↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうせ異世界に来るのならもっと勉強しておけば良かったよ  作者: まゐ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/68

60、これからの行先

「ユリアさんと何を話していたんですか?」


 2人の部屋を出てすぐにトールに聞かれた。


「懺悔を聞いて、今後の過ごし方について少しアドバイスをした」


 まとめるとそういう事だったと思う。


 実を言うと、『冥府の門』が閉じて白い女『シュリ』が逃げた辺りから、俺の『運命の柱』を見る能力と、他人の『過去』と『未来』との代償能力に歯止めが効かなくなっていた。


 距離的にどこまでなのか正確には分からないが、それなりの距離にいる者達のこれまでの人生と、今後起こり得る未来、代償として引き寄せる事が可能な『未来』が、望む望まないに関わらず全て見(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)て(・)いたのだ。


 何百人もの記憶と未来とを同時進行で再生し、それらを完璧に処理して自分の中に落とし込む。それによってこの先に起こる事の予測が出来、その上で自分がどう動くべきかを判断出来るようになった。


 妙な興奮と、変な罪悪感と、そして胃が痛くなりそうな程の大きな使命感を感じ続けている。


 勿論、ライサとユリアの2人についてもそ(・)れ(・)ら(・)が見えていて、2人それぞれの、お互いに対する思いまでもが分かってしまっていた。


 だから俺は、俺に出来る事をしなければと思い、実行した。


「ユリアはこの先、自分の犯した罪を心の傷として一生背負って生きて行く事になる。でも、彼女にはライサという友人がいて、2人はお互いの命が尽きるその時まで共にあって離れない。どんなに傷付け合っても最後まで一緒。その絆はとても強くて、多分、死んでも離れないんだと思う。だからお互いに、変に気を使い合う必要なんて無いんだ。正直に思う事を言い合って理解を深めた方がこの先の人生、生き易くなる。俺は、そうなるように手助けをしただけだよ」


 それを聞いて、トールはちょっと不可解そうに眉を顰めた。


「そう、なんですか・・・。ですが、マジールでは『神』の仕業であれば罪に問われない筈です。だとすれば、ユリアさんは巻き込まれただけの被害者。そこまで思い悩まないのでは?」


「うん、そう。だけど、本人はそうは思えないらしいんだ。でも、ちょっとお節介だったかも知れない」


 放っておいても良かったのかも。


 そう思いつつも、けど、と俺は思った。


 あの2人と縁があるのは、お互いだけじゃ無い。他でも無いこの俺が、この先の未来でお世話になる事になるのだ。


 その時、部屋の中から大きな声が聞こえた。お互いを罵り合うライサとユリアの声。ハッキリ内容まで聞き取る事は出来ないが「綺麗な石のペンダント」とか「あいつは誰でも良かった」とか言っているみたいに聞こえる。


 俺は、トールと目を見合わせた。


 早速効果が出ているみたいだった。大声を出す事は、それ自体がストレスの発散になる。あの2人はただでさえ周囲に気を使い過ぎる所がある。せめて2人の間だけでは言いたい事を言い合える関係になれれば良い。そうすれば、ユリアの心も軽くなる筈だ。


「アキラ」


 トールと目を見合わせていると前から呼び掛けられた。見るとゴーシュがこちらにやって来る所だった。


 ゴーシュに会うのは『混合戦に賭ける』と言って別れて以来だった。


「リグラン王弟陛下が呼んでる」


 ゴーシュはそう言った。


 聞きながら、俺はゴーシュの事をじっと見つめてしまった。


 ゴーシュについても、色々と見(・)え(・)て(・)しまっていたから。


 ゴーシュは、ナイルの母親の家で孤児として世話になり、大きくなってから恩返しをする為に連絡船の警護の仕事をするようになった。


 その仕事中に腕と指導力を見込まれ、マジールの警察のトップを務める元貴族の家に養子として迎え入れられている。(出来る人材を養子として迎え、要職に付かせて権威を保ち続けている家があるのだ)


 ナイルも誘われていたのだが、彼は断っていた。形だけとは言え実の母親と縁を切る事を拒んだから。


 比べてゴーシュはナイルの母親と血の繋がりは無いし、養子になる事で仕送り出来る報酬も増える。実際にその家で暮らす必要も無く、それまで通りの生活が送れた。


 断る理由が何も無かった。何よりも彼のその流され易い性格の所為もあってか、2つ返事で申し出を受けている。


 そして、警察兼連絡船の警護員として働き、その仕事の割合は半々という所。今回の俺のエデン訪問の同行も、実はマジールの警察としてシージャック犯の密輸事件を秘密裏に追っていたのだった。


 時期的に混合戦があり、半分は遊んでやろうという心持ちだった事は誰にも言っていない。


 そんな中呑気に観戦していた所を、同じく警察の義兄に見付かり、仕事に駆り出される。自分の為に用意された制服を『着替えるのが面倒』という理由で放置した所、運悪くそれが他人の手に渡って、そいつが主犯を斬り殺してしまった、と。


