23. こ、婚約してるだと
それからしばらく、毎日王城へと通って講義を行っている。
この国の未来を担う方々というだけあって、学者や医師、建築に携わるもの、あとは役人など様々なく職種の方たちが、私の元いた世界の話を聞きたがった。
「ユリナ様、私少し疲れてしまいましたわ。お茶にしませんこと?」
なぜ!何故この御令嬢がここにいらっしゃるのか。
このサブリナ嬢もものすごい特技があって、この国の未来を担う方なのだ。きっと……。
「……そうですね。それでは皆さん、少しお茶休憩にしましょう。」
「ユリナ様、こちらへいらして。私、貴女と色々とお話したいことがございましてよ。」
「はあ……。なんでしょう?」
「あら、貴女と話すことと言えば愛しの魔法使いアレクサンドル様のこと以外にありませんわ。」
いやいや、メインのはずの私の世界の話はいいの?
「はあ。そうですか。」
「アレクサンドル様はね、このマルシャル国にいらしてからずっと世界唯一の魔法使いとして活躍されてきましたのよ。それでも、この世界では爵位というものは存外重要なものですの。」
どこからか出したフワフワの羽のついた扇で口元を隠しながら語るサブリナ嬢は、まさに悪役令嬢の風格を醸し出していた。
「へえー、そうなんですか。」
「それでですわ。陛下はこの国の高貴な爵位をアレクサンドル様に与えることでアレクサンドル様がこれからもこの国で活躍されるようにとお考えですの。」
つまりずっとこの国に縛り付けて魔法を良いように使うつもりということね。
「でも、アレクはそんなこと望むでしょうか?」
「今までは固辞されてきたようですけれど、今回は陛下も本気を出されましてこの国で一番高貴で美しく、知性溢れる私との婚約によって、将来はこの国の公爵の地位を約束されたのですわ。」
勝ち誇ったようにこちらへ流し目を向ける、金髪縦ロールの御令嬢は何を言っているのか。
「えーっと……。アレクがサブリナ嬢とご婚約されるということですか?」
「いいえ、正確にはもうすでに王命によって婚約は果たされていますのよ。」
「は?」
最近ではあまりなかったけれど、突然の衝撃告白はこの地にやって来た時以来で、口をあんぐりと開けた私はきっとものすごく不細工な顔をしていると思う。
「それを……アレクは知ってるんですか?」
「それはまだ内密にせよとの陛下からのご指示ですから。アレクサンドル様はご存知ありませんわ。ですけれど、マルシャル王国の公爵なんていう高貴な身分と、美しくて聡明な私が手に入るんですもの。そのようなことは瑣末なことですわ。」
本当に、この国の人たちの自分勝手さには呆れ返る。
「……そうでしょうか?そこにアレクの意思はないんですよね。」
怒りに思わず握った右の拳が震えていた。
「あらあら。嫉妬なさっているの?私の伯父である国王陛下がお決めになったことですもの。言い忘れていたかも知れませんが、私は国王陛下の姪っ子なんですわ。貴女などとても相手になどならない、とても高貴な血筋なのですわよ。たとえ偉大なる魔法使いアレクサンドル様とはいえ、喜ばれないことなどあり得ませんわ。」
しかし、オホホホホ……と高笑いするこの御令嬢が、日本で読んだマンガのまさに悪役令嬢だなと考えているうちに妙に頭が冷静になってしまった。
「国王陛下に謁見申請をさせてください。」
私がそう言うと、周りで控えていた方の中から一人が急いで部屋を出て行った。




