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砕球!!  作者: 河越横町
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21/54

試合終了


 試合開始から八分経過。残り試合時間二分。

 戦死者一五名、残り五名。


『さあ、第一試合もいよいよ大詰め! 

 現在の各チームの得点はチーム閑花が十一点。チーム山伏が八点。チーム駿牙が六点。全滅したチーム砂刀が六点。

 なお、チーム砂刀の富志原ふじ げん選手……ロケットランチャー使ってた人ですね。富志選手は蓮選手からのダメージにより退場したため、敵選手撃破分の得点一点はチーム閑花に入っています』



 閑花は頑丈さが売りの亀球タートルボールを従えて、泣きそうな顔でこちらに向かってくる。

 五個あるはずの球が三個しかないことから、相手チームに壊されたのだと、剛羽は理解した。


【風歌、スコアどうなってる?】


【はい、各チームの獲得点数は――――――】


 剛羽が風歌から得点状況を聞き出していると、その集団はやってきた。

 閑花が飛び出してきた密林から、ドタドタと何人もの足元が聞こえてくる。いや、その足音は人のものではなく、馬蹄による力強いものだ。

 

 果たして、乱立した大木を縫うように飛び出してきたのは、六人の騎馬兵と六頭の騎馬だった。

 山伏と彼の表面をメタリックな感じにした分身、計六人が、ランスを片手に剛羽と木礎を取り囲む倒木でできた檻に突っ込んでくる。


『チーム山伏がキャプテン、山伏弁慶選手が遂に登場です! 個心技《不撓不屈コマンダー》! 現在五体増やしています! 数の有利を体現するような能力だぁ!』


『いつも助かってます』


「なんだあの数、反則だろ」


「蓮くんの個心技も十分反則だけどね。てか……山伏先輩の個心技、《IKUSA》で観てこなかったの!?」


「い……いつもは相手の研究してるぞ。でもほら、試験前に相手の研究したらつまらなくなるだろ?」


「この編入生、試験を受かる前提で楽しんでやがる!?」


 倒木の檻が騎馬兵たちの突撃で壊されるより一瞬速く、剛羽は檻を飛び出して閑花に追い付く。


「……達花と神動、やられたってな」


「うん。でも、達花くんは格上を足止めしたんだよ。戦死までさせたし、戦果は十分だよ」


「そっか……じゃあ、この試合終わったらお祝いしないとな」


 剛羽は閑花をお姫様抱っこし、《速度合成》を使って加速した。

 しかし、追い縋る山伏たちを巻けそうにない。


【お兄ちゃん、残り一分切りました! あと、山伏先輩、チーム駿牙の球を一個壊しました!】


 風歌からの定時アナウンスに思わず立ち止まり、同時に頭の中で各チーム得点と各チームの残りの球の数が去来する。


「あと一分……マズイな」


 剛羽の考えを閑花も察したようで。


「それが懸命だね。んじゃ、あとは任せたよ」


【風歌、閑花のフォロー頼む】


【は、はい! 了解です!】


 剛羽は山伏たちからある程度離れたところで閑花を下し、木礎を追い掛けている山伏たちのもとに急行する。


『蓮選手、閑花選手を逃がして山伏選手とその分身たちによる騎馬隊に突っ込んでいきます! すげえ! 閑花選手と一緒に逃げ切るという選択肢はないということでしょうか?』


『ないね。閑花選手と一緒に逃げたら、味方が全滅してる木礎選手が山伏選手にやられて逆転されちゃうから』


『しかし、蓮選手が木礎選手たちのところに行ってしまうと、閑花選手が一人になってしまいますが……』


『問題ないよ。山伏選手は閑花選手に興味ないでしょ。あと一分、どこにいるか分からない選手を狩りに行くより、目の前にいる木礎選手を倒して得点を取ったほうが確実に逆転できますから』


