エース対決
『で、出たぁあああああ! チーム砂刀がキャプテン、砂刀鋭利選手の個心技《一尾両断》!』
一瞬前まで剛羽たちの周りにあった幾本もの大木が、根元から綺麗に切断されて轟音とともに横倒しになっていく。
戦士たちを閉じ込めるように屹立していた木々の檻が切り倒され、フィールドが開けた土地になった。
地形を変えるほどの一撃。
無論、その場にいた選手たちは一瞬で二つにされ、腹からブシャアッと《心素》を撒き散らし、小規模な爆発とともにフィールドの外に転送された。
『大木などの遮蔽物ごとたった一撃で切断しました! チーム山伏から二名、チーム駿牙から一名の戦死者が出ています。チーム砂刀、三点ゲット!
現在の得点はチーム砂刀が四点、チーム閑花が二点、チーム山伏が一点、チーム駿牙が0点です』
『チーム砂刀は味方同士の転送位置が近かった分、他のチームよりも動き出しが速かったね。注目度の高い蓮選手を餌にして、他チームの選手を上手いこと釣り上げたよ』
『なるほど、スナイパー組が一旦攻撃を止めたのは、砂刀選手に斬らせて確実に点を獲るためだったんですね』
『それもあるけど、単純に自分たちも避難しなきゃいけなかったんだ。じゃなきゃ巻き込まれるからね』
『それほどまでの一撃ということですか。砂刀選手の個心技はもう何度も拝見させて頂きましたが、これだけ派手だと気持ちがいいですね』
「一撃で三人飛ばしたか……」
扇状に開けた土地から少し離れたところにある大木にて。
剛羽は、その有り様を大木から真横に生え出た太い枝にぶら下がりながら見ていた。
誠人の言葉を受けてから個心技を使って跳躍し、間一髪で戦死を免れたのだ。
「蓮、何で…………足が、足が……」
剛羽に首根っこを掴まれた状態の誠人は、自分を救った少年の左脚に目を見開く。脛のあたりから下が綺麗になくなっていた。
剛羽一人ならダメージを受けずに回避できたはずだ。事実、剛羽はまず誠人を空中に放り投げてから跳躍していた。
「僕を助けたって、何の得にもならないのに……これは試験だぞ。他のやつらを、チームメイトですら蹴落とすために戦うんだ! なのに、なんで……」
半年前の秋の試験を思い出し、誠人は首をゆるゆると横に振る。
奥舟たちから相手選手を引き付けるためにいいように使われ、自分が注意を引いている間に奥舟たちは死角から奇襲を仕掛けて着実に得点していた。
一人を犠牲にしたチームプレイ。
せこい。自分だったらそんなことは絶対しない。事実、今までチームメイトを裏切ったことはない。
だが、試験であれば正しいことだし、その試験でチームメイトだったやつらは何人か試験に受かった。
「チームメイトだから助けた。普通だろ」
そんな誠人の気持ちを知ってか知らずか、剛羽はぽかんとした顔で答える。
「何だよ、それ。強者の余裕かよ……」
かっこいいと思いながら誠人は目元を拭う。
戦用複体の状態では涙など流れないが、ついそうしてしまった。多分、生身の肉体に戻ったら目元が赤くなっているだろう。
「達花がいなかったら俺も戦死してた。だから、気にするな。それより今は、これからどうするか考える方が優先だ」
何か言いたいことがあるのか。
珍しく口籠った眼鏡な少年に、剛羽は続けて告げる。
「この試験は、チームメイトを使っていかに自分も活きるかのゲームだ」
「っ!?」
それは奥舟が試合前に言っていたことと似て非なる言葉。
剛羽は尚も真顔で続ける。
「球砕手は、動手たちが掻き乱してくれてる間に相手の本陣を叩く。それで球砕手が相手の球操手を追い詰めれば、相手は守備に人数を割かなきゃならない。
そしたら、中盤を駆け回る動手たちが数的有利な状況で戦える。
俺だって球操手の護衛するだけじゃない。相手の球砕手とやり合える。それに勝てば試合を有利に運べる。
目の前の仕事に、与えられた仕事に取り組むだけでも、回り回って自分を助けてくれるんだ。
自分のため。そりゃそうだ。でも、それだけじゃない」
「……さっき、蓮一人で相手全員倒していたくせに」
そんなことを言いながらも、誠人の表情は明るくなっていた。
今確かに――受験八回目にして初めて、チームメイトとチームメイトになった気がした。
「あ……あれは……マジですまん」
「それは僕もだ。その……さっきは、ありが――」
「――行くぞ、反撃だ」
「ちょ待っ、うわぁあああああ!?」
剛羽は地上三十メートル以上の高さがある大木の枝から飛び降り、落下の勢いそのままに走り出す。失った右足の脛のあたりからは、白色の剣のような義足が生えていた。
風歌と連絡を取り合い、近辺の情報を得る。
「襲ってきたのは砂刀先輩のチームだ。遠距離系が三人にアタッカー一人。多分、相手の球操手も近くにいるぞ」
「ま、まさか、キミ、ここで決着を付けるつもりか!?」
「ああ、背中撃たれたら厄介だからな。それに、今のところ近寄ってくるやつはいない」
「……なるほど、横槍を入れられないってことか」
確かに邪魔はされないが、力と力の真っ向勝負になる。
それだけ自信があるということかと、誠人は呆れながらも納得した。
「こっちも点獲るぞ、達花!」
「ああもう、分かったよ! 好きにしろ!」
他チームまでやってきて混戦になることを避けたい剛羽は、積木になった大木の山の頂きで佇む、砂刀鋭利に向かっていく。
対して、待ち受ける落ち着いた雰囲気の剣士は、マフラーの下の口を喜悦に歪めた。
「さっきは手応えがなくてな、拍子抜けかと思ったが……生きていたか、編入生」
「自分、一応闘王でやってたんで」
剛羽は二本の小刀を構えて臨戦態勢に入る。
冷静に、冷静に。湧き上がる闘争本能を暴発させないように。
相手に鋭い眼差しを送りながら宣誓する。
「砂刀先輩、勝負です」
「面白い……その心臓もらい受ける」
砂刀鋭利
性別:男
誕生日:7月7日
年齢:16歳
身長:176cm
ポジション:球砕手
好きなもの:読書(歴史をつくった先人たちシリーズ)、模擬刀の手入れ、城巡り
作者コメント:現代に産み落とされた武士系男子。砕球が好きだからというよりか、思いっ切り刀を振り回せるから砕球をやってそう。語尾に「ござる」くらい付けた方がキャラが立ったでしょうか笑




