24. 腹の立つオジサンだ
「国王陛下、拝謁を許してくださり感謝します。」
「おお、ユリナ殿。ユリナ殿の講義は大層中身のあるこの国にとっても重要な話ではあると聞き及んでおるぞ。して、今日はいかがしたのかな?」
何にも知らないのか、知らないふりなのか初めは私に対して講義のことを褒めてくださった。
私がサブリナ嬢から聞いたことを陛下に確認をすると、陛下はしばらくは無言で話を聞いていた。
「……それで、ユリナ殿は何が気に入らないと申すのか?」
「アレクに許可なくサブリナ嬢との婚約を交わすなど、おかしくないですか?」
「それはこの国の行く末を守る為の王命じゃからな。誰も反論できぬし、たとえアレクサンドル殿でも従ってもらうしかない。」
この人は見た目は人の良い顔をしておいて、やっぱり自分の利益の為にアレクや私を平気で使う人だ。
「それでも、アレクにも意思があります。それにアレクをそんな爵位なんてもので縛らなくてもこの国で十分魔法で人助けをしてくれてるじゃありませんか。」
「それでも、爵位というのはこの世界では重要な意味を持つものなのだ。このマルシャル王国で偉大なる魔法使いアレクサンドル殿が公爵の位を持つことが、他国への牽制にもなるんじゃよ。」
黙って婚約することで、アレクが怒ったら元も子もないと思うけど。
「この国では四十日間の婚約期間を経れば、婚約破棄は絶対に認められんのじゃ。すでに婚約を交わしてから四十日間と言わずに経っておるからな。どちらにせよ手遅れじゃよ。」
何それ。勝ち誇ったような陛下の顔が、今ものすごく腹立たしく感じる。
「アレクに全て話します。」
「構わんが、もしそれで何か問題が起きれば……其方らを見守る役目を担っているジャン・デ・ロワイも、その一族郎党も責任を取らさざるを得んなあ。」
陛下の本来の姿は、残酷で自己中で本当に腹が立つおじさんだった。
「卑怯な。ジャンはそのこと知ってるんですか?」
「まさか。ジャン・デ・ロワイは扱いやすい奴じゃが、最近は些かアレクサンドル殿に懐柔されておるようだからな。」
「……では、失礼します。」
もう話すのも嫌になって、この腹の立つおじさんと同じ空間にいるだけで吐き気がした。
謁見の場を去ろうとした私へ陛下は声を掛ける。
「ユリナ殿も、余計なことはなさらんことだ。貴女は優しい娘だからな。ジャン・デ・ロワイや一族郎党が貴女の勝手で犠牲になるのは本意ではなかろう。」
今すぐに考えがまとまらなくて、今日はあのまま講義も途中にして、馬車で迎えに来たジャンと一緒にアレクの邸へと帰った。




