番外編2 デザイナー
番外編2は王の視点です。
「はぁい!女王陛下初めまして、こんにちは!」
「ええ、はじめまして」
今日は大公代理から紹介されたドレスのデザイナーが来た。たった数分過ごしただけだが、今までで出会った前例がない雰囲気を醸し出す人だ。
「ああっ!噂には聞いていたけど本当に美しい方なのね!私の全身がそう反応しているわ!」
デザイナーは目を輝かせていた。頬も赤くなっている。全身がどうなっているかは服を着ているので見えない。
「全身?」
「そうよ!全身が感動に打ち震えているのよ!ああっ!素晴らしい…と」
デザイナーは自身の肩を抱きしめて体をくねらせている。自分はそれが終わるまで眺めていた。
「はぁ、こんな事している場合じゃなかったわ…。早速どんなドレスがいいのか言ってくれるかしら?」
デザイナーの目つきが変わった。職人の目だ。
「私は流行などはよく分からないので全てお任せするわ」
ここでさらにデザイナーの目つきが鋭くなった。猛獣や猛禽類が獲物を狩る時はこんな目をしそうだと思った。
「いいの?好きにやっちゃうわよ?本当の本当にいいのね?」
「ええ、もうすぐ成人するのでそれに合うようなドレスにしてくれれば、それで構わないわ」
大人の女性が着るドレスにして欲しい。今のは少し可愛すぎると思う。流石にリボンは付いていないがフリルやレースが沢山付いているのだ。
「この国だと十七歳で成人だったわよね。…何か好きな色はある?」
「…特にないわね」
特にないというか、どれも好きというか、好きな色という概念がなかった。
「じゃあ好きな人の髪や目の色は?」
「青みがかった黒、紺、濃紺…?」
アレクセイの顔を浮かべた。何故か不敵に笑っている顔が浮かんだ。
「ん~、それだと暗くなっちゃうわねぇ…。どうしようかしら…。飾りに取り入れればいいかしらねぇ」
デザイナーはサラサラと紙に絵を描き出した。白紙だったはずなのにあっという間にドレスが描かれていた。
「大まかな全体図はこんなんでどうかしら?王様なんだから立派でないといけないものね」
デザイナーから見せられた紙にはスカートが大きく広がったドレスが描かれていた。
「ええ、こちらで大丈夫です」
本当は粗末な服を着ていても立派に見える様になりたいが、今はドレスの力を借りようと思う。
「ん~後は…」
デザイナーはこちらを見たり紙を見たり視線を忙しなく動かしている。装飾など細かい部分を足しているのだろうか。
「ちょっと立ってみてくれるかしら?」
デザイナーに言われ、自分は椅子から立ち上がった。
「色々ポーズを取ってくれるかしら?」
「こ、こう?」
自分は両手を腰に当ててみた。肘を張り、なんだか偉そうになった。
「なんでそうなるのよ!しかもちょっと得意気な顔しちゃって!仁王立ちじゃなくて、もっと淑やかな感じにしてちょうだい!」
なんだか久しぶりに叱られた気がする。
「淑やか…」
今度は両手を下ろして、へその辺りに両手を置いた。肘も体につけてみた。
「…まぁ、さっきのよりはいいわね」
デザイナーは細かくペンを動かしている。
「…次は両腕を左右に広げてみて」
デザイナーに言われるがままに両腕を左右に広げた。
「そのまま一周回って」
自分はその場でゆっくり一周回った。
「…今のそのドレスだとちょっと胸とお尻がきつそうね」
「なんだか最近、太ったみたいで…」
「いえ、いいのよ。今でも細いぐらいだからもう少しお肉がついてた方がいいわよ。その方がアレクセイ王子も喜ぶでしょう」
「なっ!」
デザイナーの口からアレクセイの名が出たので、思わずたじろいでしまった。
「濃紺の髪をした王族なんてセマルグル王国の王族達ぐらいよ?キリルの坊ちゃんも近い色しているけどね。今回司令官として来てたのはアレクセイ王子でしょう?それくらい詳しくなくても分かるわよ」
キリルの坊ちゃんと言ったが大公代理は二十一、二歳ぐらいだったはずだ。大公代理が幼い頃からの知り合いなのだろうか。だとしたら、デザイナーがかなり若い頃から知り合いなのだろう。その頃からデザイナーとして有名だったのだろう。
「ええ、そう……」
「んふふ、可愛いのね。そんなに真っ赤になっちゃって。そうね、王子と再会の時のドレスも私が作ってあげるわ。楽しみにしていてね」
「ありがとう…」
「それでそんなに胸元ががっつり開いたのか」
「…そうなの。好きで胸元を見せているのではじゃないのよ」
そう、デザイナーに任せただけなのだ。
「……」
「どうしたの?」
アレクセイにじっと見つめられた。彼が見つめた箇所は、顔と胸元と腰と胸元と腰と胸元だ。
「いや、良い仕事をしているなと思ったんだ。胸に顔を埋めたくなるな」
「酔っているの?」
「流石に朝から酒は飲まないな」
アレクセイは一段と凜々しい顔をして言った。
「昨日のお酒が残っているんじゃ…んんっ!」
アレクセイに口を塞がれた。酒の匂いはしないので酔っていないのは分かった。分かったのにずっと口を塞がれたままだ。何回も唇を軽く吸われた後に漸く解放された。
「ほら、酔っていないだろう?」
アレクセイは満足げに笑った。
いつもならこの笑顔を見られるのは嬉しいのだが、今はこの笑顔が腹立たしく思えた。
「…そう、みたいね」
もう酔っているのか確認しないと心に誓った。
デザイナーは年齢不詳です。
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※予告なく加筆修正をしますので、予めご了承ください。




