仮装大会
31話、文章中の数字が変更されています
すいません汗
Victer社。二十世紀初頭英国で誕生したスポーツ用品メーカーで、砕球用品を軸に事業を展開したパイオニアであり、世界最古にして世界有数の砕球カンパニーである。
そんな有名企業Victer社の現社長、上妃・ヴィクトウォーカー・大和の一人娘が優那だ。
そんなわけで社長のご令嬢という立場を大いに利用し、剛羽たちはVicter社主催の砕球の大会に参加することができた。
日曜日、東卿都内。
東卿砕球ドーム、選手控室にて。
「――で、なんで蓮くんはいないのよ!?」
普段の生活圏では中々体験できない人だかりの中でも一際異彩を放っている耀は、声を大にして叫ぶ。が、周囲の目が集まると、頬を赤らめながらこほんとわざとらしく咳払いをした。
チーム毎ではなく出場選手全員が詰めているこの場所だが、やはり耀や優那は黙っていても注目を浴びる。
Victer社社長の娘である優那は、声を掛けてくる大会参加者相手にてんてこ舞いだ。
「ふぅ~……一応、選手登録はされてるんだけどね。こうくん、こういう大会にはあんまり参加したがらないから」
と言いながら、一段落ついた優那は姿見に映った自分の衣装を見る。
とんがり帽子、黒の外套、箒という魔女のような衣装。
外套の下に着ている服も、優那の身体の凹凸がはっきり出ていて背徳的だ。
他方、耀は練習パートナーであるサーヤの着ているようなメイド服に身を包み、誠人は黒のスーツを着た執事のような格好で、風歌はポンポンを手にしたチアリーダー姿である。
そう、耀たちが参加しているのは仮装しながら砕球を行う大会だ。
楽しむ色の強い大会だが、試合経験の少ない耀にとっても未だに勝ったことがない誠人にとってもお誂え向きである。
「蓮妹、キミの兄は観に来てないのか?」
「はい、会場にはいるみたいなんですけど……」
「まあまあ、フィールドプレイヤーが三人以上いれば試合はできるし、いざってときはお姉さんにお任せあれだよ」
えっへんと胸を張る優那。
練習のときから面倒を見てもらっているので、耀や誠人の中では彼女への信頼感は確かなものだ。
「上妃先輩の言うとおりだ。神動、優勝して、蓮を驚かしてやろうじゃないか」
「ふん、言われなくてもそのつもりです」
「皆さん、ファイトです! 微力ですけど、わたしも頑張らせてもらいます!」
「ほんっと、蓮くんはいい妹を持ったわね。あんな性悪に風歌ちゃんは勿体ないわ」
「ふうちゃんは偉いね~」
耀と優那から頭を撫でられて、風歌は「えへへ」とはにかむ。
間もなく、耀たちのチームに召集のアナウンスが掛かった。
「よ~し、それじゃあ皆行くよ~」
「「おう!」」「お、お~う」
優那の掛け声とともに、耀たち一行は戦場に向かって歩き出した。
東卿砕球ドーム、立ち見席にて。
「そろそろ俺の知り合いの試合が始まるみたいだ」
剛羽は眼下の選手入場口から現れた耀たちを見ながら、隣に立つ少年に話し掛ける。
「……どうした、炎児? 急に黙り込んで」
獅子王炎児。
剛羽が闘王学園にいた頃、同じチームだった少年だ。
ツンツンした髪と快活そうな雰囲気が特徴的なのだが、先程からずっと俯いたまま全身をワナワナさせている。
「炎児?」
「剛羽、聞いてないぜ……こんなこと」
ばっと勢いよく顔を上げた獅子王は、顔をくしゃくしゃにしながら剛羽の肩をがしっと掴む。
「闘王からドロップアウトして落ち込んでんじゃないかと思ってさあ、せっかくの休日を剛羽と一緒に使おうと思ったのに! なんだあれは!?
金髪碧眼ボインなお姉さん、プライド高そうなお姫様系女子、男装僕っ娘系女子、極め付けにはロリ娘かよ! リアルでハーレムか、楽園つくっちゃったのか!?」
鼻息を荒げながら捲し立てる友人の手を払い、剛羽は呆れたような表情で答えた。
「あの黒いスーツ着てるやつは男だからな」
「そんなすぐにばれるような嘘を信じ――」
「いや、マジで男だ。股間に手突っ込んだけどちゃんとあったぞ。おまけみたいに小さいのがな」
入部試験前の更衣室であまりにも挙動不審だったため、念のため確かめておいたのだ。
本人曰く、人前で着替えるのが恥ずかしいらしい。
「剛羽、相手女だったら大問題だぜ、それ」
「そんときはそんときだ。隠してる方にも責任あるだろ? まあ、達花のことはいいや」
すると突然、剛羽の声のトーンが変わる。
「先に言っとくけどさ。優那先輩に変なことしたら、いくら炎児でもただじゃおかないからな……股間ぶっ潰して、再起不能にしてやる」
剛羽のものすごい剣幕に、炎児は「お、おうよ」と股間を押さえながら後ずさった。
「その、もしかして、剛羽ってあの金髪のお姉さんのこと好きなのか?」
「…………」
「へー、剛羽ってお姉さん系が好きなのか」
「いや、俺はまだなにも言って――」
「じゃあ、嫌いなのか?」
「……嫌いじゃない。優那先輩は最高だ」
「マジ惚れじゃ~ん、剛羽~」
肩を組んで「おれおれ~」と突いてくる炎児。
対して、剛羽は黙秘を続けるが。
「顔真っ赤じゃん。そうかそうか、あの剛羽にも好きな人がいるのか……裏切りやがったな手前! ったく、恋愛に現を抜かすなんて柔になっちまったなおい! 俺たちの恋人は砕球だよなってあの夕陽に誓ったじゃないか!」
「……もうこの話やめようぜ」
「いいや、どこまでやったのか聞くまではやめられないね! 揉んだのか? 揉みしだいたのか? も、もしかして抱き付かれて胸押し当てられたりしてないよな!? 「……あててるんだよ」とか言われながらさあ!
やべーよ、羨まし過ぎる! 俺と代わってく――べぼぎゃ。
……げほ、げほ、げほ……マジかよ、抱き付かれたとかめちゃくちゃ仲良しじゃん。もう秒読みの段階かよ……。
まあ一つアドバイスさせてくれ。着けるのは買っとけよ。買うの恥ずかしいなら通販でもいいからさ」
「敢えて言っておくけどな、俺はそういうのは結婚する相手とだけやるって決めてるんだよ。ほら、試合始まるぞ」
炎児はラリアットを受けた首を擦りながら「あいよ」と答え、二人は眼下の戦場を注視した。
獅子王炎児
性別:男
誕生日:8月6日
年齢:15歳(高校1年生)
身長:170cm
ポジション:球砕手
好きなもの:女性、友情、努力、勝利、熱い展開
作者コメント:剛羽と組ませやすいタイプの明るいキャラです。本編ではちょこっと出てきただけですが、作者の頭の中ではかなり主人公っぽいことやってます笑 炎児の活躍を描くまで書いたるでえ!




