19. 運命
「ユリナ、起きているのか?」
ああー……寝たふりがバレてる。
「ごめんなさい。起きるタイミングをなくしちゃって。」
「やっぱりな。急に身体が強張ったからそうだと思った。」
薄暗い灯りの部屋の中でフッと笑う美形のアレクがとんでもなくかっこ良く見えてしまって、先程のジャンとの会話を聞いてしまったこともあり、どうしていいか分からなかった。
「俺がなぜユリナを転生させたのかも聞いたか?」
「はい……。聞きました。すみません。」
「ククッ……何故敬語なんだ?」
笑いを堪えられないといった様子のアレクは、私を揶揄っているのかと思うくらい平気な顔をしている。
こっちは胸がドキドキして死にそうなのに。
「ドキドキして苦しいからですよ!」
「ドキドキ?なぜ?」
「なぜって……。それは私が……。」
「私が?」
「私が……、アレクのことを……好き……だから?」
なぜ疑問系で話してしまったんだろう。余計に恥ずかしくなって横になったままベッドのシーツを引き上げて顔を隠した。
アレクはベッドの傍でこちらを覗き込んだような形で会話をしてたから、シーツで顔を隠しても近くでまだいるのかと思うと顔が熱くなった。
「ユリナ、ユリナは俺の運命の相手だ。だから俺は寿命を半分無くしたとしてもユリナを転生させたし、心臓を分け与えた。心臓を分け与えるということは、俺のいた世界では誓いのようなものだ。」
「誓い?」
「そう、片方が死ねば片方も死ぬ。同じだけ時を生きるようにという誓約だ。」
「そんな誓約をアレクの世界の人はみんなしてるの?」
「いいや、そんな時代錯誤で面倒な誓約をするのはごく一部だけだ。ユリナ自身の身体が不十分だったこともあったが、俺自身が誓約を交わしたかったからの心臓を分け与えたんだ。」
ストーカーどころか、とんでもなくヤンデレ体質なアレクの性質を知ってもなお、嬉しいと感じてしまう私はもうすでに恋愛重症者なんだろう。
「でも最初に『結婚には拘らない』って……。」
「それはまだ混乱しているであろうユリナの意思を尊重したかったから『結婚という形には拘らない』と言ったが、そもそも傍にいてくれと言った時点であまり意味がなかったがな。結局俺から離れることを許さないんだから。」
なーんだ。最初からすれ違いがあったのね。
「悩んでたのが馬鹿みたい。」
「ん?何が?」
「アレクが私のこと『家政婦兼秘書』って思ってると思い込んでだから……。」
「そもそも、ヒショとは何なんだ?俺ははじめてっきり恋人のような意味だと思っていたんだが、どうやらユリナの行動を見ていると違うようだし……。」
もう頭がおかしくなりそうなくらいに胸が苦しくてドキドキして……。
「秘書っていうのは、仕事上の身の回りのお世話をしたり、手伝いをしたりする人。でも……、私もアレクのこと大切な存在だから。もっと近い存在でいたい。」
あーーー!とうとう言ってしまった!このとてつもない美形に!怖いもの知らずとはこのこと。
「ユリナ、これからも俺の傍で二人が生を失うまでずっといて欲しい。願わくば妻になってくれ。」
「……はい。」
その日、アレクとの関係は『家政婦兼秘書』から、『妻になる予定の女』へと変わった。




