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第9話 検魔鏡

2014.4.21

4.18に差し替え漏れをしていました。

申し訳ありません。


2014.4.25

表現を変更しました。

ナーラの陽光の精霊の神殿の大神官⇒陽光の精霊の祭殿の大司祭


 翌日から敏文とサラ、そしてブンゾーはダイカクの家の書斎でこの世界のことについて学び始めた。ブンゾーにとっては、既に知っていることかも知れないが、どこでどういう話をするかは流れで決めると言われ、結果一緒に話を聴くことにしたようだ。


 まずは、この世界の構成についてだ。


 ダイカクは、テーブルに地図を広げた。

「この世界ローメリアは主に大きな2つの大陸と周辺の島々から成り立っている。大陸のひとつをサヘールと言い、もうひとつをシナドールという」


 ダイカクは地図に描かれた場所をひとつひとつ指差しながら説明を始めた。

「サヘールの東側、シナドールの西側にある海をサファイア海、シナドールの東側、サヘールの西側にある海をアメジスト海、そして、サヘール、シナドールの北側の海を北海、南側の海を南海と呼んでいる」


「この地図だと北側と南側が途中で切れているように見えるのですが、この部分は何もないのですか?」

「ほう、サラにはそう見えたか。実は北海は、非常に寒い地域で船での航行が氷などに阻まれて難しい地域でもある。南海は、嵐が吹き荒れる事が多く、こちらも船にとっては、難所といわれている。その為、両海域には人類未踏の地域もあり、この世界の大陸が二つですべてなのかは解らないのが現状だ」

「なるほど、だから地図もまだ続きがありそうな描き方なんですね」


「そして、この国ホーエンはここになる」

 ダイカクは、サヘールと書かれた大きな大陸の少し東側にある島国を指差した。


(何だか日本みたいな感じだな)


 そしてサヘール大陸の東側、ホーエンに最も近い場所にある青く塗られた大きな国を指して、とんとんと叩いた。

「サファイア海を挟んだサヘール大陸にあるのがトリアードという大国だ。ホーエンと同じように王政だ」

「本当に大きな国ですね」

「この国は大きさだけじゃなくて文化経済軍事すべてにおいて周辺の国とは比較にならない。そしてトリアードの北側にあるのが、同じく王政をとっているストランド。この国はホーエンとは友好関係にある。そして南には都市国家の連合であるサウザン=ユナイト、最後に西側にあるのが、遊牧民の国であるグラスライトだ」

「なるほど」

 敏文は頷いた。意外に遠い地域まではっきりわかっていることに感心する。


「そして、シナドールには神聖シャンハール帝国とシン王国がある。シャンハールという国はシャンハール教を崇める宗教国家でな。政治と宗教が一体の国なんだ。そしてシン王国だが、もともとはシナドールのほぼ全域に覇を唱えていたのだが、少しずつシャンハールに侵食されてな。いまはこのくらいの領土の国になっている」

 サヘールの半分ぐらいの大きさのシナドールのうち、4分の3をシャンハールが、残りをシン王国が占めているようだ。

「ふーん」

「サヘールやシナドールの周辺には、ホーエンと同じような島国がいくつかあるが、とりあえず今はここまでにしよう」


「色々な国があるんですね」

「そうだな、サラ。それぞれ体制は違うが、この50年以上は各国の間に大きな戦争もなく、平和な状態が続いている。ただ、最近トリアードや神聖シャンハール帝国は国王や皇帝が交替して、少しキナ臭い動きをし始めているという話がある」


 敏文は戦争のことを心配して聞いた。

「それは戦争が始まりそうだということですか?」

「いや、まだそこまではいっていない。ただ以前に比べて軍備の拡張が目立って来ているという程度だがな」

「そうですか。戦争にならなければいいですね」




 次にダイカクは別の地図をテーブルの上に乗せる。5つの大きな島と周辺の島々が描かれたものだ。

「ホーエンですね」

「そうだな。この国が主に5つの島で成り立っているのはブンゾーから聞いているな」

「はい」

 サラも頷いている。

「中心にあるのが王都コーベンがあるホーエン本島だ。ホーエン本島を囲むように北から時計回りに、キタノダ島、トーブ島、ミナミー島、そしてここニシノベ島になる。国王の直轄領以外に爵位を持つ貴族が治める貴族領がある。ここミヤザもそのひとつだ。他にニシノベ島には、主にヤナーガに海軍卿でもあるタチバナ伯爵、商人の街ハカタンを治めるクーロ伯爵など数人の貴族がいる」


