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アネモネの約束  作者: 兎束作哉
第4章 一輪の青いアネモネ
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case01 四年の月日



「ふぁあ……デスクワークつれぇな。年か?」

「先輩今年で幾つになるんでしたっけ?30……」

「29だ!ハッ倒すぞ?」

「そんな、誤差です……!」



 後輩の胸倉を掴もうとして、俺はハッと我に返り睨みを利かすだけにとどめた。それでも、かなり後輩はびびってしまったのか小さくなっていた。俺は悪くない、女に年齢を聞くのがタブーというなら、男も同じだろうと男女平等を求める何て心の中で呟きながら、早く持ち場に戻るように後輩に指示を出す。分かりました! と威勢のいい返事をし、パタパタとかけていく姿を見ると、昔の自分が思い出された。



 空が死んでから4年の月日が経った。どうにか試験を受けて階級も上げ、順調にいけるところまでキャリアを積んでいくことに成功した。もうそりゃあ、必死に勉強して姉ちゃんに土下座までしてアドバイスも貰った。同居していたマンションは2人で家賃を払っていたが、1人となると少し高いようにも感じた。それでも、そこに住み続けているのはそこに空との思い出がつまっているからだ。引っ越しを1度考えたが俺にはどうしてもそこを捨てることは、離れることは出来なかった。



(あれから4年とか早すぎんだろ)



 大人になると時間の感覚が変わる。それは以前にも実感したことだったが、空の死から慌ただしく世界は回ってあっという間に4年も経っていたのだ。その間何があったかは正直よく覚えていないし、事件発生の多さに頭を痛くするほか無かったが、まあそれも解決してしまえば終わった話と言うことで過ぎていった。被害者、被害者遺族の事まで忘れるわけではない。解決した事件の被害者の元にもたまに顔を出すことがある。その人達は、どうにか事件を乗り越えようと互いに励まし合っていた。そんな様子を見ていると、また自分と重なる部分があった。


 前を向くのは難しいし、どうにもその嫌な過去が事件がフラッシュバックする。そのたび足を捕まれて前進できない。だからこそ、俺はその嫌な過去を足につけながら忘れないようにと1日1歩ずつ歩くことにした。どうせ、付きまとってくるものだ。感じた絶望も痛みも悲しみも、忘れること何て出来ない。


 そう思いながら俺は生きている。

 そうあることで、彼奴らが背中を押してくれるような気がしたからだ。



(つか、本当に年って感じだよな……いやまだ、ギリ20台だが……)



 来年生きていれば30になる。周りからは早く結婚しろだとか合コンに誘われるが、俺は結婚する気がなかった。俺の1番は決まっているし、それは浮気になってしまうと思ったからだ。勿論、そいつと婚約関係もなければ恋人でもなかった。だが、俺はそいつのことを「親友」だとも思っているし「好きな人」とも思っている。



(空は、そっちで元気にやってるか?)



 窓から見える青い空を見て俺は亡き親友のことを思い浮かべた。親友の、空の事を考えない日なんてない。忘れないようにと、毎日何があったかを思いだしている。それでも、霞んでしまう思い出は仕方無いものと割り切っている。

 まあ、神津も明智もそっちにいるだろうし、仲良くやっているだろうと思った。早く来すぎだろとか怒られていたりするんじゃないかとも、色々考えると面白い。

 俺は当分いけそうにないし、いくきもないが。


 ふぅ……と息を吐いて、俺は机の上に広げておいた資料に目を通した。とある事件の資料。上からまわってきたもので、一課の何人かで手分けして事件を追っているが、これと言って手がかりはなかった。そうしているうちに他の事件の資料で俺の机はごちゃごちゃと汚くなっていく。今すぐに机をひっくり返して暴れたいぐらいだが、そんなことはしない。妄想の範囲でとどめておく。



 4年たった今でも、捌剣市の犯罪件数は減らない。

 ヤクザは相変わらずだがまだ落ち着いた方だし、宗教団体も残党を除けばほぼ壊滅したと言っても過言ではない。4年の間に色々起ったため整理するにはそれこそ1日では足りなかった。



(まあ、マフィアは……なーんも手が借りないけどな)



 密かに、明智が死んだあの日からマフィアについて調べていた。


 明智の探偵事務所はとある男に引取られたようで形としては残っている。何でも引取ったのが彼奴の元上司らしく、一応申し訳ない程度にマフィアに関する情報を貰えた。すると、ジュエリーランドの爆破事件と、明智を拳銃で射殺した犯人が同一人物であることが分かった。まあ、性別までは分からなかったが、神出鬼没の爆弾魔らしい。それも、バックにマフィアがいるとか。

 海外のマフィアのため、どうも手のつけようがなかったが、日本の来日しているのであれば、若しくは潜伏しているのであれば日本警察のテリトリーにいるうちに捕まえたいと思った。と言っても4年前の事なので今犯人が生きているかどうかも分からない。


 空も追っていた事件ということもあって、俺はその意思を継いで必ず仇を討つと誓った。あの「固い誓い」という花言葉を持つ花に誓って。



「あのー、先輩」

「んだよ、今忙しいんだよ!」



 少し過去に浸っていると、後輩が俺を呼びにき、仕事もつまっていたと言うことでキレてしまった。4年経った今でも俺は一課の弟のようだと、手を焼く存在だと言われ続けている。姉ちゃんにも尻に敷かれているし。変わっていないと言えば俺の周りはあまり変わっていない。

 そんな風にキレてしまったことを申し訳なく思いつつ、俺は咳払いをして何だと、後輩に聞く。すると、後輩は言いにくそうに口を開いた。



「先輩にあいたいって尋ねてきた人がいて……何でも4年前の事件、明智探偵の知り合いを、と呟いているそうで」

「……おい、その話詳しく聞かせろ」



 後輩の放った単語を全て拾いあげ、俺は、立ち上がり俺に会いたいと尋ねてきた1人の女性と顔を合わせることになった。




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