↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命のつがいは鬼畜な上司  作者: 白井夢子
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/117

02.昔話は黒歴史


「母さんは、つがい認定を受ける何年も前から、親父の近くにいたんだろ?なんでつがいを名乗り出なかったんだよ」


ヒヨクの問いかけに、コフィはマスカットジュースを飲む手を止めた。

コトリ、とグラスを静かにテーブルに置く。


「……そうね。何度も話したと思うけど、レオードは会社の先輩だったの。3年ほどずっと一緒にペアを組まされてたわ……」


コフィがレオードの後輩だったことは、ヒヨクも知っている。

これまで何度も、グチ混じりに若い頃の親父の話を聞かされてきた。

だが、母親の昔話など聞く気もおきず、今までまともに聞いていなかったせいで、細かい話はほとんど覚えていない。


「……本当にレオードは、ひどい先輩だったのよ?ペアを組まされるの、すっごく嫌だったわ」


昔を思い出したのか、コフィの丸い目がキッと吊り上がる。


「一年先輩なだけなのに、強い種族だからって何かと偉そうに仕事を言い付けてきたの。

毎日残業続きだったし、休みの前なんて『明日休みたかったら、しっかりやれよ』って山ほどの書類を渡してくるのよ?『お前は、本当にトロくせえな』とか、『早くしろよ』とか、いっぱい嫌味も言われたわ」


テーブルの上で握りしめたコフィの手が、震えていた。


「私ずっと、『あんな鬼畜な先輩のつがいなんて、絶対に、一生名乗り出ない!』って心に誓ってたの」


「コフィ。もう、そんな昔話なんて止めよう。ほら、スノウが用意してくれた、おやつのリンゴを食べねえか?今日のリンゴは蜜がたっぷりだぞ」


レオードが必死になって話に割り込んできた。

コフィはレオードの誘いに、プイと顔を背ける。


「あ!そうだ。前にナナミーちゃんが話してた、リンゴ飴をスノウに作ってもらうか?もうすぐこの街にもりんご飴が流行るみたいだって、言ってただろ?」


レオードが必死に機嫌を取っているが、コフィは許す気はないらしい。

プイイッっとさらに顔を背けていた。



レオードが話に割り込んできたせいで、続きの話が聞けなかった。


残業ばかりの日々を恨んでいたことは、ヒヨクにも心当たりがあって胸が痛いが、知りたいのはその先だ。

それほどの思いでいたにも関わらず、運命のつがいを名乗り出ようと考えたきっかけを聞きたかった。


「親父、うるせえよ。今こいつは俺と話してんだよ。少し黙っとけよ」


そうレオードに声をかけた瞬間――ガッ!と喉元を締め上げられた。


「『コフィお母さん』、だろ?テメェは何度言ったらわかんだ?――今すぐ帰れ。コフィをこいつ呼ばわりする奴に、これ以上話す資格はねえ」


「ああ?うるせえな、間違えただけだろ?そんなんだから、母さんにも嫌われんだよ。どうせ昔から、そんな態度取ってきたんだろ?」


「レオードが嫌な先輩だった時、私のこと『こいつ』とか『テメェ』とか呼んできたわ……」


ヒヨクの言葉に、コフィがポツリと呟く。

さらに昔を思い出したのか、またコフィの目がキッと吊り上がった。



「……ヒヨク」


レオードの目が光った。


「テメェは、もう帰れ。いいか、二度とコフィに昔の話を聞くんじゃねえぞ」


襟元を掴み上げられたまま扉まで歩き、部屋の外に投げ出され、扉を閉められた。

今日はもうこれ以上、コフィから話を聞くのは無理だろう。

――レオードがそれを許さないはずだ。


チッと舌打ちをして、今日のところは引き上げることにした。




* *




「……カメリアのばあさんに会いに行くか」


「えっ、ヒヨク様、ヨウおじいちゃんの家に遊びに行くんですか?」


ヒヨクの呟きに、ナナミーがシール帳から顔を上げた。


あれからレオードに、「当分うちに来るな」と出禁をくらい、ヒヨクはコフィに話を聞けないでいた。

コフィに話を聞けないなら、祖母のカメリアに聞くしかない。


カメリアも、コフィと同じように、運命のつがいのそばにいながら、つがい認定をされるのが遅かった。

その理由を確かめるのは、カメリアでもいい。


そんなことを考え込んでいたせいか、知らず口にしていたらしい。

ナナミーが羨ましそうにヒヨクを見ていた。


「少しばあさんに話があるんだが……ナナミーも一緒に行くか?」


そう声をかけると、顔を輝かせたナナミーがコクリと頷いた。


「ヨウおじいちゃんと、カメリアおばあちゃんにも、りんご飴の話教えてあげようかな〜。フフ〜ン、フフ〜ン、アメッアメ〜♪」


機嫌良く歌い出したナナミーに、最近のどことなく曇る気持ちがサラサラと溶けて行った。


「久しぶりにバーベキューでもするか?その後プールで泳ぐのもいいかもしれねえな。疲れたらうろで昼寝もいいだろ」


「わぁ〜……」


さらに目を輝かせるナナミーを見て、ヒヨクの胸が跳ねた。


『ナナミー。お前、運命のつがいのアザ、持ってんじゃねえか?こんだけ俺が惹かれんのは、その証拠じゃねえのか?』


――つい、その言葉が口を突きそうになった。


(……いや、ダメだ)


それは危険な言葉だ。

そんな迂闊なことを言って、『実は……チレッグ様と同じアザがあるんです』などとカミングアウトされたら、チレッグを消しに向かいにくい。


アザがあるなら、誰のアザかを前もって見極めなければならない。

ヒヨクのアザを持っているなら、それはナナミー自身の口から名乗り出てもらわなくては、色々と不都合だ。


(やっぱり、カメリアばあさんに聞くしかねえな)


フフ〜ン、フフ〜ンと歌うナナミーに、ヒヨクは改めて決意した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。