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二人の霊媒師  作者: 凛道桜嵐
第二章 霊媒師 七星柑奈 弟との出会い

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第二章 初めて使った力

こちらの作品は一度投稿させて頂いた物になります。

気軽な気持ちで読んで貰えるようにと思い、区切って再投稿しております。

住職さんは履き物を脱ぎ、部屋の中にあるタンスのような棚の引き出しから一枚の紙を渡しに渡してきた。

そこに書いてあったのは般若心経という題に沢山の文字が並んである。

「これが。」

と言うと

「フリガナが振ってあるから読めるかと思いますよ。」

と言われて右から順に読んでいく。

「摩訶般若波羅蜜多心経

観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空

度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空

空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相

不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中・・・」

沢山の漢字が並んでいる。

横にはフリガナがふられているが、この文を覚えるのには時間が掛かりそうだと思った。

しかし、もしこのお経が私の力の使い方のきっかけになるのであれば・・・と思い、私は住職さんにお礼を言って走って家に帰った。

家に帰ると、母が走って帰ってきた私にビックリしながら

「そんなに慌ててどうしたの?」

と聞いてきたが、今の私の頭にはこのお経を覚える事が先だった。

母の言葉に耳も傾けずに私は自分の部屋に入ると、お経の紙をずっと見つめ何度も何度も唱えた。

母はこっそり部屋を見に来たが私は気にすることも無く、ただ何度も頭に叩き込むようにしてお経を覚えたのだった。


それから暫くして、また黒い悪意が籠もった煙に出会った。

あの煙は間違いなく、あの時のサラリーマンの背中に取り憑いていた煙に似ていた。

あの時の煙とは少し違うように思えるが、何をしでかすか分からない。

しかもその煙は、ベビーカーを押して歩く妊婦さんのお腹に纏わり付いていた。

今までの私なら、知らないふりしてしまっていただろう。

でも私には珠々もお経もある。

ここで知らないふりをしてお腹の赤ちゃんだけでは無く、お母さんにも何かあったらベビーカーに乗っているこの子供がどんな辛い悲しい思いをするだろうか。

そう、考えると私は居ても立ってもいられずにその妊婦さんに話掛けた。

「こんにちは。」

と声を掛けると制服を着ているのもあるからかそこまで警戒はされずに

「こんにちは。」

と返してくれた。

ただここからが難題だった。

急に現れた女子高生が

「貴女のお腹に煙が巻いてますよ」

なんて言った日には変人扱いだけでは無く、制服から学校が特定されて、学校にも迷惑を掛けるかもしれない。


悩む私に、ベビーカーに乗っている子供が私の手を握った。

私は、ベビーカーの子供と目線が合うようにしてしゃがみ込み

「こんにちは。」

と声を掛けるすると、ベビーカーに乗った子供は私の何が面白かったのか分からないが、キャッキャッと笑ってくれた。

「可愛いお子さんですね。

つい可愛くて声かけちゃいました。

今お幾つなんですか?」

と聞くと

「ありがとう。今この子は一歳よ。」

と答える。

「もうすぐお兄ちゃんになるのかな?」

とベビーカーに乗っている子供に聞くと

「そうなの!

よくこの子が男の子って分かったわね!

よく女の子と間違えられるのよ!」

と驚いた顔をして、お母さんはベビーカーに乗った子供の頭を優しく撫でた。

「えーそうなんですね!

こんなイケメンさんだからきっと男の子かな?と思ったんです!

間違えなくて良かった~

ちょっと安心です。」

と笑顔で言うと、お母さんがフフフと口元に手を当てながら笑う。

「そういえばもうお腹のお子さんは、性別はもう分かっているのですか?」

「えぇ!多分女の子よ!

もう少し大きくなってからじゃないと分からないし、もしかしたら生まれたら男の子だったっていうこともあるけれど・・・。

エコーで見る限りでは、女の子と言われてるわ!」

「そうなんですね~。

もし良かったら、元気に生まれてきてねという気持ちをお腹の子に送っても良いですか?」

「あらっ!

そんな嬉しい事を言って貰えるなんて!

ありがとう!是非お腹の子に話し掛けてあげて!」

と言われ、私はポケットにある珠々を左手に持ってお腹を擦らせて貰った。

珠々を出した事で驚かれるかと思いきやそこまで本気で祈ってくれるのかと思ったのか、フフフと笑いながらお腹を触らせてくれるお母さんに心から感謝した。

お腹を触ると煙が私を巻き付いて来た。

煙からは、何とも寂しい心臓に突き刺さる冷たい氷の柱のような感覚がする。

この氷を溶かさないといけない。

そして私は暗記していた般若心経を唱える。

目を瞑りお腹を優しく撫でながら、私は煙が消えること一心にお経を唱えた。

すると私のみぞおちから暖かいお日様のような感覚が、私の心臓を伝ってお腹を触る手の指先まで伝わった感覚がした。

するとお腹に巻き付いていた煙が少しずつ消えていき、私の心臓に刺していた氷の柱が少しずつ溶けていく。

この感覚になるのは生まれて初めての経験だった。

暫くすると煙は完全に消えた。

私はお腹の子にもう大丈夫だよ。

という気持ちを込めて最後にお腹に静かに当てるとお腹の子がお腹を蹴った。

ボンとお腹の中から衝撃を受けるとお母さんが

「あらっ!今蹴ったわ!

きっとお姉さんの気持ちが伝わったのね!

元気に生まれてくるよ!て言ってるんだわ!」

と笑顔になる。

その笑顔に私は心の底からホッとし初めて人を救った事が嬉しかった。

私はお母さんとベビーカーの子供に手を振って挨拶をして小さくガッツポーズをした。

私は私の力を初めて人の為に使えたのだ。

私には人を救える力があるのだと思うと嬉しくて仕方が無かった。

煙は薄いモノから黒く悪意が遠くからでも感じ取れるようなモノまで様々だった。

しかし毎日出会うわけでは無い。

ただ出会った際には出来る限り祓うようにしていたが、自覚が無い人からはよく拒否されてしまうことも少なくなかった。


猫と一緒に暮らすようになってから、居なくなったモノがあります。

そう、虫です。

特にGと呼ばれる私の天敵は、本当に見なくなりました。

幽霊とかよりも特にGが怖い私にとっては歓喜です。

怪奇現象も含め、霊障で悩む人にとってはこの野郎と思われるかもしれませんが・・・


猫を飼い始めた頃は、虫を捕って持ってくるとかお土産という名の死体を持ってくると聞いておりましたが、私の家に居る子達は虫に興味があっても運動神経があまりにも悪すぎて仕留められない子や、まず興味が無い子。

ジッと見るだけの子しか居ませんのでそういう体験はありません。


猫が居てくれたお陰でGが出なくなったのか、それともG自身が興味が無くなったのか

不思議ではありますが、このままの状態で居てくれたらと願うばかりです。

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