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11.月夜

 評価&ブクマありがとうございます。

 ※2020/05/13加筆修正いたしました。


 医者に部屋を追い出されてしまった。

 離れた部屋から先ほど出て行った二人の声がするのでミハイルと共にその部屋に行ってみた。


「何故って、王女様が知りたがっておられたからだ。現に殿下も王女様に問われたら答えていただろう。あまり体調のよろしくない王女様に向かってな。それも得意気にだ。好いた相手に格好つけたいのは分かるが、相手の事を全く考えていない」


 ドナートははっきりとした口調で言った。

 格好つけていると思われたいたらしい。確かに彼女に良い人と思われたかったのは事実なので反論出来ない。


「そう思ったのにあんな言い方したんですか?」


 アルトゥールが頑張ってドナートに対抗しようとしている。


「殿下に倣っただけだ」

「ええっ!」


 アルトゥールは驚いて後ろに一歩下がった。


「自身に都合が悪いことは黙っておくのか?いずれ知ることだろう。黙っていられたほうが傷つくと思うぞ。王女様は子どもではない。それも王族だ。王族には責任がある。責任を放棄したら今回のように討たれる事もあるのだぞ」

「王女様はまだお若くていらっしゃいますし…」

「年齢は関係ないだろう。西の島国には十二歳で国を治めてらっしゃる方がいる」

「そ、そうですけど。そうですけど……」


 アルトゥールが助けを求めるようにこちらを見てきた。まるで叱られた子犬のようだ。


「すまない。俺の責任だ」

「そうです」


 ドナートがきっぱりと言った。いくら見慣れていても強面が睨むと怖い。蛇に睨まれた蛙とはこの事だろうか。


「殿下は王女様の事になると張り切ってしまわれますからね…」


 ミハイルが遠い目をしながら言った。

 それほどの事だろうか。張り切った覚えはない。


「いつからです?」

「今思えば塔を出る時から…ですかね」

「最初からでしたよねぇ」


 ドナートの問いにミハイルとアルトゥールは答える。二人とも遠くを見つめている。


「あまり人に興味を持たず自分の趣味しかなさらない殿下が?…重症ですね」


 強面がさらに強面になる。

 そんな風に見られていたのかと思うと心が痛い。


「散々ないわれようだな」

「今日の今日まで無自覚でしたし」

「それは、また、酷いですね」


 不敬部下が三人になった。とはいえ、事実なのだから仕方ない。彼女を思ってのことが彼女に負担をかけてしまった。王にならないともとれる事を言われてしまった。元宰相と元将軍が聞いたら倒れるかもしれない。国が落ち着くまで王の代理にだけでもなってくれないだろうか。名前だけでもいい。自治国にするのは避けたい、他国から侵略行為と問われかねなくもない。どんな理由であっても誹謗中傷したい連中はいるのだ。


(…特に小僧だ何だと罵ってきた国とか!)


「殿下、眉間に皺が寄ってますよ」


 アルトゥールに指摘されたので、眉間を指で押して伸ばしてみた。


「ん、ああ。これからどうしようかと思って」

「…そもそもこの国は女性に王位継承権はあるのですか?記憶を辿っても女王はいなかったと思うのですが」


 確かにドナートの言うとおり、近年に女王はいなかったはずだ。


「確か二代目の王が女性だったと思います。王位継承法の改正がされていなければエレオノーラ王女様も王になれるのではないでしょうか」


 ミハイルは眉間に少し皺を寄せながら言った。


「んー、元宰相殿に聞いた方が早いと思いますよ」

「それもそうだな」


 アルトゥールの言う通りだ。

 早速、元宰相の所に行き尋ねることにした。




「ええ、実は王位継承法が改正されたため、現在、女性は王になれないのです」


 嫌な予感は当たってしまった。元宰相はすまなそうな顔をしている。


「あの時、王女様を王にとおしゃっていましたが…?」

「法を改正すればよいと思っていたのですが、私にはその権限がないのです」


 ミハイルの質問に対し、元宰相は小さい体をさらに小さくして答えた。


「じゃあ地下牢にいる男に変えさせるしかないのか?」


 あまり関わりたくない。質問には答えるが、他はのらりくらりと躱される。


「他に権限がある方ははいないのでしょうか?」

「王女様自身にはないのですか?王族ですから可能なのではないでしょうか。それとも女性は……」

「はい、女性は法を変えられないのです。二代目の他に五代目も女王だったのですが、絶対君主制を良いことに我が儘し放題だったそうです。五、六年ほどの治世でしたが、国内はかなり荒れたそうです。その次の六代目の時に王位継承法が改正され、それと同時に女性の参政権もなくなりました」

「領主は駄目ですもんねぇ。領内の事だけですもんねぇ」


 全員のため息がもれる。彼女を説得する、しないだけではなくなった。


(せっかく良い案が浮かんでいたというのに……)


 連合国軍でなんとか出来ないかと思ったが、頼まれたのは彼女以外の王族を討つことと国民への食糧配布などだ。それ以上は出来ないだろう。


(王位継承権がどうのなんて少しも予想していなかったな。自治国、いや自治領にしてからすぐに独立させるとか?両親の国を云々言ってしまったのにそれは気まずいな。そもそも自治領ではなく植民地でないと宗主国側は人事等に口出し出来ない)


「また眉間に皺が寄ってますよ-」

「色々と大変な事になってしまったなと思ってな」

「私が再び宰相になればいいのではないでしょうか。地下牢にいるのですよね。すぐにでも行って譲らせましょう」




 結論から言うと駄目だった。あの口髭の男は承諾しなかった。様々な要求をしてきたが、どれも非現実的であった。最初から宰相を譲る気がないのだ。まるでこちらの出方を見て楽しんでいるようだった。やはり関わらなければよかったようだ。