 そうしながら敏文達は、各島にどのような街や主だった領主がいるかといった話や、この国にはかつてはホーエン語という言葉があり、表音文字ではなく表意文字が使われていたこと、200年ほど前にあった各国間の大きな戦争ののち、相互理解のために共通語を使用することになり、現在はすべての国でローメリア共通語が使われていること、ただ場所や人の名前にはホーエン語の名残があることの説明をうけた。


 地図を見ながら敏文はふと疑問に思ってダイカクに尋ねる。

「地図だけ見ると、なんとなく俺がいた世界の日本という国に近い雰囲気はあるんですが、大きさはどれくらいあるのでしょう? あ、そもそも場所と場所の距離ってどういう単位で表すんですか?」

「距離については、セル、メル、キルという単位を使っているな。1メルが大体これくらいか」

 そういうとダイカクは自分の腰あたりを指す。

「1メルの100分の1が1セル。1メルの1000倍が1キルだ。そしてホーエンの北、キタノダ島から南のニシノベ島の南端まではだいたい、1800キルってところだろうか」


 長さの単位は呼び方の微妙な違いはあるが、日本にいたときと同じ感覚のようだ。ということは日本の北海道から九州までの長さより少し狭いかそんなに変わらない。



 次に敏文はこの世界の時間の流れについて聞いた。

「俺がいた世界では1年は365日、1日は24時間でした。この世界の時間はどの様に流れているのか教えてください」

 敏文はブンゾーにおおよそは聞いていたが改めて確認した。

「時間は同じだな。24の時間に分けられている。日数は360日で1年だ。少し短いか。1月は30日だ」

 ダイカクは説明する。

「今は黄緑の月の15日だ。ちなみに年はローメリア暦の2312年になる」


「ローメリア暦ってどういう起源があるんですか?」

「ローメリア暦はこの世界に最初の国が現在のサウザン=ユナイト辺りにできた時を紀元としているんだ。現在はローメリア全土で同じ暦が使われているな」



 敏文はこの国の教育や社会状況についても尋ねた。学校や警察、国の社会への関わり方などだ。


「この国の教育制度は、6歳から始まり無料で通える初等学校、一部特待生を除き自費で通う中等学校、そこで魔法、武術、勉学のいずれかで優秀な成績を修める者だけが進める高等学校がある。高等学校で優秀な成績を修めた場合、国に仕えるか、俺がいた魔法生物研究所のような研究機関に入ることになる」

「なるほど、優秀な人間を集める仕組みになってるんですね」

 サラはうんうんと頷いている。


「治安はどうやって守ってるんですか?」

「それぞれの貴族領と国王直轄領で異なる組織になっている。この辺は個人的には問題があるとは思っているがな。隣の貴族領に逃げ込まれた場合、追っている側の警備隊に捜査権がない。逃げ込まれた先の領主の協力を得なければならず弊害が多いのさ」


「国王直轄の組織にはできないものなんですね?」

「普通、貴族は自分の領地に他人に入り込まれたくないものなのさ」

 ブンゾーが引き継いで答えた。


「なるほど」

「ただ、それぞれの警備隊はそれなりにしっかりしたところが多いから何かあったら協力を仰ぐのは間違いではない」


 ダイカクは一息つくと、お茶を飲んだ。

「後は直接治安を守る訳ではないが、探検者組合という組織がある。これはどちらかというと個別の依頼を受けて護衛をしたり、魔物の討伐をしたりしているな」




 午前は、そこまでで話は終わり、午後から再開した。


ダイカクはこの国の通貨について説明する。

この国の通貨は「イェン」と呼ばれていた。

 1イェン=錫貨

 10イェン=黄銅貨

 100イェン=銅貨

 1万イェン=銀貨

 100万イェン=金貨

 1億イェン=白金貨

 黄銅貨5~10枚で店で1食、食べる事ができる。


(そうすると、黄銅貨1枚が100円ぐらいのイメージか。1イェンが日本円で10円ぐらいで考えればいいか。金貨1枚が1000万、白金貨に至っては、10億! 宝くじみたいな金額だな)


