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竜×侍  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ2巻発売中』
第三章

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第七十話 ドラゴンブレス

前回までのあらすじ!


ドラ子の尻はふぅわり柔らかでもちもちしてるぞ!

 さて、と。

 思い描くは三日前。アラドニアの対アリアーナ神殿国家前線基地で潜り込んだ、軍用飛空挺内の地図だ。

 あのときは大型魔導機関(エンジン)を破壊するため、飛空挺内中心部下層を目指して走ったが、今回は勝手が違う。


 現状、確実に大型魔導機関(エンジン)を破壊するには、おれが斬撃疾ばしで機関を外部装甲ごとぶった斬るしかない。リリィが銀竜体となれば機関の破壊は可能だが、それでは飛行中の飛空挺内からの脱出ができないからだ。

 当然、脱出に失敗すれば墜落の爆発に巻き込まれておれたちもおしゃかとなる。


 となると……。

 リリィが臀部をさすりながらおれに視線を向けてきた。


「中心部上層、操舵室の破壊ですね」

「それしかねえな。幸いここは辺境の森だ。このでかぶつが操舵を失って墜落しても、人的被害は出ねえはずだ」


 中心部上層の操舵室であれば、透明硝子の一枚をぶち破れば空へと逃れることができる。

 またこのだだっ広い飛空挺内を走るのかと思うと、少しばかりうんざりしてくるが、状況が状況だ。そうも言ってはいられない。


「わたしたちのいるここが後部下層ですから、とりあえず上と前へ向かえばよさそうですね」

「上と前って、雑だねェ。だが、とりあえずなら――」


 おれは菊一文字則宗を抜刀し、肩に峰を置いた。

 ぐるり取り囲む形でおよそ十五名。魔導銃と大剣で武装した魔術兵だ。


「――こいつらを始末してからだな」

「はい」


 言うや否や、おれたちは鉄の通路を蹴った。魔導銃の銃口が上がり切る前に接近し、包囲網の一部を斬り裂く。


「ぎゃ……ッ!」


 赤い花が散って、魔術弾の閃光が走った。

 いち早く包囲網を突破したリリィが、閉ざされていた鋼鉄の扉に肩から全身をぶつけ、轟音を響かせて鉄扉を派手に吹っ飛ばす。


「やっ!」


 三日前とは違って今回は極秘の潜入じゃあない。大暴れしようが、でけえ屁をひねりだそうが自由だ。


「こっちですっ」

「あいよぅ!」


 大剣の振り下ろしを菊一文字則宗で去なし、反す刀で魔術兵の足を刎ねる。血液をまき散らせながら、男の片足が宙を舞った。


「いぎっ!?」

「おっと――」


 倒れ込みかけた魔術兵の襟首をつかみ、そいつを魔術弾から背中を守る盾にして引きずり、おれは赤い懸衣の後ろ姿を追って駆け出す。

 だが、当然来ると思っていた背中への衝撃はない。


「おやあ? やつら、撃ってこねえな」

「たぶん飛行中だからでしょうね。大型魔導機関(エンジン)に関する機構の集まる下層では、下手に魔導銃を撃って破壊してしまえば大型魔導機関(エンジン)そのものが止まってしまいかねませんから」


 なるほどな。地上で眠っていた軍用飛空挺とはわけが違うということか。

 いいね。前回とは違い、今回はおれたちにずいぶんと有利だ。


「くかかっ、墜落が勘弁なのはおれたちも同じだがねェ」


 生への執着の高いほうが、剣戟では不利になる。笑える現実だ。

 リリィが前方から大剣をかまえて走ってきた魔術兵を張り倒し、階段を駆け上がる。おれは階段上方で立ち止まり、背後を振り返った。


「けっ、阿呆が」


 莫迦正直にぞろぞろとついてくる魔術兵の集団へと、弾除けの盾代わりに引きずってきた魔術兵を蹴り落とすと、まるで雪崩のように魔術兵らが階段から転げ落ちた。


「オキタ!」


 リリィの声で前へと向き直り、階段を駆け上がる。おれが階段から通路へと足を踏み込んだ瞬間、先に上がりきっていたリリィが膝をつき、拳を握りしめて階段をぶん殴った。


「えいっ!」


 ごぅん、と重苦しい金属音が響き、拳が階段を貫通する。


「ん……っ」


 そのまま金属製の支柱をつかみ、片腕でへし折った。

 おれたちを追いかけて再び階段を上ってきていた魔術兵の集団が、階段ごと斜めに傾いてゆく。


「ひっ、わ、わああああっ!」

「バカ、よせ、服をつかむな!」

「ぎゃあああああっ!」


 見るも無惨とはこのことだ。およそ十名が鉄製の階段とともに横倒しになり、飛空挺最下層の通路で全身を強く打って呻き声を上げ、悶絶している。

 我が相棒ながら、恐ろしい怪力だ。


「あ~あ~、気の毒によぅ。なまじ生き残るから、そうやって苦しむんだ」

「行きましょう!」


 リリィについて走り出すと、大型魔導機関(エンジン)のある広間へと躍り出た。三日前とは違って動いている大型魔導機関(エンジン)は、常に重苦しい轟音を発し続けている。だが、そのおかげでところどころに明かりが灯っていて、視界は悪くない。


「やつらから魔導銃を奪えば、おまえさんなら破壊した上で装甲に穴を空けられたかもしんねえな」

「可能だとは思いますが、やめたほうがいいです」


 リリィが指さす方向へ走りながら、おれは尋ねる。


「な~んでよ? そのほうが楽だろ?」


 同じく走りながら、リリィが困ったように眉根を寄せた。


「この前の魔導銃、銃身の半分が熔解していたじゃないですか。あれ、たまたま魔術弾の暴発が多少なり前方に向かっていたからよかったですが、熔解箇所が銃身の後部まで達していたとしたら、わたしもオキタも今頃蒸発していましたよ」

「お、おおぅ……人間ってのぁ、蒸発するもんなのかい……」

「しますよ? 古竜種火竜族の火炎ブレスを浴びれば、人間なんて骨の欠片も残りませんからね」

「すげえな、それ……」


 前から来た大型魔導機関(エンジン)の見張りらしき魔術兵数名をすれ違い様に斬り伏せ、金属を網目状に編んだ通路を渡って機関(エンジン)横を抜け、広間から脱出する。


「同じ古竜種なら、おまえさんもその~……ぶれす? ってのは出せるのかい?」

「一応できますよ。お腹が空いたときに涎や胃酸を吐いたり、食べ過ぎて吐瀉(ゲロ)したりもできます」


 恥ずかしそうに身をくねらせながら両手で頬を挟んだ乙女に、おれは生暖かい視線を向けるのだった。



ドラ子の雑感


銀竜族はブレスがない代わりにエリクシルがあるんですからね!?

無能じゃないですからね!?

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