大会に出よう!
優那から一年前に九十九のチームで起きた事件を聞いた翌日。
一般寮脇の空き地にて。
「大会?」
部活が終わってから合流した剛羽は、耀たちに外部の大会に参加するように提案した――昨日の優那との会話を引き摺っている様子は微塵も感じさせない。
誠人にはまだ少し早い気もするが、基礎の反復と訓練用人形相手に練習してきた耀は、そろそろ経験を積んでいく段階だ。
「ああ、《IKUSA》から砕球大会の情報が送られてくるだろ? 再来週の日曜日にいいのがあったんだ。出てみないか?」
「再来週の日曜日って……これ、全部ここから遠いやつじゃないか」
早速《IKUSA》で検索してみた誠人がそう呟く。
「……そっか、達花たちには紹介されてないのか。なるほど、そのへんが一軍と四軍の違いかもな……近場のいい大会は、一軍の選手たちが優先されてるのか」
「じゃあ、僕らに回ってくるのは売れ残りということか」
「達花くんの言うとおりね。まずはこのあたしを通してからにして欲しいわ」
「ん? ちょっと待ってくれ、蓮。その大会、僕たちは出られるのか?」
そもそも優良な大会へ招待されているのは剛羽だ。
《IKUSA》の個人ランキングが低い耀や誠人には、所属都道府県の辺境や他県で開かれる低レベルな大会しか回ってこない。
「俺の名前使えば問題な……い? あ」
「どうしたんですか、急に固まって」
「いやあ、その……九十九学園の最寄り駅の近くに砕球用のドームあるだろ? そこで今度いい大会があるらしいから出ようと思ったんだけど、ランキングの制限があるみたいだ」
「制限って具体的にはなんですか?」
「出場資格があるのは10万位以内までの選手らしい。神動、今何位だ?」
「えっと…………えっと……ランキングの見方は――」
「俺に貸せ」
四苦八苦している耀から《IKUSA》をふんだくった剛羽はぱっぱと画面を切り替えていく。
「…………え?」
そして、耀の個人ランキングのページを開いた剛羽は、自然とそう漏らしていた。
表示された順位は15万3147位。
因みに、剛羽たちが参加している中高生の部の個人ランキングには、日本全国で100万人以上が登録されている。
これは中高生の十人に一人が砕球をしていることを意味するのだ。
(此間見たときは90万位とかだったよな……)
最後に耀のランキングをチェックしてからまだ数週間だというのに。
彼女は大幅に順位を上げていた。このランクアップ具合は並みじゃない。
本来個人ランキングとは大会成績を中心に査定される。が、耀は公式戦はおろかまだ野良大会にすら出たことがないのだ。
つまりこれは、《IKUSA》が、大会に出たことがない耀のポテンシャルを大いに評価していることに他ならない。
順位が全てではないが、彼女の常軌を逸した成長速度にただただ驚く。
(でもこれは……ちょっと異常過ぎないか?)
そんな気持ちが湧き上がってくるのは嫉妬からか、それとも……。
「ちょっと、あなた、あたしの《IKUSA》いつまで見詰めてるつもりですか?」
耀がずいっと剛羽の手にある《IKUSA》を覗きこんでくる。
「ばっ、汗臭いから寄るな」
「あ、汗臭いって、花のレディになんてこと言うのよ!?」
「そうだよ、こうくん。今の言い方は感心しないかな」
「そうだよ、お兄ちゃん」
「……すまん、言い過ぎた」
言いながら、剛羽は耀に端末を返す。
「それであたしは何位だったの?」
「ん? ああ、まあまあ良かったぞ。それより大会どうするかだ……」
そろそろ試合に出て、試合でしか得られない感覚を身に付けてほしい。
剛羽が招待されている他の大会もチェックしてみるが、どれもこれも個人ランキングによる出場制限を設けているようだ。
これでは耀や誠人が出られない。
「――ねえ、こうくん」
さてどうしたものかと考えていると、優那が不意にこう切り出した。
「みんなで出られる大会、あるかもしれない」




