルの様子を見に来ただけだが?」

「あいつは我々カトリックにとってのユダだ。そして味方するであろうお前たちもまた同罪だ」

「……なるほど」


 めんどくせぇな! そういうの自分の国の中でやれよ!

 って言いたいけど、言える雰囲気じゃないし状況が悪い。一対二で、相手はどう考えても相当な手練れ。しかも爆発と銃声でナイトメアがこっちに向かって来ている筈。

 逃げの一手だが、どうやって振り切る?


 考えていたら、来た道からもう一人魔法少女が現れた。ボブカットの青髪の少女、バルバラだ。

 ゲームの特殊部隊みたいな黒いぴっちりボディスーツを着ていて、その手にはガトリングが握られており、銃口がこちらに向くと銃身が回転を始めた。


 言葉は不要ってか……。


 指パッチン。


「ムービートリック」


 ガトリングから咆哮のようなけたたましい音が発され、火を吹いて大量の弾丸が放たれる。だがそれは俺とマシロの手前で映画のように次々と空中で止まり、届かない。


 横から斬り掛かって来たジャンヌには、手を向けて念力じみた魔法で剣を止め、そのまま力を強めて建物まで吹っ飛ばした。


 バルバラの方に向き直ると、ガトリングが効かないと判断するや変形させてロケットランチャーを構えた。


 俺は帽子を瞬時に生成して強化しつつ魔力を込め、フリスビーの要領で投げた。狙うべきは誘爆狙いの弾頭。

 ハットは魔力によって狙いの場所に自動で誘導され、発射された直後の弾頭に当たって爆発を起こした。

 その爆発に巻き込まれる前に俺はマシロと一緒に瞬間移動で少し離れた位置へと移動し、魔力を内に抑えて気配を消しつつ、マシロを担ぎ急いでその場から離れた。


 せめて、俺一人なら……。


 勝てはせずとも対処は出来る。でもこの空間の中でマシロは置いて行けない。


 どこか……どこか隠れて態勢を整えられる場所を探さないと!


「――っ!」


 探知魔法に意識を集中すれば、背後から魔力的な何かが発射された気配があり、慌てて真横へ回避した。

 直後、元いた場所を魔力の込められた光る弾丸が通過した。


 ――来るっ!


 さらに高速で接近するジャンヌの気配がして振り返り、強化した状態のステッキを生成して魔力を込めて纏って構えれば、魔力を纏った剣を振り上げた状態で目前まで迫っていたジャンヌと目が合った。

 瞬間的に身体強化を極限まで高め、斜めに振り下ろされる剣に合わせてステッキで受け流す。流れるように続けて剣が振るわれ、後退りながらステッキで受け止める。

 ――が、ステッキはあっさりと切断されてしまった。


「くっ」


 切断されたステッキを手のスナップを利かせてジャンヌの顔に放り投げ、ほんの僅かに出来た隙に魔力収束剣――略して魔剣を取り出して紫の魔力の刃を展開。改めて剣をしっかりと受け止めた。

 ジェンヌが驚き、言った。


「なんだそれは!」


 隙は見せないが精神を揺さぶるチャンスだと踏んだ俺は、無理して不敵な笑みを浮かべ、下がりつつ剣を防ぎ、受け流しながら口を開いた。


「フッ、これは日本の魔法少女鍛冶師が作った逸品でね。某映画の宇宙の騎士みたいだろう?」

「あんなもの、ただの妄想に過ぎない」

「事実は小説より奇なり。案外、ああいった世界の方が本当かもしれないぞ?」

「だとしたら、その世界もこの世界も、我が主によって救われなければならない!」

「ハハッ、次元を超えて宗教戦争とか笑える」

「黙れ異教徒!!」


 挑発成功。

 だけど……攻撃が激しくなって片手じゃきつい。しかもなんか、彼女の背後の遠くから、バルバラが狙って来てるんだよなぁ。

 ちょっと仕掛けるか。


 俺はジェンヌの攻撃から逃げるように大袈裟に飛び退いた。すると狙い通りに魔力を込めた銃弾が飛んで来たので、魔剣でそれを上手いこと弾いてジャンヌの足元に着弾させた。

 それでジャンヌは前に出ることを躊躇し、一瞬だけ動きを止めた。


 ――隙あり!


 瞬間移動し、魔剣を振るって攻撃したのは後方からでかいライフルで狙撃して来ていたバルバラ。だが彼女は振り返りもせずに前に跳んで躱し、片脚を軸にしてくるりと反転すると既に変形させていた二丁のサブマシンガンを俺に向けた。


 おっと。


 ヒールをカツンと鳴らし、魔法で前方の地面を分厚い壁のように隆起させて弾丸を防ぐと同時に視界から消える。 

 僅か一秒の休憩でほっと息を吐き、大ジャンプで壁を越えてこっちに来るジャンヌの迎撃をする為に魔剣を構える。不敵な笑みを忘れずに。

 でもわざわざ律義に受け止めたり受け流す必要も無いので、瞬間移動でちょっと離れた横に移動する。

 壁の上にはバルバラが立ってこちらに狙いを付けたのを見て、さらに瞬間移動で壁の反対側の離れた位置に移動した。

 そのまま路地に入って逃げるが、直後に銃弾が飛んで来て危うく被弾し掛けた。


 あーもう! あいつら強いし鬱陶しい!


 まだ本気すら出されていない気がする。

 こっちは魔法の連発でかなり消耗しているから苦しい状況だ。


「げっ、もう来てる」


 ジャンヌが凄い速さで追い掛けて来ているのが感じられる。隠れようにもその時間すら与えてくれない。


 ――あっ、これ終わったかも。


 前方にバルバラが着地した。両手には殺傷力の高そうなサバイバルナイフが握られていて、銃弾を利用させないという意思を感じさせる。

 振り返れば、追いついたジャンヌが死へのカウントダウンをするかのようにゆっくりとした足取りで近づき始めた。


 その余裕がムカつくな。


 けど、ここから無傷で逆転する手段が思いつかない。手札をかなり切ったから、普通に対処されそうな気がする。


 ……いっそのこと、最初の位置に戻るのも手か?

 それがいいかも。

 流石に二人で来たのは無謀過ぎた。カエサルのことは諦めて帰ろう。

 そしてこのことをマコトかブロンドさんに報告してぶん投げよう。

 うん、そうしよう!


(ネロ、目を瞑れ)


 ――えっ。


 決めた直後にテレパシーでカエサルの声が聞こえ、反射的に目を瞑った。

 次の瞬間、まぶたごしですら眩しいと感じるほどの強烈な閃光が発生した。


(バルバラの方に走れ)


 指示に従い、閃光が収まったところで走り出す。カエサルがバルバラ相手に杖を振るっていたが、目が見えていないだろうに全て防がれていた。

 でも、カエサルのお陰で道が開けた。

 その横を通り過ぎると背後で爆発音が聞こえ、振り返ると黒煙の中からカエサルが走って出て来た。


「カエサル、生きてたんだ」

「まずは隠れることが優先だ」


 感動の再会の暇も無く、カエサルは杖でマシロを優しく叩くと金色の魔力がマシロを包んだ。

 マシロの魔力の気配が無くなった。


「これでいい。ついて来い」


 彼女の言葉に頷き、走る後ろを付いて行った。




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