 剛羽がやってきたのは、人の足で踏み固められてできた道のようなところだ。

 道幅は広く、障害物となるようなものもない。

 密林の中にぽつりとできた空間。

 このステージの中では戦いやすいポイントである。


「戻ってきやがったな、蓮」


「木礎先輩のサポートに来ました」


「どんな腹積もりだ、腹黒執事? よくもまあ、そんな台詞が吐けるもんだぜ。お前もう十分活躍しただろうが、大人しく引っ込んでろよ」


 剛羽が来たことで一旦山伏との戦闘を中断して距離を取った木礎は吐き捨てるように言った。


「それはできない相談ですね。俺、欲深いんで。俺以外のやつが目立つの嫌なんですよ」


 ニヤッと笑う剛羽に、木礎は細心の注意を払う。

 眼前の期待の編入生は自分を助けに来てくれただけではない。

 この場で恰好の獲物――一番得点になるのは木礎自身なのだから。


「山伏先輩、俺が相手です」


「来い、蓮」


 剛羽と相対した山伏は騎馬から降りて、ぐっと腰を落として構える。

《速度合成》の前では、速度は出せても細かい駆動ができない馬上では不利と考えたのだ。

 

 剛羽は山伏本人目がけて、二本の小刀を手に突進する。が、メタリックな見た目の山伏の分身たちによって、すぐさま行く手を塞がれた。

 五人の山伏の分身が代わる代わる拳や蹴りを叩き込み、剛羽を釘付けにする。


 そして、木礎は剛羽と山伏の隙を虎視眈々と狙う。


『最終決戦は山伏選手、蓮選手、木礎選手の三つ巴! どのチームにも勝つチャンスがあります!』


『山伏選手は数の有利を、蓮選手と木礎選手はワンチャンスを活かしたいですね』


『おっと! ここで蓮選手が動いた!』


 残り数十秒。

 最初にアクションを起こしたのは、剛羽だった。

 個心技を使って山伏の分身三体を置き去りにし、山伏本人に迫る。

 そこで残りの分身二体がすぐさま進路に立ち塞がった。が、剛羽は続けて個心技を発動し、高跳びでもするかのようにダイナミックに相手を跳び越える。

 これで後は山伏のみ。護衛たちは間に合わない――と、そこで。

 ヒュンという風切り音が聞こえるや否や、剛羽の左足が太腿の半ばあたりから吹っ飛ばされた。

 近くの木の上で待機していたチーム山伏の弓兵少女が、空中で無防備になった剛羽を狙い撃ちしたのだ。


『ああっと! 蓮選手、これは少し強引だったか!?』


「御苦労さんだぜ、蓮!」


『チーム駿牙の木礎選手、チーム山伏の紅一点、鞍馬与一くらま よいち選手へ突っ込んでいきます! 漁夫の利だ!』


 山伏が球操手ではない以上、弓使い少女が球操手であることは自明の理。

 剛羽の身体を張ったプレーで暴き出された狙撃手のところに、木礎は最短距離で向かう。山伏も剛羽も追い付けない!

 木礎は背中から生え出た四本の触腕で弓使いの少女の片腕を吹っ飛ばす。


「ごっつぁんでーす、だぜ!」


「――いや、俺たちが一枚上手だ」


 しかしそこで、チーム山伏の心臓を捉え、勝利を確信した木礎は直後にはっとなる。


「球が……どこにもねえ」


『チーム山伏の球操手、鞍馬与一! なんと球を五個全部置いてきていた! 可愛い顔してなんてギャンブラーだこの野郎!』


『残り時間を考えて、戦闘地域から離れたところに置いていったほうが安全だと考えたんだろうね。ある程度リスクはあるけど、残り選手の数、位置を考えたらファインプレーだよ……ボクのチームに来てくれないかなぁ』


「クソがッ!」「よくやった、鞍馬」

 

