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069 天城越え

翌朝、朝風呂のあと、朝食ビュッフェに行くと、豪華な料理が所狭しと並べられていた。


焼き立ての金目鯛の干物、だし巻き卵、地元野菜の煮浸し、わかめと豆腐の味噌汁。炊きたてのご飯の香りが食欲をそそる。


干物に箸を入れると、パリッとした皮の下から、脂の乗った身がほろりとほどけた。ほどよい塩気が、朝の体にじんわりと染み渡っていく。味噌汁をすすると、内側からほっと温まる。


「朝からこんなにご馳走を食べられるなんて、贅沢だな」


ご飯を何度もおかわりし、すっかり満腹になったところで宿をあとにする。






レンタカーに乗り込み、カーナビに従って伊豆スカイラインへと入った。


窓を開けると、ひんやりとした山の空気が頬を撫でる。眼下には駿河湾が広がり、遠くには雲をまとった富士山がうっすらと顔を覗かせていた。


くねくねと続くカーブを抜けながら、天城越えの道を進んでいく。ついつい、頭の中で有名な演歌のメロディが流れ始めた。


「♪天城〜〜ご〜〜え〜〜」


鼻歌まじりに口ずさみながら、ハンドルを握る。






しばらく走ると、円錐形をしたお椀のような山が見えてきた。伊豆ジオパークの一角を成す、大室山だ。


駐車場に車を停め、登山口へ向かう。リフトも用意されているようだが、せっかくだからと、歩道を選んだ。


一歩一歩と踏み出す。傾斜は、なかなかのものだ。しかし、ダンジョンで鍛え上げられた身体には、ちょっとした散歩程度の負荷でしかない。


ぐんぐんと高度を上げていく。周りを歩く観光客たちが、途中で息を切らして立ち止まる中、俺はまったく息を乱すことなく、あっという間に頂上へとたどり着いてしまった。


「ステータス上昇の効果がこんなところでも出るとはな」


頂上から見渡す景色は圧巻だった。すり鉢状に窪んだ噴火口の跡と、その向こうに広がる伊豆の海。遠く雲の切れ間からは、富士山の雄大な姿も見えた。







ひとしきり景色を堪能したあと、駐車場へ戻り、近くのシャボテン公園へと足を運ぶ。


園内には、様々な種類のサボテンが植えられた温室があり、その奥でカピバラたちがのんびりと日向ぼっこをしていた。丸々とした体をベンチのように横たえ、時折つぶらな瞳でこちらを見つめてくる。


「温泉に入ってないんだな」


案内板を読むと、有名な露天風呂に浸かるカピバラの光景は、冬季限定の催しらしい。もう少し寒くなれば、湯気の立つ露天風呂で、カピバラたちがぼーっと寛ぐ姿が見られるのだという。


「冬にまた来るのもいいかもな」


カピバラたちの、ぬぼーっとした表情にすっかり癒やされ、公園をあとにする。






続いて向かったのは、小室山。リフトで山頂まで登ると、展望台の周辺に、等身大の恐竜のオブジェがいくつも据えられていた。


ティラノサウルスを模したオブジェが、大きく口を開けて咆哮している。見上げるほどの巨体に、ごつごつとした質感の皮膚。想像以上の迫力だ。


(ダンジョンでドラゴンが出現するとしたら、このくらいのスケール感なんだろうか)


職業病なのか、そんなことをふと考えてしまう。もしも目の前にこれほどの巨体が現れたら、愛用のウルフソードでは、まるで歯が立つ気がしない。魔法を連発するくらいしか、対抗手段がないかもしれない。


(いざという時のために、大ランクの魔法を撃てるようにしておくべきかもな)


恐竜のオブジェを見上げながら、ぼんやりとそんなことを考えていると、ぐぅ、と腹の虫が鳴った。


「……そろそろ、昼飯の時間か」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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これからも頑張って更新しますので、引き続きよろしくお願いいたします!

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