 

「あの元口髭野郎め…。時間を無駄にした」

「あの者の性格を考えれば、はじめから無理だと分かっていましたね。面目ないです」


 元宰相はまた体を小さくしてしまった。


「思い出すのは相手の思う壷です。違う手を考えましょう」


 そう言ったミハイルはやつれている。いや、この場にいる全員やつれていた。


「そうですね。他にもしないといけない業務もありますしね」


 明るい性格のアルトゥールでさえ元気がない。


「もう夜ですし、また明日策を練りましょう」


 ドナートの一言で解散する事になった。




 解散した後、陣営に戻ったが眠れなかったので城の周りを散歩することにした。今日は満月なので夜でもかなり明るかった。

あれから色々考えてみたが、どれも似たような案しか出てこない。


(やはりあの元口髭野郎を丸め込むしかないのか…。どうやって納得させるか。…処刑して一から人員配置するか?…獄中死したことにするか?)


 黒い考えが浮かぶ。もし彼女に知られたら嫌われるだろう。それは絶対に嫌だ。

 満月を見上げる。薄く雲がかかり周りに薄い色がついている。


(…あれは彩雲と言うんだったか?)


 何を考えるでもなく見ていると、どこからか声が聞こえてきた。とても小さな声だ。


「…じ、アレ……おう…」


(なんだ?まさか幽霊か?)


「アレクセイさま……」


(この声は!)


 慌てて城の方を見上げると彼女が窓を少し開けこちらを見ている。もしかして王女の部屋を見に来たと思われないだろうか。


「エレオノーラ王女…」

「こんばんは。王子も月を見てらしたんですか?」


 二人で小声で話す。

 どうやら思われなかったようで、心底安心した。


「ええ、王女もですか?」

「はい。目が覚めたら外が明るかったので。ですがこの位置からじゃ見えませんね。久しぶりに月が見られると思ったのですけど、残念です」


 彼女は微笑んだ。残念というわりにはなんだか楽しそうだ。


「誰かいるのか!」


 巡回の兵だ。自分の事はいいが彼女がいるとバレてはならない。咄嗟に体が動いた。




 自分でも信じられない事をした。彼女に窓を開けてもらい、部屋の中に飛び込んだ。二階の部屋に飛び込んだのだ。

 カーテンの隙間から巡回の兵が行ったのを確認する。


「危ないところでした」


 そう言い彼女の顔を見ると少し顔が赤いように感じた。部屋に二人きりの状況なので少なからず期待してしまう。


「す、すごいです。どうやったんですか?」


 彼女は目を輝かせている。


「え、あ……」


 違ったようだ。少しでも期待してしまった自分が悲しい。


「私も練習したら出来るようになるでしょうか?」

「それは…やめた方がよろしいかと思います。体格的にも腕力的にも」


 彼女はソウデスカと片言のように言った。どうやらがっかりしたようだ。今まで出来ないことが多かっただろうから出来れば叶えてあげたいが…多分無理だろう。

 少しの沈黙の後、一瞬目があったがすぐに外されてしまった。


「昼間はすみませんでした。心配してくださっているのに失礼なことを言ってしまいました」

「私もきつい言い方をしてしまいました」

「そんな事ないです。国の、国民のためを思って言ってくださったのですから」

「ん?ああ、そうですね」


 彼女を思って言ったつもりだったが、この国や、この国の国民のためにもなるから間違ってはいない、と思う。


「…怖いのです」


 彼女は下を向き、月の光に照らされた床を見た。

 腹の前で握った両手は僅かに震えている。


「怖い?」

「父がそうされたように、いつか殺されてしまうのではないか、と。もちろん、皆さんを失望させてしまうのではないか、別の国に生まれたかったと言われるのではないか。沢山あります」

「貴女なら大丈夫ですよ。私が保証します。後、貴女を傷つける者がいたら私がさせません」


 また格好つけてしまった。部下達が見ていたら変な顔をされていたかもしれない。


「どうしてそこまで言ってくださるのでしょうか」


 彼女はこちらを不思議そうに見てくる。月の光に照らされてとても幻想的に見えた。


「…っ、それは、それは…」


 答えに詰まってしまった。なんと答えたらいいのだろうか。


「それは?」

「司令官だからです。最後まで見届ける義務があります」


 いつもより息を多めに吸って答えた。

 苦し紛れになんとかひねり出した。もっと気の利いたセリフを言ってみたかった。


「ふふっ、ありがとうございます」


 そんな答えでも彼女は笑ってくれ、ほっとした。


「あ、そうだ。いや、また明日お伝えします」

「?え、ええ、わかりました。おやすみなさい」

「はい。おやすみなさい。ではこちらから失礼します」


 カーテンと窓を開けた。外の風はやや冷たかった。


「えっ、窓からですか?」

「入ってない所から出たら変でしょう。戸の前には見張りの兵もいますし」

「それもそうですね。ではお気を付けて」


 着地した後、彼女の方を向き会釈した。彼女が見える範囲は歩いていたが、それを過ぎたら思いっきり走った。力の限り走った。

 陣営に戻ったらまだ起きていた部下や兵士達に心配されたが、大丈夫とだけ伝え眠りにつこうと思ったがなかなか眠れず、気付けば空が白ばみ始めていた。




 ストックが少なくなってきました。一話あたり、たかが数千字されど数千字…。

 少しでも王女と王子の動向が気になるって方は評価&ブクマお願いします。

 ※予告なく加筆修正する場合がございますので、予めご了承ください。

 

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