 不運が重なった事故。


 主犯のブリエヌ元侯爵の死亡について、公にはそう発表された。


 けど、その責任の一端をゴーシュが担う事になり、彼は減俸と1階級の降格処分を言い渡されている。


「何?そんなに見詰めて」


 そんな処分をされた事など全く外に出さずにそう言うゴーシュ。嬉しそうに俺に向かって笑顔まで見せてきた。


 ゴーシュのこの『俺の事が好き』というのも実は嘘。バイセクは本当だけど、どちらかと言うと彼は『人を好きにならない』タイプの人間だった。


 なのに何故こんな風にしているのかと言うと、それにもちゃんと理由がある。


 アンジェだ。


 アンジェがゴーシュの事を大好きなのは、誰が見ても分かるバレバレな事実。ならばアンジェと付き合えば良いのだがそうは行かない訳がある。


 実は、ナイルがアンジェを好きだったりするのだ。


 アンジェがゴーシュだけを見るように、ナイルはアンジェを見ている。


 それを分かってるゴーシュとしては、安直にアンジェと一緒になる訳には行かないのだった。


 で、ゴーシュが取った手が『誰とでも簡単に付き合う酷い男』を演じるというモノ。


 アンジェに嫌われようとして、手当たり次第の相手と付き合って来たのだが、当のアンジェは諦めない。健気にゴーシュが自分を見てくれるその日を待ち続けている。


 ゴーシュが俺の前に立って、俺の顔に触れようとする。


 と、すかさずトールがその手を払って間に立った。


 ゴーシュは両手を降参するように上げて溜め息を吐いた。


「トールさんは相変わらずブレないねぇ」


 呆れた声を上げるゴーシュ。


 それに苦笑いをしながら、俺達はリグランに会いに城へと向かったのだった。




 グレイクはセシル王が『冥府の門』へと落ちた後、すぐに仮面を外し『リグラン』として城に戻っていた。王が不在の今、代理として誰を立てるか?と言ったら他にいないのだから仕方が無い。


 また、今後セシル王が戻らない場合は、次王をエトワールが出産予定の第1子と発表している。彼はその摂政に着く予定だそうだ。


 サチ・ネイの自供による出自の件は公にはせず、けれども『王にならない』という道を選択した。


 俺も、それが1番事を荒立てない真っ当な選択だと思った。


 思ったけれども、リグランはそれで良いのだろうか?と思わずにはいられない。


 セシル王が即位する前の皇太子はリグランだった。その座を奪われて、居なくなった後でも王座に付く事が出来ない。思う所は無いのだろうか?と。


「ここ」


 案内してくれたゴーシュが、ひとつの扉の前でそう言い、立ち止まってノックをした。


 玉座とか、謁見の間とかじゃない。普通の応接室みたいな部屋だった。


 扉が開くとそこにはノワがいて、俺達を確認して体をずらした。その奥にはグレイク、いや、リグランがいる。当然ながら仮面を着けていない。服装も剣闘士の服から勲章のいっぱい着いた兵服に変わっていて、全く別の人間みたいに見えた。


「忙しい所済まない。少し話しておきたい事がある」


 リグランはそう言って、俺に座るよう勧めてくれる。


 俺とトールは入室し、ゴーシュはそのまま扉の外側に残ろうとした。と、


「ついでだ。船乗りも入れ」


「あ、はい。了解・・・」


 『面倒な事に関わりたく無いのに』そう顔に書いてあるゴーシュも渋々入室し、そして扉を閉めてそのままそこに立った。


 それを確認して、俺は入ってすぐの2人掛けの椅子に座った。すぐ横にノワが座り、俺の横にトールが控える。


「こうやって向き合って話すのは2度目だな」


 言いながら向かいの椅子に腰を下ろすリグランは、心無しか疲れているように見えた。目の下の濃いクマを隠す事もなく、終始俯き加減だからか、顔が影って暗く見える。


 そう、2度目だ。1度目はユリアが最初に『冥府の門』を開いた直後。お互いの情報を確認し合って、密輸された『生体兵器』の在処とその目的を解明する為の協力を約束した。


 それから何日経っただろうか。


「話したい事はいくつかあるが、まずは」


 リグランはそう言って木箱を机の上に乗せた。大体30cm角の立方体で、蓋を開けるとそこにはレニアⅩⅤと魔鈴が2つ入っていた。


「これをどうするか、なのだが」


 トールを操っていたレニアⅩⅤと、俺とノワが持っていた魔鈴。それらは証拠品としてその場で警察に渡していた。


「盗品であれば持主に返すのが筋だが、なにせ『真ん中』産だ。恐らく密造品だろうし、下手に送りつける訳にも行かない危険物。マジールとして扱いに困っている」


 それはそうだろう。


「そこで提案なんだが、アキラ。お前が持って行ってくれないか?」


「・・・は?」


 言われて俺は驚いた。


 なんでそうなるんだ・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。