小話4大公代理の被害者
短いです。数日早いお盆休みだと思って大目に見てください。
次回は通常の更新です。
男性は突然モコシュ大公国の大公代理を名乗る人物から話しかけられた。その人物はどこかアレクセイ殿下に似ていると思ったので本人で間違いないと確信した。
「それで貴方の領の名産や特産品は何でしょうか。名勝でも構いません」
大公代理はにこやかな笑顔で言った。
「そうですね。私の領は関所があるので、食べ物や建造物、後は衣類も異国風の物が多くありますね。いや、融合と言う方が正しいかも知れませんね」
男性は故郷を思い出しながら言った。
「おお!そうですか。ちなみにどちらの国と接しているのですか?」
大公代理はやや前のめりになっている。
「オーケアノスとですよ」
そんな大公代理を前にしても男性は怖じける事なく返事した。
「という事は北領ですね。…失礼ですが、領主殿ご本人でしょうか?」
「ええ、そうですよ」
先ほどの大公代理ほどではないが、北領領主は笑顔で言った。
「噂で聞いた話によると、とてもふくよかでらっしゃると…」
大公代理は眉間にやや力が入っているようだ。
他国の大公代理にまで体型が知れ渡っていたようだ。北領領主は恥ずかしさを感じていた。
「一年前まではそうでしたが、陛下に目を覚ましていただきました」
「ほう、陛下に…。ちなみにどのように?」
大公代理の目は一瞬だけギラリと輝き鋭くなっていた。北領領主は疑問に思ったが、すぐに返答した。
「そうですね。私は一年前までは全てを人任せにしていました。しかし王城に呼ばれたおりに陛下からお叱りを受けたのです。それまで私を叱る人は誰一人としておりませんでした。完全に甘やかされていたのです。民がどんな生活をしているのか知っているのにもかかわらず、好きな物を好きなだけ食べていました。それで大公代理殿もご存じの通り、かなり太ってしまったのです。どんなに醜かったでしょう…」
北領領主は自嘲気味に笑った。自身の過去を思い出すと自然とそうなってしまった。
「ほう…」
大公代理はとても真剣そうに北領領主の話を聞いていた。
「自分よりも十歳以上年下の人に叱られないと気付けなかったなんて何とも恥ずかしい話です」
「叱られても改心しない者も多いでしょう。貴方は気付き、改善したのですか素晴らしいですよ」
「え、ええ、ありがとうございます」
相変わらず大公代理は真剣な顔をしていたので、北領領主は戸惑っていた。
「貴重なお話をありがとうございました!」
大公代理は笑顔で颯爽と立ち去って行った。
北領領主は初めて会った人に語ってしまった、聞かれたからだが喋りすぎたと思った。
後年、北領領主が大公代理が書いた芝居を観劇したら、北領領主らしき人物が主人公である王子の恋敵の一人になっていたので心底驚いた。どおりで多くの観光客が来ると思ったのだ。最初は関所近くだからかと思っていたが、どうやらこれが原因だったようだ。北領領主はただ苦笑するしかなかった。
北領領主の話でした。
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