閑話2-1
覚えているのは、狭苦しい部屋の中。
食事は殆ど噛めない程固いパンと野菜の皮だけで作ったスープ、パンはスープに浸しながら食べた。
偶に入っている肉は固い筋ばかり、それでもそんな肉がご馳走だった。
覚えているもっとも古い記憶はナイフを持って藁を突き刺すもの、言葉は周りにいた鞭を持った大人たちが話しているもので覚えた。
少し体が大きくなってきたら、上手い食事にありつきたかったら体を鍛えろと言われた、だから、どうやったら鍛えられるか大人に聞いた。
鍛えるために部屋の外に出してくれと頼めば時折鞭で打たれたが広く、客席のある場所に連れ出された。朝から晩まで走らされた、思い石を何度も持ち上げたりもした、当然藁にナイフを刺すのもやらされた。
気が付けばオレ以外にも同じ様に走っている奴が数人居た。鞭を持っている大人の中に板と細い棒を持って何かしている人が居たので何をしているか聞いたら文字を書いていると言われたので教えてくれと頼んだら鞭で打たれた。
暫くすると、同じように走っていた奴を相手に木の棒での殴り合いをしろと言われた。それもいつも走っている場所でオレ達を見下ろす大人達に囲まれた状況で。
その時気が付いたオレは見世物にされているんだと、体を鍛えろと言われた意味が分かった。
初めて殴り合いになった奴はオレよりも体がデカかった、でも顔はパンパンに膨れ上がっていて、目も開いているか分からなかった。でも木の棒を振り上げて走ってくる、目から何かを流しながら、何かよく解らない言葉を喚き散らしながら襲いかかってきた。でもオレには一度もそいつの木の棒は当たらなかった。全部避けた、そして木の棒を持っている手をグチャグチャにしてやった。煩く喚く口を殴って黙らせた、見えてるかどうか判らない目も思いっきり殴って塞いでやった、そしたらそいつ急に眠って動かなくなった。
その日の夜出された食事には大きな塊の肉が出された、いつもよりやらかいパン、口に入れるのが大変な大きさに切った野菜の入ったスープ。
初めて腹が一杯でこれ以上喰えないと思った。
次の日の朝はいつもの固いパンと野菜の皮のスープだった。
そして、大人に言われた。
「昨日みたいな食事が欲しけりゃ、もっといっぱい煩い奴らを黙らせろ」
とそして、男だけが集められたこの場所でオレは5年もの間、人を殴り続け、黙らせ続けた。
気が付けばオレはこの場所では誰にも負け無くなっていた、毎日のようにあの塊の肉を食べ、口に入れるのにちょうど良くなった野菜の入ったスープ、柔らかなパンをいっぱい食べられるようになった。
その頃になってオレの居る場所が闘技場と呼ばれている事を知った。
そしてそれはオレの居る場所以外にもあるということも客の会話から知った。
そしてオレは鞭を持った、オレとそう変わらない身体つきの男に言った。
「他の処の奴らも全員眠らせてやるから、ここから出せ」
その日の内にオレはこの闘技場で父だと教えられていた男と初めて顔を会わせた。
「よく鍛えている、これなら良さそうだと、今より美味い物を食える場所に連れて行ってやる」
と言われ、次の日には別の部屋へ連れて行かれた。元の部屋と訓練に明け暮れ、誰かを眠らせてきたあの場所の外に沢山の大人と小さいのがいっぱいいた。
前よりも大きく草の敷かれた寝床のある部屋に放り込まれた
「ここが新しいお前の寝蔵だ」
そしてそこでもオレは同じように向かって来る誰かを眠らせ続けた、手に持つ物は木の棒から皮膚を切り裂く鉄の板に変わっていた、それから時には首を刎ね、腕を絶ち、腹を裂いた。気が付けばここでも俺に勝てる奴はいなくなった。
美味い物が喰える以上にオレはオレの存在理由を証明してくれる相手が欲しかった。殴りあって、顔を歪ませ眠りに就かせるのは楽しい、きっとこれが快感なのだと理解した。
そして、今オレは見知らぬ天井を眺めている。オレを覗き込むように立つ男は言った
「ようこそ、殺戮の宴の会場に」
オレはその時理解した。別の場所でまた目の前にやってくるモノを壊せばいいと、戦いという快楽をまだまだ得られるという事を
「早く、戦わせろ、オレは、戦う為に、ここにいる。強い奴を黙らせ、眠らせる為にここにいる、さぁ早く戦わせろ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
闘争の快楽をいつまでも得ていたい、俺の存在意義を証明させろ
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