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小話1部下達

 部屋を追い出された人達が何をしていたかの話です。

 ※2020/05/14加筆修正いたしました。


 大公代理が血が繋がったもの同士で話をすると言ったので、皆部屋から追い出されてしまった。侍女達はおろおろとし、大公代理の性格を知る者達は顔が白くなっていた。悪い人ではないが、かなり厄介な人物なので顔を白くせざるを得ない。


「まずいですよね…」


 アルトゥールが本当に嫌そうな顔をしながら言った。


「ですが、どうしようもないです。いえ、精神を削ぎ落とされたくないので介入したくないと言うのが本音です」


 ドナートがより一層険しい顔になりながら言った。


「…ここで待つしかないでしょう。そうするしかありません」


 ミハイルは昨日の心の傷が残っているらしく他の皆よりさらに顔色が悪い。


「申し訳ない!遅れました!」


 将軍の声がしたので振り返って見ると、一国の宰相が将軍に背を負われていた。こんな事は他の国では絶対に見られないだろう。側には王女生存に気付いていたこの国の兵士がいた。彼が呼びに行ったらしい。

 将軍は宰相を降ろし、兵士は宰相に手を貸す。


「何故皆さん部屋の外にいらっしゃるのですか?」


 将軍はこの場にいる全員の顔を見渡した。


「血縁者だけで話をする事になりましたので、我らは退出するように言われました。現在部屋の中で王女様と王子と大公代理が話しています」

「そんな…。王女様…」


 宰相は顔を青くしている。


「今からでも中に入れませんか?」

「それはお止めになった方がよろしいかと思います。かなり気難しい方でらっしゃいますからね。ですが、王女様に危害を加えるような事はないので大丈夫です。ご安心ください」

「王女様…」


 将軍は表情を曇らせた。


 


 行儀は悪いが皆で戸や壁に耳を当てて部屋の中で何が行われているか探ってみる事にした。声の主は分かるが何を言っているのかはあまり聞き取れなかった。耳が良い王女ならば分かったかもしれないが、王女は当事者なので部屋の中である。


「何を話してらっしゃるのでしょうか。王女様とキリル様が話してらっしゃて、たまに王子が口を挟んでいるのは分かるのですが、ううっ、断片的に単語が聞き取れるぐらいですね」


 アルトゥールは困ったように言っているが楽しんでいるような雰囲気がある。


「あれ、笑ってらっしゃる?」


 部屋の中から大公代理の笑い声が聞こえたのだ。思いの外、話し合いは上手くいっているのかもしれない。


「そのようですね。上手くいった…のでしょうか?」

「そうだといいのですが」


 ミハイルとドナートは性格上この状況を楽しむことが出来ないので、顔を強ばらせたままだった。




 大公代理の笑い声が聞こえてから大公代理が一人でずっと喋っているようだった。たまに王女の相槌が聞こえるが、王子の声は聞こえてこない。

 あまりに長いので足の悪い宰相には近くの部屋で待機して貰っている。


「いつもの国自慢でしょうか。ということは署名してくださったのでしょうかね」


 ミハイルは大公代理に会う度に大公国の自慢や彼自身、彼の妹の自慢をされるのを思い出した。


「と、いう事は中に入ってもいいのでは?」

「将軍殿、駄目です。一から自慢をし直すに決まってます。絶対に入ってはなりません」


 ドナートは以前自分がされた事を思い出し将軍に忠告した。途中で人が来た時、今までしていた話を最初から話し始めたのだ。だがそれは良い方だ。話の腰を折ると大変な事になる。皆それを知っているので黙って話を聞くのだ。


「そ、それは避けたいですね」


 将軍はたじろいだ。部下達の必死さを感じ取ったようだ。 


「ん?席を立ったようです。話は終わったのでしょうか。宰相殿を呼んできてください」

「はい」


 ミハイルが言うと、アルトゥールが早足で宰相を呼びに行った。


 少しすると王子と大公代理が出て来た。王子は少しやつれている。

 宰相と将軍、侍女達とリーザは部屋の中に入っていった。

 大公代理は部下達に目をやった。


「聞き耳を立てていたようだが、何か面白い話は聞けたか?」


(まずい!ばれた!)


 王子の部下達は身を硬くした。何を言われるのかとヒヤヒヤする。


「いえ、そのような事は…」


 部下の一人が否定した。他の二人も同調する。


「嘘はよくないな。耳を押しつけすぎて赤くなっているぞ?」


 大公代理は部下達の耳を指さす。


「部下が失礼な事をいたしました。申し訳ない」


 王子が大公代理に謝罪した。


(あるじ)に謝らせるような事をするな。だいたい私は聞き耳を立てた行為を責めるつもりはない。主を守らないといけないわけだしな。だが嘘はよくないぞ」


 大公代理は部下達を横目で見た。

 部下と言ってはいるが、実際は王子に仕えている身なのだ。


「心よりお詫び申し上げます」

「分かってくれたのならよい。では、帰るとしよう」


 今日はまだましだった。いつもだったら面白い話のところを追及されていただろう。

 悪い人では、悪い人ではないのだが、ずっとこの調子なので疲れてしまう。大公国ではどうされているのだろう。一度話をしてみたいと思った。

 子どもの頃からだから慣れてしまっているのだろうか。新人が入った時はどうしているのだろうか。取り扱い説明書でもあるのだろうか。いずれにせよ、大公国の人は凄いと改めて認識させられた。




 大公代理は嘘が嫌いなようです。

 少しでも続きが気になる方は評価&ブクマお願いします。喜びます。

 ※予告なく加筆修正する場合がございますので、予めご了承ください。

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