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資料:紋章簿の一頁目
紋章簿を開いた最初の見開きには、貴族の紋章は描かれなかった。その代わり、ヘニョたちが結成した兄弟団の名前の由来であり、旅人の守護聖人である聖クリストフの大きな美しい絵が紙いっぱいに描かれていた。
巨人の姿をした聖クリストフが、荒れ狂う川を、そして吹雪の峠のなかを、幼い赤子を肩に載せて杖をつきながら渡っている絵だ。
見開きの右のページには、ヘニョ本人の言葉として「なぜ私がこの本を作り、旅を始めたのか」という理由が、美しい飾り文字でびっしりと書き込まれた。
「私、拾い子のハインリヒは、かつてアルレン城城代ヤックラインの元で5年間、豚を飼って暮らしていた。
その間、冬のアールベルク峠で、雪に埋もれて鳥に目を突つかれながら死んでいく無数の哀れな旅人たちの遺体を見てきた。彼らはまともな埋葬もされず、誰にも知られずに死んでいった。
私は彼らを救い、弔うために、峠の頂上に小さな救護所を建てることを決意した。
この本に名前と紋章を刻み、寄付をくれた親愛なる兄弟たちよ。神の御名において、あなた方の優しさは永遠にこの本に記録され、アールベルクの吹雪のなかで旅人の命を救う灯火となるだろう」




