現在地
時間は少し遡って、試合開始ほぼ同時。
『チーム閑花の神動選手、いきなりチーム山伏がキャプテン、山伏弁慶選手と遭遇!』
『いきなり山伏選手とかち合った上に味方とも離れてる。転送位置は最悪だね』
「んぬぅ~、あと少し――きゃっ」
耀は大木を何本もへし折りながら吹っ飛ぶ。
剣の錬成に手間取っていたところ、山伏にぶん殴られたのだ。
痛みに怯む身体と心を叱咤し、すぐさま錬成を再開しようとする。
が、追い討ちを掛けるように、黒い体表に武骨な馬鎧を着こんだ戦馬を駆る山伏が突撃してきた。
(なに、あのお馬さん!? あたし、まだ剣つくれてない、やばい!)
自分が剣一本つくるのに手間取ってる間に、相手は本物に引けを取らない馬をつくっている。
《心力》の錬度の差に焦りながらも、耀は必死に逃げ回る。
こういうときは、密林などの障害物の多いステージの方が巻きやすい。
【あ、繋がった! 神動先輩、大丈夫ですか!?】
「ああ、気が動転して幻聴まで……しかも風歌ちゃんのぽわぽわ癒しヴォイス」
【神動先輩、応答してください!】
【え、もしかしてこれ幻聴じゃないの?】
【です、生音声です! 神動先輩、そのまま東に向かって逃げてください! 蓮先輩たちが救援に向かってます!】
【風歌ちゃん、ありがとね! で、東ってどっちかしら?】
【太陽の昇る方向です!】
【ここからじゃ太陽なんて見えないわ】
【右に走ってください、早く!】
風歌の指示に従いながら、耀は木々の間を効率よく駆け抜ける。
緑の景色がものすごい勢いで視界の端を流れていく。長距離走は平凡だが、スプリント能力は高いのだ。
(そろそろ巻いたかしら)
と、高を括ったところで、耀は背後からの轟音に思わず振り返った。
三十メートル以上はあろう大木がグルグル回転しながら、こっちにむかって飛んできたのだ。見れば根っこから抜けている。
直撃せずに済んだが、耀はあまりの恐怖にもう前だけ見て走ることはできなかった。
ありえない。
引き離したと思っていた山伏が、走行ルート上にある大木や倒木を蹴散らしながら一直線に追い縋ってきている。
障害物を避けながらであれば耀に追い付くことはできなかったが、圧倒的な突破力を誇る重武装の戦馬には何十メートルもある大木でさえ避ける必要がないのだ。
【神動先輩、走ってください!】
【……風歌ちゃん、サポートありがとね。でも、あたしのことはもういいから、他の人たち助けてあげて】
【でも――】
風歌の言葉は既に耳に入っていなかった。
鍔のあたりまでしかできていない剣をすっと緩やかに構える。
瞬間、耀を中心にぶわっと突風が吹く。それは《心力》の波動。
そして、煌びやかな装飾を凝らされた一本の剣がここに降臨した。
「――大丈夫。勝つよ、あたしが」
剛羽を追い詰めた業物が完成し、耀は初めて攻勢に出る。
恐れる物はなにもない。その剣を振りさえすれば、目の前のもの全てを叩き伏せることができるのだか――
「――ぁ」「いいものは持ってる。あとは鍛えるだけだ」
しかし、騎馬突撃を仕掛けてきた山伏に対して振り下ろした剣はあっけなく砕け散り、大質量による突進を受けてゴムボールのように吹っ飛ばされた耀は一溜まりもなく、あっけなく爆砕した。




