16. さりげなく優しい
「ティエリー司祭、先ほどは助かりました。ありがとうございます。」
軽症の患者もだいぶはけて少し落ち着いたころ、近くで誘導を一緒に行ってくれていたリーフグリーンの髪色の司祭に声を掛ける。
「いえいえ。こちらこそ、ユリナ様が異世界からの御客人とは知らず大変御無礼をいたしました。我がクリニエ教では異世界からの御客人は敬われる存在なのです。アレクサンドル様はもちろん、ユリナ様も我が国では大切に扱われるべき存在なのですよ。」
「そうなんですか……。それにしても、とてもタイミングよくティエリー司祭が来てくださって良かったです。私だけでは民衆の反感を買うばかりで……。」
あんなにたくさんの人の悪意に晒される経験なんてなかったから、本当はすごく怖かった。
それでも、アレクの為と防げるかも知れない疫病で亡くなる方の為に無理矢理強がってただけだった。
「ユリナ様が今朝方診療所の窓を全て開け放っておられましたから、アレクサンドル様が外の様子にお気づきになり心配されまして私を遣わしたのですよ。」
そういえば、閉め切った部屋は疫病に良くないと窓を全て開け放して換気してたんだった。
「アレクが……。」
「はい。ユリナ様が異世界からの御客人ということも、初めは私どもには秘密にされる予定だったようですが……。あえてそれを公開した方がユリナ様が動きやすいと思われたんでしょうね。」
そう言って笑うティエリー司祭は本当に優しい方なんだと思った。
「アレクサンドル様、ユリナに甘いからな。僕には冷たいのに!」
「まあジャンに冷たいのは仕方ないよ。」
「ユリナ!ひどいぞ!結構僕も頑張ってるのに。」
「ふふっ……そうだね。ジャンのおかげで私も今日頑張れたよ。ありがとう。」
その後も教会に訪れる疫病患者を次々と軽症、中等症、重症と分けてそれぞれに対応していったことでスムーズにアレクも治療が行えたようだ。