 背後を取った山伏が弓使いの少女と敵球操手を挟み撃ちにする。

 木礎を守る味方選手はいない。木礎と、彼の操る残り三個の隼球は壊し放題だ。

 間もなく、山伏の撃ち出した正拳が木礎の胸部を貫通。

 勝敗は、決した。


「――俺たちの勝ちです」


「おい待てこら……蓮、お前、自分以外のやつが目立つの嫌だって、さっき言ってたじゃねえか」


 たった今胸部を突貫された木礎は、戦場に現れた五人目の姿に泡を食う。


「なに言ってるんですか。チームが勝つに越したことないですよ」


 山伏たち三人が一か所に固まったところで、戦場に飛び出してきたのはチーム閑花の球操手、閑花和姫だ。


「全砲門、開門!」


 彼女の従えている亀球がぱかっと口を開き、中からぐぐぐっと黒塗りの砲塔が顔を出した。相手三人はお誂え向きに首を揃えて待ってくれている。

 よって、この好機を逃す手はない。


「ドーラララララララララララァァァァァッ!」


 彼女のありったけの《心力》を弾倉に、無数の青色の弾丸が亀球の口内から発射される。

 耳をつんざくような爆音。

 その乱射は獲物を蜂の巣にする。


『し、閑花選手の一斉砲撃! しかし、山伏選手、分身を全て盾に使って味方の鞍馬選手と木礎選手を守り抜い――』


「三倍加速(クレスト=トリプル)――抜け駆けはダメですよ、先輩」


 瞬間、閑花の弾丸の嵐を切り抜け、木礎の操作する隼球を割ろうとした山伏の首が胴体から離れる。

 切り離したのは剛羽の投げた小刀だ。


『山伏選手、戦死ォオオオオオ! 木礎選手へのアタックは僅かに届かない! 続けて、木礎選手が鞍馬選手を撃破! 残りはチーム閑花とチーム駿牙です!』


「まだ終わってねえ!」


 胸部に穴が空いた木礎は最後の力を振り絞り、剛羽と閑花を狩るためにうねった木の幹の上から飛び降りて向かってくる。

 その動きは決して速くない。が、問題ない。

 剛羽は右足を失ったため、閑花は先程の一斉掃射で《心力》をほとんど出し尽くしたため、その場から動けないのだ。

 

 その上、操作する者がいなくなったチーム閑花の心臓――亀球は、無防備に地面に転がっている。

 剛羽は身体を引き摺りながら、一定量の《心力》を失ったため戦用複体にひびが入り崩壊が始まった閑花の前に移動しようとするが、木礎の操作した隼球に二人とも吹っ飛ばされる。

 もう誰も、残り三個ある亀球を守れない。

 それどころか閑花は戦死し、生き残った剛羽も戦死寸前だ。

 あとは球を壊すのみ。


「ガス欠か……は、俺の勝ちだ……ぜ――あ?」


 しかし、無防備な球までの距離が残り十メートルを切ったところで、不意に木礎がドサッとうつ伏せになるように倒れた。

 ビキビキと戦用複体の全身に亀裂が入る。

 続いて、操っていた隼球がぽとりと地面に落ちた。浮かせようと《心力》を発動してみるが、再浮上する気配はない。

 それでもこの距離ならばと触腕を伸ばそうとするが、数十センチ手前で完全に伸び切ってしまった。届かない。それどころか、触腕の先っぽからどんどん黄色の粒子となって消えていく。

 考えてみれば、戦用複体の核である胸を貫かれてこれだけ動けたことが奇跡なのだ。


「クソ、が……」


 そして遂に木礎の戦用複体が爆散し、それとほぼ同時に、試合終了を告げるブザーが《闘技場》に鳴り響いた。


各チーム、最終獲得点数

 1位 チーム閑花12点(内訳:敵選手8人撃破+敵球2個破壊=1点×8+2点×2)

 2位 チーム山伏11点(内訳:敵選手3人撃破+敵球4個破壊=1点×3+2点×4)

 3位 チーム駿牙8点(内訳:敵選手2人撃破+敵球3個破壊=1点×2+2点×3)

 4位 チーム砂刀6点(内訳:敵選手6人撃破=1点×6)


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