小話2王子の幼少期
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※2020/05/16加筆修正いたしました。
まだ小さな三人の子ども達が王宮の中庭で遊んでいた。年は五歳前後だろうか。それを侍従や侍女達が温かく見守っている。
「こうやって びゅーんって やってたんだ!」
「びゅーんって なんだ?」
「びゅーんは びゅーんだよ!」
金髪で癖毛の少年は青みを帯びた黒髪の少年に身振り手振りを交えて必死に説明している。
「ぎたいごじゃ わかりませんよ」
二人の少年の近くにいた明るい茶髪の少年が言った。二人よりは少し大人びた表情をしている。
「だから!こうやって!こうやってたんだ!」
「よけいに わからないぞ」
「…ほかの はなしに しましょう」
明るい茶髪の少年は二人の少年の会話に要領を得なかったらしく話を変えたいようだ。
「ああ、そうだな」
それに青みを帯びた黒髪の少年が同調した。彼も嫌だったらしい。
「えー!へいしの わざの はなしを しようよー!」
「ああ、へいしの けんじゅつの はなしだったのか」
「ちがうよ!やりだよ!」
「ああ、そうか。やりか。そうじゅつか。けんより ながいから びゅーんって いったのか?」
「じゃあ、ぎたいごより ぎおんごのほうが よかったですかね?」
「ふたりともー、むずかしい おはなししないでよ!…あっ!」
金髪で癖毛の少年は池の方に駆けて行った。それを二人の少年は歩いて追いかけた。侍従と侍女達も後を付いていった。
「さかなだ!ようしょくを してるの?」
金髪で癖毛の少年は池を覗き込んだ。池には魚が沢山泳いでいた。他の二人の少年も真似して覗き込んだ。
「こんなの たべたことないぞ」
青みを帯びた黒髪の少年は怪訝そうな顔をした。
「かんしょうよう ですよ」
明るい茶髪の少年が冷静に言った。
「かんしょうようって なぁに?」
金髪で癖毛の少年は不思議そうな顔をして首を傾げている。
「みるせんようって ことだな」
青みを帯びた黒髪の少年は淡々と答えた。
「ふぅん……」
三人は池で泳ぐ魚を眺めていた。そうして暫く魚を眺めていたら、突然青みを帯びた黒髪の少年が顔を上げて声を出した。
「アレクサンドルにいさまだ!」
少し離れた所に、声をあげた少年と同じく青みを帯びた黒髪の少年が立っていた。兄と呼ばれた少年は顔を弟の方に向けた。少年は兄に向けて手を振った。
「にいさまー!」
少年は兄の方に走っていった。他の少年二人と侍従と侍女達もぞろぞろと後を追った。
「アレクセイ!君も来ていたんだね」
アレクサンドルは弟のアレクセイに優しい眼差しを向けた。
「はい!…と、となりに いるのは だれですか?」
アレクセイはアレクサンドルの隣にいる見知らぬ少年に視線を向けた。
「ああ、彼は私の友達のドナートだよ」
「アレクセイ王子はじめまして。ドナートと申します」
ドナートは濃い茶髪をしており、兄であるアレクサンドルと比べても大分背が高かった。
「はじめまして。アレクセイです。こっちは ともだちのミハイル、こっちも ともだちのアルトゥールです」
アレクセイによると明るい茶髪の少年はミハイル、金髪で癖毛の少年はアルトゥールというらしい。
「はじめましてドナートさん。わたしはミハイルと もうします」
「ん、アルトゥールです」
ミハイルはしっかりと、アルトゥールはもじもじしながら答えた。ミハイルは男兄弟だが、アルトゥールは彼の他は女のきょうだいなので同じ年頃の男子には慣れていなかった。最近ようやっとアレクセイとミハイルに慣れてきたのだ。
「何をしていたんだい?」
アレクサンドルが優しく弟とその友達に聞いた。
「アルトゥールが やりのはなしを したあと、いけのさかなを みていました」
兄の質問にアレクセイが答えた。
「びゅーんって いっぱいありました!…あれ?」
アルトゥールは自分の言い間違いに気付いて首を傾げる。
「びゅーんがやりで、いっぱいはさかなです。あと、ある じゃなくて いるです」
それをミハイルが訂正した。
「ううー…」
アルトゥールはしょんぼりとしてしまった。
「アルトゥールはやりが好きなのかい?」
アレクサンドルは少し身をかがめて質問した。
「うん!あ、はい!」
「ドナートは剣も槍も得意なんだよ」
それを聞いたアルトゥールの表情は明るくなった。
「そうなの?…ですか?」
「はい」
ドナートは短く答えた。
「まえに、にいさまが いってたのって ドナートさんのことですか?つよいひとが いるんだって、いってましたよね」
アレクセイは目を輝かせた。今の話しを聞いた他の二人も同じく目を輝かせていた。
「アレクセイ王子、さんはいりません。アレクサンドル王子そんな事言ったのですか?」
「ああ、だって一度も勝てなかったからね。本当にすごいんだ」
「やめてください。あの後、王子相手に手加減しなかったとからかわれました」
ドナートは困った顔で答えた。
全身を見なければもっと年上に見える。
「ほかのひとは てかげんしたのですか?」
アレクセイはドナートに尋ねた。
「しなくても勝てないでしょうね」
ドナートの返答にアレクセイはやはりそうかと思い頷いた。
「二人はアレクセイに手加減しないでね。本人のためにならないからね」
「だいじょうぶです!てかげんしなくても かてないから!」
「たしかに…」
アルトゥールは明るく、ミハイルはやや渋い顔で言った。アレクセイは少し得意気な顔をした。
「ふふっ、あはははは!」
「ドナート?」
アレクサンドルは普段あまり大声で笑わないドナートの笑い声に驚いた。小さい三人もドナートに驚いたようだ。
「す、すみません。こんなに違うんだなって思って…」
「違う?…妹さんとかい?」
アレクサンドルはドナートに尋ねた。ドナートには三歳下の妹がいる。
「ええ、女の子はもっと大人びた言い方をするのです」
「そうなのですか?」
アレクセイは首をかしげ不思議そうにした。同じ年頃の女の子とはまともに話したことがなかったからだ
「そりゃもう…こちらが言い返せないくらいにね」
「…おねえさまたちがそうです。いもうとたちもそうなっちゃうのかなぁ…」
アルトゥールはしょんぼりと肩を落としている。
「覚悟しておいた方がいい」
「うー……」
ドナートの言葉にアルトゥールが苦悶の表情になった。
「アルトゥールのきょうだいには あわないようにしような…」
「そうですね…」
アレクセイとミハイルはヒソヒソと話しながら決意した。
「もうそろそろおやつの時間だね。部屋に戻ろうか」
「あ、あの、そのまえにドナートに おねがいが あるのですがっ!」
アレクセイは少し照れているようだ。頬が赤くなりもじもじしている。
「?なんでしょう」
「おんぶしてほしいです!」
思いがけないお願いにアレクサンドルとドナートは驚いた。二人は互いに顔を見合わせた。
「…いいですよ」
「やったぁ!」
アレクセイだけではなく他の二人も喜んでいた。結局ドナートは三人を順番におんぶしてあげたのだった。
子どもって難しい言葉を覚えると使いたがりますよね。
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