006 カツオのタタキとカツ丼
ダンジョンを出て受付に立ち寄り、今日集めた56Gを提出して換金手続きを行った。
目の前に差し出されたのは、精算書と今日の収入5600円。
「ありがとうございましたー」という受付係の声を背に、俺は手に入れた現金を財布に収めた。
庭のスライム湧きで稼げる効率と比べれば微々たるものだが、税務署や協会に怪しまれないための『実績作り』としては十分すぎる第一歩だ。庭のスライムのゴールドと混ぜながら、毎日怪しまれない程度に少しずつ換金額を増やしていけばいい。
プレハブ小屋の外に出ると、空はすっかり濃い群青色に染まり、街灯がぽつぽつと灯り始めていた。
独特の緊張感から解放されたせいでお腹が空いた。俺はそのまま足を伸ばし、いつものスーパーへと向かった。
惣菜コーナーに滑り込むと、ちょうど店員さんが黄色いシールをペタペタと貼り歩いているタイミングだった。すかさず争奪戦に加わり、半額シールが輝く『カツ丼』と『カツオのタタキ』をカゴに放り込む。
アパートに帰宅し、部屋の明かりをつける。
ちゃぶ台の上に買い込んできた惣菜を並べ、台所から安物の芋焼酎を取り出す。
コップに氷をカランと落とし、焼酎を1、水道水を3の割合で注ぎ入れた。正直1:1で飲みたいが、まだまだ「将来への不安」という名のブレーキが強くかかっている。
無職から脱却したとはいえ、探索者なんて明日の保証すらない不安定な商売だ。1:3の濃さでちびちびやるのが、今の俺には一番心に優しい。
まずはカツオのタタキのパックを開ける。
ツヤツヤとした深紅の赤身、その表面が香ばしく炙られて黒く締まっている。ポン酢を回しかけ、冷蔵庫から出してきたチューブの生姜をたっぷりと、そしてチューブのニンニクを少しだけ添えた。
箸で薬味をたっぷり絡め、大きめの一切れを口に運ぶ。
ポン酢の酸味が口内に弾けた直後、炙られた皮目の香ばしさと、モチモチとした赤身の濃い旨味が広がっていく。ツンと鼻に抜ける生姜の爽やかな辛みと、遅れてやってくるニンニクのガツンとしたパンチ。
「うまい!」
間髪入れずに、1:3の芋焼酎を喉へと流し込む。
氷がカランと音を立て、芋の独特な香りが鼻腔をくすぐりながら、疲れた身体の隅々まで染み渡っていく。
カツオのタタキを瞬く間に平らげ、次はメインの『厚切りカツ丼』へ移る。
レンジで温めフタを開けると、醤油と出汁の香気が一気に部屋中に充満した。黄色い玉子に閉じ込められたトンカツ。
箸でカツをひとつ持ち上げると、お出汁を吸ってズッシリと重い。
ガブリと噛み付くと、つゆがジュワッと染み出る衣と、柔らかい豚肉の甘みが口いっぱいに押し寄せてきた。タレがたっぷりと染み込んだ熱々の白飯を、そのまま豪快にかきこむ。
温かいカツ丼にほっこりと胃も心も満たされる。
そこへ、芋焼酎の水割りを口に含む。
カツ丼の余韻と、芋焼酎が絶妙に混ざり合い、胃袋へと落ちていく。
ダンジョンで自分の強さを確認し、稼いだお金で食う飯。
ちょっと薄い水割りを飲みながら、俺は充実した満足感と共に、カツ丼を黙々と口へと運び続けたのだった。
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ストック尽きるまで、7:00・12:00・18:00・20:00に投稿予定。




