25. 過激なことをなさるのね
「アレクサンドル様、こちらはいかが?最近王都で人気のお菓子ですわ。あら、もうお茶がありませんわね。私自ら注いでさしあげますわ。」
「サブリナ嬢、もう少しそちらへ離れてもらえませんか。」
「いえ、私アレクサンドル様のお世話をしなければなりませんから。離れては何もできませんことよ。」
扉を開けてすぐ目の前で繰り広げられるこの光景は何?
「アレクサンドル様!?サ、サブリナ嬢も!大丈夫ですか?」
「どこを見て大丈夫だと思うんだ?早く何とかしろ。」
ここはアレクの邸で客間で、そこにいるのは何故か縄でグルグル巻きにされて動けなくなったアレクと、アレクの傍でお菓子とティーカップを手に持ちこちらへ相も変わらず勝ち誇ったような笑みを浮かべるサブリナ嬢。
「こんな時こそ魔法でしょ!?」
思わず叫んでしまったのは仕方あるまい。
「……サブリナ嬢が現れるまで、依頼されていた大掛かりな魔法を使っていたのと、個人的に使っていた魔法のせいで魔力が残っていない。」
「なんですか、それは。タイミング悪っ!」
なんとかアレクを拘束している縄をほどこうとしながらジャンは悪態をついている。
「あらあら、二人だけの楽しいティータイムでしたのに。残念ですわ。」
「サブリナ嬢、さきほどまで王城で講義を受けてたのに、素早いですね!」
「ユリナ様が陛下に長々と謁見している間にこちらへ伺った次第ですわ。こうでもしなければアレクサンドル様は私との時間を作ってくださらないではありませんか。」
いやいや、この悪役令嬢め。
今更コテンと首を傾げても全く可愛いとは思えませんよ。
「サブリナ嬢、今日のところはお帰りください。」
いつもならサブリナ嬢に対して少し冷たい程度のアレクが、ものすごく低い声で言ったのでさすがのサブリナ嬢もそそくさと帰り支度をし始めた。
「ま、まあ……まだまだ仲を深める時間はたっぷりありますから!今日のところは失礼しますわ。皆様ごきげんよう。」
私はこれが本場のカーテシーかと妙に感心しながら、嵐のようなサブリナ嬢が去って行くのを見送った。
先ほど陛下から聞いた話がなければ、もっと怒ったかもしれない。
私のアレクに何してるの!って。
でも、ジャンのことが心配になって何も言えなかった。
「まさかこんなことになるとは……。」
拘束されていたところが痛むのか身体をさすりながら、アレクが疲れた顔で呟いた。
「何やってるんですか!アレクサンドル様は魔法がなければヘナチョコなんですね!」
「ジャン、お前は知らないだろうがサブリナ嬢は筋肉の塊のような男たちを伴って俺を拘束したんだぞ。無理だろ。」
いつもの二人のやり取りにも、私はどこか上の空で。
「大体、個人的なことに使う魔法って何ですか?」
「……。いや、ユリナが王城に行っている間に何かあったら心配だから、ユリナのいる位置を知る魔法をかけていた。ユリナも異世界からの客人として有名になってしまったから、誘拐でもされたら大変だろう。」
何だそれ。
「……やっぱりストーカー気質なんだね。」
呆れたけれど、それでもアレクの気持ちが嬉しくて眉を下げながらも微笑んだ。