 そこで敏文ははたと気が付く。今自分達は錫貨1枚すら持っていないことに。


「すいませんダイカクさん。俺達は今全くお金がありません。先日来、食事や色々ご迷惑をかけてしまって。すぐにはお返しできないのですが、いずれ必ず」

「俺にただで魔法を教わろうとしてるのにそんな心配はいらん。お前に心配されるほど貧乏ではないから、安心して飯を食い、そして学べばいい。ほらな」


 そう言うとダイカクはテーブルに貨幣の種類ごとに見本となる貨幣をおいていった。白金貨や金貨もある。

「えっ、これって……」

「これは俺が持ってる金の一部だ。だから心配はいらん」

「わかりました」

「凄い!」

 隣で目をキラキラさせている動物がいる。

「これだけあれば、あれもこれも買える……」

(これ君のじゃないよサラくん)

 内心そう思う敏文だった。




 するとダイカクが表情を変える。

「それではある意味おまちかねってやつか。魔法の話をしようか」

「はい。お願いします」


「まず、魔法には大きくわけて2種類ある。1つは、基本属性魔法と言われるものだ。まず火・水・風・雷・土の5属性がある。それに加えて生活魔法と言われる5属性とは異なる魔法があり、これも含めて基本属性魔法というんだ」

「なるほど。5属性はイメージ出来るんですけど生活魔法というのは?」

 サラが聞く。

「ああ、それは戦闘に使うレベルの物ではないが、例えば家や道具、服を清潔に保ったり、寒さや暑さを適温にしたり、用は生活に便利な魔法一般のことだ。魔力があっても全てを使える訳ではないがな。5属性の魔法に比べたら使用する魔力が少なくて済むため、魔法士でなくとも使える者がいるな」

「あ、魔法で掃除が出来るとか、それって夢かも」

 サラは笑ってペロッと舌を出す。


「そして5属性の魔法が使えると高等学校でその力を認定されたものか、あるいは魔法生物研究所で認定を受けたものは、国認定の魔法士として、公的な証明を受けることになる」


「あれ、じゃあブンゾーさんって……」

 サラの疑問に本人が答える。

「ああ、魔法は使えるが魔法士ではない」


 ダイカクは説明を続ける。

「そしてもう1つが特殊属性魔法と言われるものだ。光・闇・生・重力・金属・空間の6つの属性がある。これは使える人間が殆どいないがホーエンの歴史の中で今まで行使が確認されているものだ」


(なるほど、属性が11種類+生活魔法。でも基本と特殊でどう違うんだろう)

 敏文が疑問に思っていると同じことをサラが聞いた。

「基本と特殊にどんな違いがあるんですか?」

「基本属性魔法は、人の持っている魔力を引き出して使うものだ。魔力を持っている人間は基本属性のどれかと親和性が高く、自分の魔力をその形にして行使する事ができる。ただ、魔力を持たないか、持っていても少ないものは魔法の行使に至らない。ほとんどの者が行使できないのが現状だ。魔法士が貴重とされる所以だな」


「そうですか。魔法士は意外に少ないんですね。もっとたくさんいるように思っていました」

 俺は意外に思いながらブンゾーを見ながら伝える。

「トシフミは今まで俺やキクエ、ダイカクの魔法を間近に見ていたからな。たくさんいるように思ったんだろう」


 ダイカクは話を続けた。

「ホーエン全体でも300万人の人口に対して5千人もいないと思う。男爵領でも魔法士はそう多くはないのではないかな。魔法士の多くが国軍や研究所に所属しているからな。あとは探検者か。昨日の第一警備隊にもほとんどいなかっただろう。第二警備隊とミヤザ守備隊には何人かいるのだが、先日の戦闘では俺が同行していたからな。街の警備も考えて、ほとんど連れて行かなかったんだろう」

