17. 日本での知識
「アレク!お疲れ様!」
「ああ。ユリナもジャンもよく頑張ったな。」
「ア……アレクサンドル様が僕を褒めた……。」
ジャンは珍しくアレクに労われてあまりの感激に打ち震えている様子。
それでも今日アレクは二百人以上の中等症と重症の患者を治癒で治したそうだ。
「重症者と中等症の者たちは治癒にも魔力を多く消費しがちだが、軽症者が魔法に頼らずに回復してくれれば随分と楽だな。」
アレクが疲れた顔をしながらも、ホッと力を抜いた息を吐いた。
「そう?それなら良かった!アレクの負担が少しでも減らせたら、今日ジャンと一緒にトリアージと疫病対策の指導をした甲斐があったよ。」
「とりあーじ?とは?」
「手当ての緊急度によって患者……ええっと、患者っていうのは病気や怪我をしている人の呼び名なんだけど、患者の優先順位を決めることがトリアージだよ。」
「なるほど。患者の状態によって対応を変えれば、余計な負担はなくて済むな。ユリナの世界では当たり前のことなんだな。」
ジャンは訳も分からず私の指示に従ってくれてたけど、アレクからの質問で理由が分かって納得したようだ。
アレクも、日本ではテレビドラマでもやってるようなトリアージの有効性について感心している。
「あとは、自宅で静養している軽症の患者が順調に治って、しかも感染を広げなかったら良いんだけど。」
私が今日軽症者に説明していたことについて、手洗いやマスクの必要性、嘔吐物や排泄物から感染すること、脱水の予防などをアレクやジャン、ティエリー司祭たちにも詳しく話した。
この世界では思いもしなかった内容だったと思うけれど、異世界から来たというだけでクリニエ教では女神様扱いだということもあって皆納得してくれた。
「ユリナ様、本当にあなた様のいた世界はこことは全く違う世界なんですね。あなた様は本物の女神様です。」
優しい髪色のティエリー司祭はじめ、他の教会の方々が急に平伏すから、慌てて頭を上げてもらった。
私はただの高校生で、アレクのように魔法使いでもないし、ただたまたま知ってた日本での情報を活かして動いているだけなんだから。