「なるほど」

「一般的な魔法士は、どれか1属性を行使できる者だ。稀に2属性以上の魔法を行使できる者がおり、上級魔法士と呼ばれている」

「なるほど。じゃあ、ダイカクさんは上級なんですね」

 サラがにっこりしながら確認した。


「ああ。一方、特殊属性魔法とは、この国の精霊がその司る属性の祝福を与えることでその属性の魔法が行使できるようになるものを指していて特魔法士といわれる。精霊が多く宿るとされるホーエンであっても精霊から祝福をうけること自体が非常に稀だと言われていてな。今のホーエンに使い手として存在が確認されているのは生魔法を使う俺の師匠のオズーノ様、光魔法の使い手とされる古都ナーラの陽光の精霊の祭殿の大司祭、金属魔法を行使できるミナミー島の刀匠だけだ」


 するとブンゾーが尋ねた。

「トシフミのような精霊魔法っていうのはそれとは違うのか? ダイカク」

「ああ。トシフミの場合、紅炎の精霊が直接力を貸しているからな。特殊属性魔法とも違うな」



「ダイカクさん。どうすれば、魔法の適性がわかるんですか?」

「そうだな。それにはある魔道具を使用するのさ。検魔鏡というな。これだよ。トシフミ」


 そう言うと、ダイカクは棚から両側に持ち手の付いた鏡を持ってきた。



 検魔鏡と呼ばれたその鏡は、円形の額に沿って5つの宝石のようなものが嵌め込まれている。


「これは俺がいた魔法生物研究所で基本属性の研究で得られた成果を元に作られたものでな。5つの属性の魔力が発する特性に反応するように作られたものだ。まあ、魔法・生物研究所にいる時に俺が開発してな。その権利や他に開発した魔道具なんかの権利を売ってさっきのような財になったんだが。それはさておき、両端の取手の部分を握ってこう静かに目をつぶり、息を整える。そうすると……」


 鏡面が黒くなり、鏡の周りの宝石の内3つが強く光出す。緑・青・黄だ。そして、その光は黒くなった鏡面の外側から渦を巻いていく。そしてやがて淡くなり消えていった。


「俺の属性は風・水・雷だ。その場合、今のようにそれぞれ緑・青・黄の色の光が現れる。そして、その光の強さと光が鏡面でどのように動くかでその属性への適性が判る。さっきのように渦を巻く場合は適性が強い。適性が弱い場合は渦を巻かずにスッと中心に集まって消える。そして、火と土の場合は赤と土色の光が現れるようになっている」

「凄いな」

「こんなことができるんですね」



「それじゃあまずはブンゾーからやってみようか」

「ああ」


 そう言うとブンゾーは、検魔鏡の取手の片方を握って持つと、大きく息をはいてから両手に持ち直し、静かに目をつぶった。


 すると宝石のうち、緑の宝石が強く光ると共に淡くではあるが土色の宝石が光っている。そして、緑の光はダイカクほどではないが軽く渦を巻き、そして土色の光は渦を巻かずに鏡面を半周ほどするとすうっと消えた。


「ほう、ブンゾーは2属性の適性があったのか。今まで土魔法を使ったことは?」

「いや、出来ねえと思ってたし、使ったことねえな。もしかするとキクエが使ってたみてぇな治癒の魔法が使えるかもってことか?」

「この感じだとそれほど効果は高くないかも知れんがな」

「使っているうちに適性が上がるってことはあるのか?」

「ない訳ではないな。ただ全く適性がない場合は無理だな。だから、ブンゾーの場合は風と土以外は使えないということだ」

「そうか。でも土の魔法が使えるかもって判っただけでもありがてぇな。これからの修行に気合いが入るってもんだ。キクエの加護でもあったのかも知れねえな」

「あ、そうか、じゃあ私の足の傷を治して頂いたのも……」

「ああ。キクエは土魔法を使ってた」


 敏文はふと疑問に思ってダイカクに聞いた。

「自分で自分の傷を治癒することは出来るんですか?」

「ああ、できるがな。ただあのときのキクエさんが負っていたというほど大きな傷を負ってしまうと魔法を行使する為の魔力だけではなく、それを使う為の精神力が足りない状態で治癒できないということにはなるな」

「なるほど、魔力だけではなく、使う為の精神力も必要だってことですね」

「そうだな、トシフミ」



 その時、アヤメとマリカがお茶とお菓子を持って現れた。

「あ、検魔鏡使ってるんだ。私達も見ていていいですか? お父様」

「ああ、構わんよ。アヤメ」


「じゃあ、次はサラ。君がやって見てくれ」

「はい。1つも適性がなかったらどうしよう……」

「まずはやって見ることだ。悩むのはそれからだな」

 ダイカクの言葉にサラはちらと俺のことを見つつ、意を決して検魔鏡を手に取った。

 そして2、3度深呼吸すると、静かに目を閉じた。

 すると、青と黄の宝石が強く光っている。そして、ダイカクの時と同じように渦を巻きながら2色の光が絡まりつつ鏡面を動き、そして消えた。

「凄いな。水と雷の2属性でしかも俺の時より2つとも渦を強く巻いていた」

「えっ、ブンゾーさんも2属性なの?」

 ブンゾーのその言葉にアヤメが驚いて聞いた。

「ああ、風と土のな。ただ、さっきのサラの時ほど強くはねえがな」


「良かった。適性がなかったらどうしようって思ったから」

「良かったな」

 敏文はサラの肩に手を置いて自分のことのように喜んだ。


「ずるい」

 マリカが呟く。

「こら、マリカ。ずるいなんて言わないの。でも羨ましいなぁ。私は風の1属性だけだし、マリカも雷だけ。お姉ちゃんだって水だけだし。お父様が3属性持ちだから、私達もせめて2つの属性があればって、ずうっと思ってたんだ。そうすれば上級魔法士になれるのに」

「まあ、こればかりはな。お前達はそれぞれの属性を極めることだ」

 膨れるマリカをダイカクが頭を撫でながら慰める。



「じゃあ最後にトシフミ。やって見てくれ」

 敏文は鏡を受け取る。

(適性があるのだろか。もし、なかったとしたら、その時はコウと精霊魔法で頑張ればいいか)

『心配……要らないよ』

 コウが背中を押してくれる。

『ありがとう』


 敏文は検魔鏡を握り息を整え、そして目を閉じた。

「おおっ!」

「きれ~い。いろんないろが」

「凄い!」

「ずるすぎる」

「こんなことが師匠以外に!」


 皆の声に目を開いて見ると5つとも宝石が輝いている。5つともダイカクの時よりさらに強く輝いている。そして、5色の光は凄い勢いで渦を巻きすぐには消えない。


「こんなことがあるのか。ダイカク」

「まさか5属性持ちとはな。驚いたな」

 ようやく渦を巻いていた光が消えた。


「ふう」

 敏文は息をついて検魔鏡をテーブルにおいた。

『大丈夫だったでしょ。トシフミはとても魔法の適性が高いようなんだ。それと精霊との親和性もね。だからこれからこの国を旅する事があれば、いろんな精霊達が興味を持ってよって来ると思うよ。どの精霊を宿すかはトシフミ次第だね』

『そんなに宿せるものなのか?』

『それもトシフミ次第だよ』


「ずるすぎる~」とマリカ。

「これは通り越してるな」とブンゾー。


「まあ、二人とも極めて稀だな。特にトシフミは一度機会があればオズーノ様に会わせてみたいな。なんと仰るやら」

「え、その、魔法・生物研究所ってとこに?」

 敏文は嫌な予感がしてちょっと引いている。

「ああ。何だか凄く心配そうだがどうした?」

「人体実験とかされない、かと」

「ああ、それはされるだろうな。あれやこれやと」

「お父様……」

「なんか恐い」

 アヤメとサラが引いている。


「冗談だ。魔法・生物研究所は、そんな人を傷つけるようなことはしていない」

「良かった。私やトシフミが縛られて色々されるのかと」

 サラは少しほっとした様子だ。


「どんな想像をしてたんだお前達は。俺がそんなことしてたように見えたのか?」

「いや、何となくマッドサイエンティストな研究者とかいそうな空気が……」

「マッド……なんだそりゃ?」

「いえいえ、こちらのことです」

「とにかく、適性があることがわかったんだ。明日から訓練始めるぞ。トシフミには、武器を使った戦い方もな」

「それって、しごかれるってこと?」

「そうとも言うな」

「あらら。でも俺達がこの世界で生きてく為だしな。一丁頑張りますか!」

「私も頑張ります!」

 サラも握りこぶしを作っている。


 こうして、ブンゾーも含め三人は魔法と武術の修行をすることになった。

読んでくださってありがとうございます。

また、次も宜しくお願いします。

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